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第四話~販売~

ギリギリ、連日更新です(汗


第四話~販売~



 野宿をした翌日、行商をする辺境の村に無事到着した。村での商売をする許可を貰う為に、村長宅へと向かう。そこで出迎えてくれた人物は、四十代半ばかもう少し年を重ねた村長自身であった。





 玄関に出迎えてくれた人物の案内で、村長の家の中へ入る。実は案内してくれた人こそ、この村で村長を務めている人物だった。正直に言うと、あまり村長らしくない。少し貧相で、村のおさという感じを受けないのだ。

 勿論、本人を前にしてそんなことを言うつもりはない。ただ黙って、村長のあとについていくだけだった。

 間もなく、応接間なのだろうと思える部屋に入ると、そこには一応ソファらしきものがある。だがそれは、あくまでソファらしきものでしかなかった。辺境の村という立地条件を考えれば、専用の部屋を用意しているだけましなのだろう。

 そのソファへ座るようにと勧められたので、静かに腰を降ろす。クッションなどは全く効いておらず、微妙に座りづらい。もっとも、村長宅を訪れたのは行商する許可を貰い、広場で商売する為である。この際、村長宅の家具がみすぼらしいかどうかなど、それこそどうでもよかった。


「して、何の用でしょうか」

「村長。私たちに、行商の許可をいただきたいのです」

「無論、構いません」

「ありがとうございます」


 村長から、首尾よく許可を貰えたあとで村長宅を出る。もっとも、村長に断る理由などない。この辺境にある村において、行商人の行動を妨げるなどまず有り得ないからだ。しかも行商人の売る物は、村では手に入りづらかったり、実際に村にはなかったりする品物が売られることがある。

 また、たとえ村で手に入るものであったとしても、より品質がいい品物が売られる可能性があるのだ。そして実際、俺が持ち込んでいる商品は品質がいい。小麦粉など都市で入手したものもあるが、一部は自前で作っていたりするからだ。全てを自前で揃えることもできないでもないのだが、それをやってしまうと商売する品をどこで手に入れているのかと疑われてしまう可能性がある。行商で辺境地域を回っているから、たとえ商品の全てを自前で揃えるといったことを行ったとしてもまずばれることはないだろう。

 そんなこちらの事情は兎も角、村長より許可を貰った広場の一角にて店を広げる。すると話を聞きつけたのか、暫くすると村人が現れ始めた。俺に限った話ではないが、行商人が扱う商品はそれこそ多岐に渡る。生活必需品から生活物資、武具など実に様々さまざまなのだ。

 なお俺たちの場合、生活必需品や生活物資など利益が薄くなりがちなものは、町で仕入れている。それに引き換え、剣や弓など製作に金と時間が掛かる品物については自前で揃えていた。

 具体的には研究所の敷地内の一角にある小さい製造ラインで、一括生産をしているのだ。浪費を抑えたいのに自作するなど前言を翻すようにも感じるが、実はこちらの方が経費の面などで削減ができるのだ。

 たとえば鎧を町で仕入れる場合、その鎧の値段には原材料費の他に人件費や税金などが上乗せされている。しかし自前で作れば、原材料費が大半となる。何より、オートメーションで作るから人件費など一番コストが掛かるところを低く抑えることができるからだ。

 嘗てあった古代文明は別にして、今のフィルリーアは中世の中頃から中世の後期に差し掛かるぐらいのヨーロッパ諸国を想像すればいい。つまり殆どが、手作りとなる。分かり易くいうと、農民が食料等を作りそして販売するといった形態となる。確かシュネは……家内制手工業だとかいっていた筈だ。

 それこそ業物わざものの武具などを鍛えるのならば、名匠めいしょうと呼ばれるような職人へ作成を依頼すればいい。だが、大量生産・大量消費を当たり前のように享受していた俺やシュネからすれば、家庭内手工業など生産効率が悪いことはなはだしいと思えてしまう。それならば利益が見込まれる武具などは、自動化した生産ラインで作成とした方がいいのだ。

 そんな内輪の話を置いておくとして、広場で開いた店に現れた村民へ商品を販売していく。だが売れ筋の主軸は、やはり生活物資や生活必需品となる。この辺りの商品は、大きな利益は見込めない。しかし、塵も積もれば山となるのであまり馬鹿にしたものでもないだろう。何より辺境地域に商品を持ち込む場合、都市部で販売するより高めに値段を設定できるという利点もあった。

 大きな都市がある中央や中央に近い地域に比べて辺境地域は、治安という意味でどうしても悪くなる傾向がある。山賊や野盗などの出没率が上がるというのがある意味で一般的なのだが、場所によって山賊や野盗に代わって海賊や河賊が出る可能性もある。ついでに付け加えれば、辺境となればなるほど魔物が出る確率も上がるのだ。

 だが俺たちの場合、結界を張る魔道具などを駆使しているので前述のような存在に襲われたとしても怪我をする心配は殆どない。その使用する魔道具も、自前で用意できるのでコストも抑えることができるのだ。

 しかし、そんなことなど商売相手が分かるわけがない。何より言いふらす気もないので、そこはなおさらとなる。かといって下手に安く売ってしまえば、他に行商を生業なりわいとしている者たちから何をされるか分かったものではない。俺は他の行商人と違い、行商を生業とする気もないのだ。

 だからこそ、他の行商人と合わせる形で普通に価格へ上乗せしている。そうすれば、余計ないざこざなども回避できるからだ。別に嫌がらせを受けたところで怖くはないし、余裕で排除できるのだがわざわざ問題を起こす気もない。それが回り回って、国が出てきても面倒くさいことこの上ない。ならば、儲けにもなる値段の上乗せをやらない理由はなかった。

