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第五十九話~拠点~


第五十九話~拠点~



 悪魔王の本拠地、もしくは重要拠点と思われる場所をついに発見する。その地点は、人里より離れた山並みが連なる地域であり、その場所より戦場より逃げ延びさせた悪魔にシュネが取り着けたビーコンから発信されている電波が発信されているからであった。





 悪魔側の情報が入ったことで、オルたちだけでなく祐樹たちも研究所のメインフレームたるネルトゥースが置いてある部屋へと集めていたのだが、その祐樹たちは一様いちように驚いていた。こういった知識が全くないだろうサブリナも含めて、仲間となった以上はレクチャーをしていたが、それでも予想の上をいっていたと感じているようである。


「人工衛星もあるのかよ!」

「そもそも、宇宙を旅すると言っていた。なら、これぐらい当然だったんだよなぁ」

「祐樹、俊。そういうことだ」


 それから暫くのち、該当座標の上空へ移動した人工衛星からの映像が届く。そこに映っていたのは、山並みが連なるだけであった。しかも、映像から見えるのは山並みだけで拠点らしきものは映っていない。悪魔王がいるかも知れない場所だと思っただけに、肩透かしを食らったような心持となっていた。


「何もないな」

「見た目はね」

「……どういうことです?」

「祐樹クン。多分だけど、私たちの拠点である研究所と同じなのよ。そうでしょ、ネルトゥース」

「はい。シュネーリア様のご指摘通り、追跡装置のビーコンはモニターに映っている場所の地下から発せられています」

「そういうことか!」


 確かに、地下にあれば上空からの映像に映らないのも道理だ。

 そして映像に映らない以上、実際に現地まで行って確かめる必要があるだろう。そうなると、俺が行くのがいいだろうな。

 何せ生き残るという意味においては、俺が一番適任だからだ。だが、その考えはシュネによって却下される。そして彼女が示した代替だいたい案、それはドローンを送り込むことだった。


「だけど、悪魔王ってドローンを知っているんだよな」

「悪魔の話が本当ならそうね……って、あれ? もしかして……悪魔王も転生者?」

「どうした、シュネ」

「う、うん。その、今思い付いたのだけれど。悪魔王って、もしかして転生者なのかなって」

「……あ! そうか!! それならドローンを知っていてもおかしくはないな」

「うん。それであれば、戦争の仕方が地球のやり方に似ていたのも納得できるわ」


 どうして気付かなかったのだろう。

 既に、祐樹たちや未確認ながらも俺やシュネという事例が存在している。ならば、祐樹たちが転生の秘術で呼ばれる前にも同様のことが起きていたっておかしくはない。いや。寧ろ、過去に成功しているからこそ、転生の秘術が使われたと考えた方が必然と言えた。


「ちょ、ちょっとまってくれ。悪魔王が転生者って、本当なのか!?」

「祐樹クン。あくまで可能性の問題よ。ただ得られた情報からは、そう考えた方が自然というか無理がないのよ」

「……では、話し合えば分かってくれませんか?」


 まるでそれが一縷の望みといった雰囲気で、舞華が提案をしてくる。しかし、今となっては少し難しいだろう。無論、対立したということもある。だが、それだけではないのだ。既に敵味方という状態であるし、何よりセレンのことがある。もはや俺たちにしても、悪魔王側にしても引けはしないのだ。

 だが、必ずしも可能性がないとは言わない。もしかしたら、俺たちも知らない情報を持っているかも知れないからだ。しかし現状、分からないので考えても仕方がない。恐らく、現場で臨機応変りんきおうへんに対応するしかないだろう。

 とはいうものの、考えてみれば強制的にしかも一方的という、いわば拉致らち誘拐ゆうかいのごとく呼ばれた方としてはたまらないものがある。フィルリーア世界で起きた事件なのだから、そこに生きている自分たちの手で解決して欲しいものだけどな。



 俺たちは、該当座標から少し外れた地点へドローンを送り込んで現地を確認する。直接、その判明している座標へ送り込まなかったのは、予期せぬ事態が起きる可能性を少しでも減らす為といっていいからだ。もしかしたら、悪魔の本拠地かも知れない。ならば、出来る限りリスクが少ない方がいいのだ。

