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第六十一話~対戦~


第六十一話~対戦~



 俺たちは、悪魔王がいると思われる構造物の中を進んで行く。その一方で、入り口正面にもネルに率いさせたアンドロイドやガイノイドといった戦力を振り分けることで、敵の戦力を集中させ望外を極力減らす手を打っていたのだが図に当たったようである。お蔭で、悪魔側の妨害を殆ど受けることなく、俺たちは悪魔王と対峙したのであった。





 身に纏っていたマントを払いながら、スイフルと名乗った悪魔王が立ち上がる。悪役らしいと言われれば実に悪役らしいその仕草だが、微妙に中二病臭いなとも思ってしまったのは内緒である。そんな俺の個人的な感想は兎も角、スイフルが動いたことで、彼の部下となる悪魔側の他のメンバーも動きを見せていた。

 さて、悪魔側の人員だが、全部で数十名といったところだろうか。その中で、特に力が強い。いわゆる強者の雰囲気を持っているのは、五名だ。他の悪魔に関して言えば、力こそはあるように思える。しかしながら、先に挙げた五人に比べれば格落ちに見えるのだ。

 俺がやや格下と判断した悪魔たちのうちで、およそ三分の一ほどが俺たちへと襲い掛かってくる。だが、残りの人員はその場に残っている。しかしてその様は、玉座に座っていた二人と、そしてこの場所を確定させる為にとシュネがあえて逃がした悪魔を守るような立ち位置だった。

 一方で、俺たちもただ大人しくして相手の動きを見ていたわけではない。悪魔側が動き始めるのとほぼ同時に、俺たちもまた動き始めていた。まず、俺が先制として動く。何せこの悪魔の拠点と思われる場所に張り巡らされている結界はかなりの強度であり、普通であれば転送も難しい。そこで事前に、幾つかの武器は持ち込んでいる。その持ち込んだ武器の中で、もっとも攻撃力のあるモノを俺が持ち合わせているからだった。

 その武器だが、三銃身ガトリングである。その重火器を腰のウエストポーチから取り出すと、こちらへと攻め寄せてくる複数の悪魔たちへ魔弾の洗礼をお見舞いした。そもそもガトリングは面制圧に主眼を置く武器なので、寧ろ纏まって攻め寄せてくるというこのシチュエーションはありがたい。こちらとしては、てんでバラバラに襲われる方がやりづらかったのだ。

 とはいえ、流石に悪魔王と共にいる者たちである。撃ち始めて少しの間は、驚くことに打ち出される弾丸を防いでいた。だが、俺が打ち出しているガトリングから吐き出される弾丸は毎分で一千発以上となる上に、それぞれが魔力でコートされている。それだけの弾丸を、いつまでも防ぎきるなどそうそうできるものではないからだ。

 これがまだ悪魔王とか、隣にいる女性の悪魔……多分あれが悪魔妃だろう……その彼女であればまだ分からない。だが、接近しようとしているのは彼らよりは格下の悪魔に過ぎず、いつまでも間断なく次々と襲いくる弾丸を、玉切れまで防ぎきることなどできるわけがなかったのだ。

 しかもこのGAU-19をモデルとした三銃身ガトリングは、シュネたち魔道具を整備作成する者たちによって、さらなる改良が施されている。風のアルバと名乗った悪魔と対峙した際に初めて出した時よりも性能が上がっているだけでなく、発射速度が向上しているのだ。

 先に毎分一千発以上といったが、今は毎分一千五百発くらい弾丸が発射可能である。さらに軽量化もされているので、取り回しも素早くできるのだ。

 そんなガトリングから吐き出される正に銃撃の嵐と言っていい状況に晒された彼らは遂に守りを突破されてしまう。標的となった悪魔たちは、次々と弾丸の餌食になっていった。程なくして俺が三銃身ガトリングの銃口を上にあげた頃となると、接近しようと試みていた悪魔全てが、蜂の巣状態で地面へ倒れ伏していたのだった。