 まぁ、独占禁止法などといった法律に馴染みがあるので、多少気持ち的に引っ掛かりがないとはいわない。だがこれも郷に入れば郷に従えのことわざ通り、フィルリーアの習慣やしきたりに従う賢い生き方だと俺もシュネも考えていた。



 さて生活必需品や生活物資などが主だとはいったが、先に上げた武具などが売れないということもない。辺境の村だから人が少ないとはいえ、武器や防具などが必要ないということはないのだ。

寧ろ辺境であるからこそ、治安の関係もあって武器や防具は必要となる。一応、この村にも鍛冶屋がいて剣や鎧などのなどの武器防具、他にも鍬などといった農具などを生産して販売している。だが使用者からすれば、より品質がいい物を求めるのは当然の心理だった。

 そして少なくとも、俺たちが持ち込んでいるものは間違いなくいいものだと自負している。何せ作っているのは古代文明の技術、しかも最高位といっていい技術がまだ息づく研究所なのだ。しかも製造開発を任せているシュネに至っては、機械工学など殆どの工学系に造詣を持っている。無論、彼女も古代文明の品質をそのままに再現するなどしない。当然、劣化させたものになるのだが、それでも品質は現代のフィルリーアで作られる品物と比べても品質が高いものとなっていた。


「な、な。その弓、もう少し安くならないか?」

「これでも結構、勉強をしているのですが」

「そこを何とか」

「お客さん。流石に、聞けません」


 恐らくだが、村の狩人だと思う。というか、村人で弓を欲しがるなど大体限られているのだ。まず、村にいる狩人を最初に考えるのが普通だろう。他にも自警団の団員や、もし代官などがいれば代官が抱える兵士などが欲しがる可能性がある。しかし残念なことに、この村には代官はいない。村に入るときに門番から聞いているし、何より村に代官がいるなら村長ではなくそちらに行って挨拶をしていた。


「むぅ。よさそうな雰囲気だけど、ちょっと高いんだよ。だけどなぁ……」


 腕を組んで「むむむ」と悩んでいる狩人さんは放っておくとする。別に客は彼だけではない、他にもいるのだ。アリナやビルギッタも店員として働いているからといって、彼女たちに全て丸投げなどしない。行商を始める経緯は別にして、彼女たちの主としてそれはどうかとも思うからだ。


「……よし。兄ちゃん、その弓買うぞ!」


 ついに決断できたようで、狩人さんが購入を打診してくる。金さえ払ってくれれば何もいうことはないので、弓を売り渡すことにした。


「ありがとうございます。では少しですが、手入れ用の道具をおまけに付けましょう」

「お、そりゃ有難い。こりゃ、得だったかな」


 おまけなどといっているが、実は初めから付けて売るつもりだった。元よりそれ込みで、値段を設定している。だから実のところ、他の行商人が売っている弓などより、少し安くなるのだがそれは秘密だ。

 元々利益率は高いし、それぐらいおまけしたところで何も問題とならない。そしておまけだから、他の行商人にばれたとしても抗議されることもないだろう。文句や愚痴ぐらいは言われるかも知れないが、逆にいえばそれぐらいで済む話であった。

 何よりこのおまけという名のサービスは、武器を扱う他の村人に買ってもらうための呼び水である。どうせ手入れ用の道具は消耗品なので、その消耗品をただで貰えるとなれば買いたくなる心理もまた発生するからだ。

 まして、商品を購入したサービスで他の物を付けてくれるなどこのフィルリーアではあまりないらしい。いわゆるセット品を付けた販売方法など日本ではそう珍しい話ではないのだが、フィルリーアでは馴染みの客ぐらいにまでなっていないと行わない。つまり、こういったサービスなどまずしないのだ。

 日本で当たり前のようにあった販売方法だけにそのことを知ったときは少し驚いたが、それで少しでも他人より儲けとなるなら別にいい。何よりこのことが知れたことで、見込んでいた通り他にも買いたいという村人が何人か出てきたからだ。

 そんな武具を求める村人の中には、あえて見せるように飾っている鎧にも興味を引いている者がいる。実は目玉商品として、スケイルアーマーを飾っているのだ。しかもこのスケイルアーマーには魔術が掛かっているので、一般的な認識では魔武具となる。鎧の材質は鋼鉄製で、しかも防御力がやや向上する魔術が掛かっているので余計に値段が高騰する。それに見た目にも気を使って少々華美な仕上がりにしている。その為、余計に彼らの気を引いているようだった。

 しかし、こんな辺境の村で生活している者がそう簡単に買えるような値段の代物ではない。だからといって、都市部に住む人間だからといって買えるのかと言えばそうでもない。分かり易い方をすれば、金持ちならば不可能ではないとだけいっておくとしよう。

 それに何より、このスケイルアーマーは、いわゆる客寄せパンダ的な商品として飾って見せている。勿論、買うといって金を払う人物がいるなら売るつもりだ。売れたのならば売れたで、また作ればいいだけという話である。それなので、売ることに躊躇ためらいなどなかった。

ただ先に述べたように魔術が掛かっているので、どうしても値段は法外となる。だからといって、この鎧の値段について文句が出ることはまずない。それなりに品物を見る目があるならば、魔術が掛かっていることなど看破できるからだ。

 そして実際、このスケイルアーマーを買う者などいなかったのである。二日ほどこの村で商売をしていたが、欲しがる者はいても買うと決断した村人は多分一番金を持っているだろう村長を含めてついぞ出はしなかったのであった。


うおおお!!

な、何とか間に合った。

連日更新、切れるかと思ったーー。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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