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第五十話~登場~


第五十話~登場~



 悪魔王旗下の軍勢による襲撃という知らせを受けて現場へ向うと、そこには七メートルはある大型のゴーレムが三体も存在していた。しかもその三体を操っている者は四魔将を名乗る悪魔王の幹部であり、彼らはその大型のゴーレムに搭乗しながら軍勢を指揮していたのであった。





 俺たちと対峙していた三体の大型ゴーレムだが、既にもういない。その代わりに、一体のゴーレムがその場で威容を現していた。大きさとすれば、二十メートルには届かないといったところだろう。だがそれでも、俺たちの十倍は確実にあると思われる。細かなディテールは別にするとして、なまじ人型であるだけにその大きさから来る圧力は相当な物だった。


「ふふふ。あははは! 驚いたか!!」


 勝ち誇ったかのような声が響いたことで、その変容に呆気に取られていた俺たちの意識も戻る。ふと見れば、怪我の為だろうか。少し離れたところでうずくっている勇者たちからも、同じような雰囲気が伺い知ることができた。

 予告もなく、いきなり目の前に成人男子の十倍はある人型の存在が現れたのだから、それも致し方ないと思えた。


「これぞ我らの秘密兵器よ。この力を持って、相手をしてやろう!」


 その言葉と共に、合体したことで誕生した大型ゴーレムの拳が振り降ろされる。合体という事実から呆気に取られていた先程までと違い既に意識は戻っていたので、すぐに回避へ移ることが出来た。

 そのお陰で直撃こそはまぬがれたが、相手は二十メートル弱の大きさを持っている。その物体が振り降ろした拳が地面を叩いたことで、極狭い範囲であるが局地的な地震にも似た現象が起きていた。

 スラスターを使い、運よく空中へ逃れた俺とシュネとセレンは問題ない。だが、飛べないオルとビルギッタとエイニはまともに影響を受けている。しかし四つん這いという、ある意味で安定しているオルはバランスを崩す程度で済んだが、ビルギッタとエイニは振動した地面に足を取られしまったことで転倒していたのだ。

 そんな二人の様子を見て攻撃の好機と思ったのだろうか、ゴーレムが再度拳を振り上げている。その事態に際して俺は、即座にマジックカノンなどの武器を全てパージして身軽になると、スラスターを使いビルギッタに接近してそのまま抱え上げる。同時にシュネも動いており、彼女もまたエイニを助け出すことに成功していた。

 因みにビルギッタもエイニも、俺たちにお姫様抱っこされていた。


「大丈夫か?」

「シーグヴァルド様。ありがとうございます」


 ビルギッタが少し頬を赤らめているようにも見えるが、気のせいだろう。そんなビルギッタを抱えながら少しの時間空中に留まっていたが、追撃がないことをみて地面に降りると彼女を開放する。それから大型ゴーレムを見るが、内心ではどうしたものかと考えあぐねていた。既に破壊力が高い武器は全てパージしてしまったので、今ある武器はマジックツインブレードや鉤爪、他には銃火器ぐらいだ。

 その銃火器にしても、一番攻撃力があるのは対物魔ライフルとなる。マジックカノンやミサイルでも損傷は与えても撃破ができなかったことを考えれば、攻撃力としては物足りないだろう。そうなると、メインの攻撃はシュネやセレンの魔術が中心となる。だが、その魔術にしても撃破できるのかと言われると、いささか疑問符が出てしまうのだ。

 今は倒れ伏しているが、勇者一行のメンバーの一中に魔術王という肩書を持つしゅんという男がいる。その彼が放つ魔術を何度か食らっているにたであろうにも関わらず、撃破に至っていないのだ。

 彼が放つ魔術の威力だが、シュネを超えるほどではない。だが、仮にも魔術王などという大それた肩書を持っているのだから、弱いということはないのだ。しかも、彼が魔術で損害を与えていただろう時分は、三体のゴーレムが合体する前である。今は合体してより大型となっていることを考えれば、その防御力は増していると考えた方が無難であった。


「シーグ、どうするの?」

「シュネ、セレン。魔術で時間を稼いでくれ。キュラシエさえ到着すれば、そっちで相手をする」


 まさか、合体前とはいえ七メートルを超す大型のゴーレムが三体いたことで念の為にとネルトゥースに発進を指示したキュラシエを本当に運用する事態になるとは、思いもしなかった。

 しかし、現在の状態ですら想定外といっていい。それにどのみち、いつかは実戦に投入する代物だったのである。ある意味では、ちょうどいいとも言えた。とはいうものの、キュラシエが到着までには今少し掛かるだろう。それまでは、何とか耐える必要がある。それほど時が掛かるとは思えないが、キュラシエが来ないことにはお話にならないのだから。



 シュネとセレンが、魔術による攻撃を仕掛けているが、やはりというかあまり効果が見られるようには見えない。セレンの放つ上級魔術ですらそうなのだ。しかし流石にセレンの放つ超級魔術となれば別だが、それでも威力から考えればそれなり以上ではなかった。