 間もなく現地の座標から少し離れた場所へ、一機のドローンが転送された。すると即座に、光学迷彩を展開してから静かに目標地点へ近づいていく。偵察用ということで消音器が搭載されているので、派遣された全機とも通常のドローンより静かである。しかも先におこなったように光学迷彩もできるので、余計に見つかりづらくなっている代物だった。

 やがて、送り込んだドローンが該当座標に到着するも、やはりこれといった物は見当たらない。しかしこの地が何らかの拠点であるならば、必ず入り口となる場所が近くに存在すると思われる。となれば、その場所を見つければいい。しかし一機ではその探索も限定的となってしまうので、現地へ追加で同タイプのドローンを複数送り込んでいた。

 人であれば長時間続けるのは難しいだろうその探索も、人ではないネルトゥースであれば続けることが可能である。そして彼女が操る複数のドローンは、見事その役割を果たしていた。しかしてその場所は、ビーコンが示している座標よりも、いささか離れた地点となる。そこには、岩壁に隠す様に存在する、四角く切り取られた空間であった。

 一見すると崖とほぼ同化しているようにしか見えないが、確かに四角く切り取られている。しかもセンサーの反応から、どうやら通風孔らしい。大きさとしては、人が四つん這いになればどうにか通り抜けができるぐらいだろう。あからさまに怪しいといってよく、調べてみる必要があった。

 それにこの場所は、逃げた悪魔に付けたビーコンが反応する地点からそうは離れていないので、悪魔の拠点に関係しているのは間違いないだろう。その意味でも、調べる必要があった。

 研究所からの指示を受けて、ドローンの一機が静かに通風孔と思わしき馬車から侵入する。しかし日の光が届いていないので、当然だが暗い。本来であれば明かりをつければいいのだろうが、そのようなことをすれば悪魔側に発見されてしまう可能性が出る。それでは、本末転倒ほんまつてんとうであった。

 もっとも、シュネがそのような点を想定していない筈もない。すぐに彼女はネルトゥースへ指示を出して、高感度と赤外線の機能を持つモードへカメラを切り替えていた。その状態のまま通風孔を進んだドローンだったが、やがて阻まれることになる。その理由は、通風孔を覆っている金属の網だった。無論、網とはいえ薄いものではない。しっかりとした作りを持つ、金属製の網だった。


「どうする?」

「問題ないわ」


 俺の問いにそう答えたシュネは、指示を出す。するとドローンから、マジックハンドが出てきた。しかもそのマジックハンドの手の部分からは、青白い光が出ている。その様子を見て訝しげに眉を寄せると、シュネから説明があった。

 彼女曰く、あれで網を切る気らしい。正体が何なのかを聞くと、ナイフほど長さしかないが魔刃まじんだというのだ。俺の持つツインマジックブレードから出る魔刃に比べれば、非常に小さい。だが、間違いなく魔刃らしいのだ。そして小さいのにも理由があって、節約の為らしい。ドローンに搭載している魔石の持つエネルギー消費をできる限り抑える為に、ナイフ程度の刃渡りに抑えているというのだ。

 なお魔刃だが、大きくすることは可能らしい。同時に魔石のエネルギーを大きさに比例する形で消費してしまうので、大きさを変える場合は慎重に行う必要があるのだそうだ。


「なるほどね」

「さて、切断するわよー」


 何だろう。どこか嬉しそうに聞こえる。いや、きっと気のせいだろう。そう結論づけ、俺は突っ込みも入れずにそのままスルーした。やがて通風孔を塞いでいた金網を切断すると、ドローンは進んで行く。すると間もなく、先に光が見えてきた。

 シュネの指示でことさら慎重に進んで行くと、やがて通風孔の出口ともいうべき場所へ辿り着く。しかしながら、そこにも金属製の網があった。

 こうして二枚目があるところを見ると、これは完全に侵入者に対抗する為に設置してあるものだろう。とはいえ、一枚も二枚も変わりはしない。前に切断した時と同じように、切ってしまえばいいだけだ。そう思ってシュネの方を見たのだが、なぜか彼女は難しい顔をしている。これには俺だけでなく、この場にいるメンバー全員が不思議そうな顔をしていた。