 因みに三銃身ガトリングを入れていたウエストポーチだが、こちらも性能が向上している。だからこそ三銃身ガトリングを入れることができたのである。というか、三銃身ガトリングを余裕で持ち運びできるようにするために改良したといってよかった。


「……まさかガトリングとは、思いもよらなかった。ご丁寧に、弾丸一発一発に魔力でコートまでしているのか。しかも、こんなものまで用意できるとは、いったい何者だ?」


 そういったスイフルの手には、ある機械が乗せられている。大きさはさほどはないそれは、シュネが悪魔へ取り付けたと言っていた追跡装置の電波発信機であった。流石に、追跡装置はバレていたらしい。だからこそ、スイフルは入り口という正面からの襲撃に拍子抜けしたといったようだ。

 こちらとしては元々もともと陽動目的だったのだが、どうやらいい意味で相手の裏を掛けたようである。


「答えてやる理由……」

「あのっ! スイフルさんも転生したのではないのですか!?」

「っと! 舞華!! 邪魔をするな」

「ごめんなさい、シーグさん。だけどわたし、どうしても話したい!」

「……」


 スイフルへ答えてやる義理はないと言おうとしたその時、舞華にその言葉を遮られる。しかも彼女の口から出たその問いは、悪魔王の出自に関することだった。言葉を遮られたことで思わず名を呼んだが、実は俺も興味がないわけではない。その思いが現れてしまったのだろう、二の句を継ぐことができなかった。


「ふん。仮に、転生していたとしてそれが何になる」

「もし、あたしたちと同じだというなら、戦わなくてもいいでは……」

「ふざけないで! あたしは、嘗ての仲間をそこでふんぞり返っている奴の考えによって、勝手に殺された。その相手を前にして戦わないなんて、許せるわけがないわ!……アイス・ショット!」


 しかし舞華の言葉を聞いたセレンが、怒りをあらわにする。かつて冒険を共にした仲間の敵討ちを、一矢も報いずにそれで終わりにするということなど我慢がならなかったようだった。

 仲間の敵を討つという目的を達する為に、俺たちと契約を結んだ彼女である。碌に攻撃もしない状況で、舞華の提案など良しとするとは思えない。ただこの辺りは、意識の違いだろう。少なくとも俺には、セレンの気持ちが間違っているとも思えないし、舞華の考えも否定しようとも思えなかった。

 だが、このセレンが放った魔術が第二幕の幕開けとなる。彼女も俺たちの魔術の師匠と言える先代シーグヴァルドの疑似人格から指導を受けたこともあって、詠唱破棄ができるようになっていた。しかし、彼女がいつの間にか下級や中級の魔術だけでなく上級魔術の詠唱破棄までできるようになっているとは思わなかった。

 この不意打ちと言える魔術だが、残念なことに目的を果たせず終わる。スイフルへと向けられた氷系魔術であるアイス・ショットだが、彼の腕の一振りで迎撃されてしまったからだ。

 しかし、全く目的を果たせなかったというわけでもない。先代シーグヴァルドの指導による効果だろう、スイフルの腕が凍り付いていたのだ。これには、実際に魔術を迎撃したスイフル以上に周りの悪魔が驚きを現す。悪魔は、身体能力や魔術の扱いや魔力量などおよそ全ての面でフィルリーアに生きる者より上であるとされているし、実際にその通りなのだ。

 そんな悪魔の頂点に立つのが、悪魔王スイフルとなる。その悪魔王の腕を凍らせたのだから、悪魔側が驚くのも当然と言えた。たとえ魔術を唱えたセレンが、魔力の扱いに長ける魔人類であるとしてもだ。

 もっとも、セレンが魔人類出身であることを悪魔側は知らない……筈である。つまり、一般的な人間と見ている可能性が高く、その意味でも驚いたのだろうと思えた。

 因みにスイフルの凍った腕だが、どうやら完全凍り付いたわけではなかったらしい。それを証明するようにスイフルは、腕の大きく振ると腕に張り付いた氷を払う。そして、つい先ほどまで凍った筈の腕を振っていたからだ。