 大きさという差があるにしても、これは異常だといえるだろう。これはあくまで想像だが、あのゴーレムには魔術に対して強い耐性があるかも知れない。だがそうなると、マジックカノンやマジックミサイルの攻撃を浴びせた時に見せた損傷具合の理由が分からない。通常のミサイルは別にして、マジックカノンやマジックミサイルは、基本魔力を攻撃の源としている。となれば魔術に対する高い耐性を持っていると思えるゴーレムが受けた損傷の、理由がつかなくなるのだ。

 ふとその時、ゴーレムの胴体に穴が穿うがたれるのが見える。その跡から、対物魔ライフルの銃撃によるものだと思われた。


「……もしかして、物理攻撃に弱いのか?」


 対物魔ライフルだけに留まらないが、魔銃から放たれる銃弾は魔力でコーティングされている。つまり、魔力攻撃でありながらも実弾による物理攻撃でもある。要するに、どちらの属性も持っているのだ。

 そして、魔術に対してあれほどの防御力を見せていたにも関わらず、口径があるとはいえマジックカノンなどから比べれば破壊力が低い銃撃による損傷がある。つまり、魔力を基本とする攻撃に対する防御力よりも、物理を基本とする攻撃に対する防御力のほうが低いという予測が建てられるのだ。

 これがもし事実なら、攻略の糸口が見えてくる。キュラシエによる攻撃次第になるだろうが、結果如何いかんでは、優位に戦いを進められる可能性があるのだ。そのような考えに至った時、通信が入る。それは、とあるコンピューターからであった。

 直後、空へ視線を向けて辺りを探る。すると、ある方向から急速に近づく機体が見えてくる。その見た目はというと、大型の飛行機体であった。

 ようやくのお出ましに、俺はにやりと笑みを浮かべる。それからシュネへ声を掛けてから、ビルギッタを抱え上げた。何かあるたびに抱えるのも手間なので、この戦いのあとにガイノイドやアンドロイドが使う飛行用の道具でも作ってもらうかなどと考えつつスラスターを使い空へ飛びあがる。その過程中で、妙に薄ら寒い何かが背筋を走ったようにも感じたが、今は気にしないことにした。

 その後、乗り込みやすいようにと速度を落としていた飛行機体に乗り移る。まずは抱えていたビルギッタを、機体先頭部分にあるコックピット近くへ降ろす。すると彼女は、素早くコックピット内へ入り込んでいった。

 その一方で俺はというと、飛行機体の中ほどまで移動する。そしてそこにある、もう一つのコックピットへと乗り込んでいたのである。


「行くぞ、ビルギッタ」

≪はい。シーグヴァルド様≫

「シエ! A・Bユニット、パージしろ」

「マスター。了解しました」


 キュラシエに搭載されているコンピューターには、シエという愛称を俺はつけている。そのシエへ指令を出した直後、ビルギッタが乗り込んだコックピットがある機体前方のユニット部がより前方へと移動し、同時に俺が乗り込んだコックピットからさらに後方部分のユニットがより後方へと移動していった。

 それから間もなくして、機体前方にあったAユニット部と、機体後方にあったBユニット部が離脱を完了する。その後、それぞれのユニットが合体して、いささか大きさは減じたがそれでも大型の飛行機体となる。そしてその場に残ったのは、俺の乗り込んでいる部位だけとなる。その部位とは、人型をしたロボットであった。  

 その後、人型ロボット……つまりキュラシエを操作して地面に着陸して対峙するも、大型ゴーレムに動きはない。その理由は分からないが、隙だらけにしか見せない状態は好機としか言いようがなかった。

 俺は片腕に装備している大型のシールドを身構えると、ローラーダッシュを使用し高速で近付き盾による攻撃を行う。いわゆるシールドバッシュであり、なぜかまともに食らった大型ゴーレムが吹き飛んでいく。だがこれにより、目論見通り町から距離をとることができた。

 こうしたのには理由があり、キュラシエと敵の大型ゴーレムが戦うには町が近すぎるのである。それでなくても、俺の操るロボットも悪魔が操る合体したゴーレムも大きい。ここで立ち回りなどしようものなら、町へ被害が出る可能性が多分に高かったのだ。

 そこで敵を吹き飛ばすことで、町から離そうと考えたのである。そして思惑通り、大型ゴーレムを吹き飛ばすことで町から距離をとることが出来たというわけであった。

 因みにキュラシエに搭載されているコンピューターとなるシエであるが、搭乗者がいなくても自衛の為の行動はできるだけの性能は持っている。しかし搭乗者がいた方が、キュラシエを最大限に生かすことが出来るのもまた事実であった。

 その後、俺は飛行機体を操っているビルギッタへ、まだ町へと侵入を果たしていない悪魔の軍勢へ攻撃するように指示を出す。即座に了承したビルギッタは、飛行機体に搭載されている武装を使用して攻撃を始めていた。