 ただ、ビルギッタたちは、全く顔色を変えていなかったが。


「シュネお姉ちゃん、どうしたの? 前みたいに、切ったりしないの?」

「……うん。これは、無理ね」

「え? どうしてだシュネ」

「みんな。これを見て」


 キャスからの質問に無理だと答えてからシュネは、モニター画面の半分に映像とは別のものを映し出す。それは、何か分からないものだった。パッと見には、サーモグラフィのようではある。しかし、映像には金網と金網の向こう側が見えているだけに過ぎない。とても、モニターの半分に映ったような何かがあるようには見えないのだ。

 しかも画面の端には、幾つかの数値がある。これが一体、何を指している数値なのかも皆目見当がつかなかった。全く意味が分からないので、シュネへ尋ねてみる。すると彼女から返ってきた答えは予想外でもあり、同時に納得できるものでもあった。


「モニター画面の半分に映っているのは、金網を境にした手前側よ。光学カメラとは別に、センサーで測定したものを可視化処理したと思えばいいわ」

「それで、結局はどういうことなんだ?」

「結界よ。私たちの研究所と同じくね」


 実は俺たちの研究所にも、防衛用の結界がほどこされているのだ。

 そういえば、シュネは以前に俺たちの拠点とも言える研究所と同じく、悪魔側にも生きている施設があると言っていたことがある。ここが悪魔側の本拠、または重要な拠点であるならば俺たちの研究所と同じ機能があってもおかしくはないのだ。

 だがこうなると、侵入するということがかなり難しくなる。現地付近に行くことは転送で可能だが、結界を超えるとなるとかなりの負荷を与えなくてはならないからだ。しかも相手は、本拠かも知れない施設を覆っている結界である。俺たちの研究所を守っている結界と同等ぐらいと考えても、差し支えはないぐらいなのだ。ただ、キュラシエのパイルバンカーでもぶつければ破れるだろう。だが、その時点で急襲でとなるのは間違いなかった。


「どうする? いっそのこと、キュラシエで攻撃でもして破るか?」

「任せて。手立てはあるわ」

「本当ですか?」

「ええ。ただ、これから用意するとして、少し時間が掛かるわね。完成するまで、まっていてね。セレン、行くわよ」

「あ、ちょっと待って、シュネ」


 そうセレンに声を掛けてから、シュネは足取りも軽やかに出て行く。そのシュネを、慌ててセレンが追い掛けていった。俺はその様子を見て、大丈夫だろうと判断する。少なくとも、素案はあるだろうことは間違いない筈なのだ。

 あとは、魔科学者という専門的な立場の話となる。要するに科学者でもなく、またセレンのようにシュネから手ほどきを受けていない俺たちの出番はないということだ。


「ここはシュネとセレン、それとネルトゥースに任せよう。多分だが、現状を打破できる道具、もしくは魔道具でも作るのだろうさ」

「はい? シュネさんは、そのような高度な魔道具が作れるのですか!?」

「まぁな。えっとサブリナ、この研究所自体が一種の魔道具だ。しかも、古代文明期最高位といっていいだろう。その研究所を受け継いでいるのは俺だが、古代文明期の技術を受け継いでいるのはシュネだ。だから、彼女に任せればいい。というか、シュネに任せるしかない」

「は、はぁ。そう、なのですか」

「果報は寝て待て、という言葉もある。俺たちは俺たちで、できることをしておこう


 祐樹たちはまだしも、生粋のフィルリーア出身であるサブリナからすれば、高度の魔道具を作れるということ自体が驚きに値するだろう。だから、彼女の反応も当然なのだ。

 それはそれとして、今はシュネが作るだろう魔道具を待つしかない。ただ間違いなく、現状を打破できる。そういったもの作ってくれるだろうことは、俺の経験から予測できることであった。


悪魔側の本拠地か重要施設か分からないが、重要施設と思われる場所が判明したのでまず偵察です。

いきなり吶喊とは、なりませんでした。

一方でシーグはやりそうでしたけど、シュネによって抑えられました。


ご一読いただき、ありがとうご遭いました。

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