「いけ、ものども」

『はっ』


 スイフルの言葉とともに、無傷の悪魔たちが接近してきた。すると間もなく戦いの模様が一機に乱戦へと流れてしまい、俺も迂闊にガトリングが撃てなくなる。フレンドリーファイアなどを意図的にしたいとは思わないので、一まずガトリングをウエストポーチへしまった。

 その直後、悪魔王の近衛じゃないかなと判断した悪魔の一人が、手にした剣で攻撃を仕掛けてきたのである。即座に俺は振るわれている剣の軌跡を見切りつつ正面から相手の懐に飛び込むと、脇に片腕を入れてそのまま巻き込むように投げた。

 標的を背中から床へ叩きつけ、それから追い打ちとして悪魔の頭に足を落とす。直後には体を震わせたが、それ以上動くことはなかった。

 すかさず短杖状態のツインマジックブレードを手に取ると、両端から魔刃まじんを出現させる。その時、もう一人の近衛兵が剣で切り付けてきたので、俺も魔刃で切り上げることで迎撃する。一瞬交錯し、間もなくキンッという甲高い金属音が聞こえてきた。


「……ばかなっ! 剣を切り裂いただと!?」

「それが現実。驚きのまま、死ね」


 手の中で短杖を回転させて、切り裂いた魔刃とは反対側に発生させている魔刃で悪魔を切り裂く。そこで素早く周りに視線を向け、味方で劣勢となっている者がいないかを確認した。

 まずオルとキャスの兄妹とアイナとセレンだが、幹部クラスの実力を持っていると判断した女性の悪魔とシュネが逃がしたやはり女性の悪魔を相手に連携しながら戦っている。そして祐樹たちはというと、やはり幹部だと断じた男性の悪魔と彼が率いていると思われる近衛兵と戦っていた。

 つまり彼らはごく自然に二つのチームに分かれて戦っており、悪魔側もその動きに合わせた形となっているのだ。

 その味方となる二つのチームだが、数の上では劣勢と言えるだろう。だが祐樹たちは上手く立ち回っていて、ほぼ五分の戦いを演じている。しかしオルたちはそうではなく、やや劣勢といった様相ようそうだった。

 その理由は、キャスである。彼女は実戦経験が乏しいせいか、動きにどうしても遅れが見える。そのことが微妙に、彼らの足を引っ張っていた。これは手助けに向かった方がいいと考えたその時、一人の悪魔が剣を持って打ち掛かってくる。その動きは思いのほか早い上に、既に倒した近衛兵とは比べ物にならないくらいに力強い打ち込みであった。


「……なるほど。それで、俺の相手はお前か」

「そういうことだ!」


 しかしてその打ち込みだが、対応できないぐらいに速いというわけでもない。それゆえに悪魔の打ち込んできた剣を魔刃で受け止めたわけだが、近衛の持っていた剣と違ってその悪魔が持つ剣の剣身は魔刃との鍔迫つばぜり合いに持ち堪えていた。

 しかしてその剣だが、明らかに近衛の持っていた剣とは違っている。恐らくだが、その色合いから見て、ミスリルともまた違うようである。強いて上げるとすれば、勇者たる祐樹が持っている剣が近いだろうか。

 しかしそうなると、その剣はオリハルコン製となる。だがそれならば、どうして魔刃に耐えられたのかということにも納得もできた。


「その剣……オリハルコン製か!」

「その通りだ!」


 そう答えた悪魔は、鍔迫り合いの状態を嫌ったのか魔刃を払い少し距離をとった。

その動きを見るに、中々の技量の持ち主であるだろう。有り体にいえば、強者に間違いはない。だが、それも当然であった。

 何せ俺に対して切り込んできたその悪魔の正体とは、悪魔王スイフルに他ならなかったからである。そして彼の腕も、伊達に悪魔を率いているわけではないと思えるぐらいにはあったというわけであった。


悪魔王との戦いです。

結果は、どうなるのだろう?


ご一読いただき、ありがとうございました。

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