 するとその攻撃が切掛けとなったのか、それとも俺が吹き飛ばしたことが原因となったのか分からないが、対峙しているゴーレムからと思われる音声が聞こえてきたのだった。


「ま、まさか! 貴様も、そのようなゴーレムを使用しているというのか!」


 その時、聞こえてきた言葉には驚愕の色が見え隠れしている。しかし、それはそうだろう。実際、俺も大型ゴーレムを見たときは驚きのあまり呆気に取られたからだ。

 それはそれとして、今はそこに思考を向けるべきではない。まずは目の前にいる大型ゴーレム、こいつを片付ける方が先決なのだから。 


「……違うな。こいつは、お前たちの操るゴーレムとは、根本からして違うものだ」

「では……な、何だと言うのだ!?」

「答えるのもやぶさかではない。だが、そもそも敵であるお前たちへ答えるいわれもない!」


 そう言いつつ、盾を装備していない腕に持っていた武器となるツインライフルから、装備武器の一つである大型の刀へ持ち変える。ツインライフルを撃つには距離がなく、近すぎる為だった。

 なおこの武器はマジックエッジと称しているが、要は斬艦刀である。そしてやいばにとなる部分に魔力をコートすることも可能なのだが、必ずしも魔力でコートする必要があるわけでもない。そのままでも、実体剣として使用できるのだ。

 そのマジックエッジへ、魔力を通わせて刃部分をコートする。あえてこのようなことをしたのは、先に考えた魔力に対する耐性があるのかを、実際に確認する為である。ローラーダッシュを使用して接近すると、そのまま逆袈裟で切り上げる。咄嗟に距離をとろうとした大型ゴーレムだったが、少し反応が遅れたようでマジックエッジによって片腕が切りつけられている。しかし致命傷を与えるつもりで攻撃したのだが、大きくても切り口をつけるだけに留まっていた。

 その結果に内心で舌打ちをしつつ、マジックエッジに通わせた魔力を切る。そして、もう一度ローラーダッシュを使って接近したが、流石に避けられてしまう。しかしそれは想定していたことだったので、そのまま背面にあるスラスターを使ってさらに推進力を得て速度を上げて肉薄した。

 これは予想外だったのだろう、大型ゴーレムがキュラシエの動きについていけていない。そのまま魔力を纏わせていない実体剣を振り降ろすと、奇麗に大型ゴーレムの片腕を切り飛ばしている。それでも片腕を犠牲にすることで逃れた大型ゴーレムは、切り飛ばされた腕をまたしても再生させていた。

 このように、すぐ再生させられていては面倒以外何物でもない。これでは埒が明かないので、再生させるいとまを与えないくらい苛烈に攻める必要を感じていた。

 一応、魔力が基本となる攻撃も効いていないわけでもないようだが、やはりより多くの損傷を与えるには魔力が介在しない攻撃を行った方がよさそうである。そこで、キュラシエの武装の一つとなる通常のミサイルを大型ゴーレムに向けて全弾発射した。

 すると大型ゴーレムから魔力が発せられかと思うと、ゴーレムの体が幾つかの塊が飛び出してきてミサイルに当たる。その為、通常ミサイルが幾つか誘爆してしまった。しかし全てというわけではなく、幾つかは着弾してゴーレムのボディへ破壊をもたらしている。その直後、俺はまたもローラーダッシュを使用して踏み込むと魔力を発生させずに実体剣となっているマジックエッジを切り降ろす。先程のミサイルが着弾したことで発生した爆発と、実体剣モードのマジックエッジによる攻撃で、大型ゴーレムへ大きな損傷を与えることに成功した。

 これならば上手くいくかと考えたが、そうは問屋が卸してはくれないらしい。またしても、大型ゴーレムが即座に再生を始めてしまったからだ。流石に看過できないので、追加攻撃を行って再生を阻止するべく接近する。だが大型ゴーレムは、まだ残っていた片腕を半ばから切り離す。そればかりか、何と飛ばしてきたのだ。

 まさかロケットパンチを受けるとは思っていなかったので、まともに食らってしまう。思いの外衝撃があり、しかもカウンターである。キュラシエもたたらを踏んだばかりか体勢をいささか崩してしまう。その隙に大型ゴーレムは、再生を完了させていたのであった。


えー。

満を持して、人型ロボットであるキュラシエ登場です。

やっと、こいつを登場させることができました。

それから……敵がロケパン(ロケットパンチ)を使ってしまった。

初めからキュラシエに装備させる気はなかったので、いいですけどね。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 勇者たちがどんなメンタリティなのか、心配が残りますね。 持ち上げられて、万能感で傲慢なのか。 真摯に悪を討つつもりなのか。 一番の懸念は、シーグたちの持つ超魔導科学を無条件で世界のために供出…
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