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第三十九話~因縁~


第三十九話~因縁~



 セレンの報告が終わるまでの間、冒険者ギルド内で待っていたが、そこへ現れた冒険者の四人に絡まれる。厄介ごとに巻き込まれ面倒だと思いつつ相手をしているところへ、ようやくセレンが戻ってきたのだった。





 報告終えたセレンが、近づいてくる。すると彼女は、時間が掛かってしまったことを俺たちへ詫びていた。何で、そこまで時間が掛かったのか尋ねると、少しばつが悪そうな表情を浮かべながら理由を教えてくれた。


「ちょっと色々いろいろ、疑われたりしたのよ。依頼に失敗して、仲間が二人とも亡くなったから、仕方がないけど」

「なるほど……結局のところはどうなった?」

「取りあえずは、何とかなったわよ」

「それは何よりだ。それで冒険者ギルドへの登録だけど、どうすればいい?

「じゃあ、着いてきて」


 セレンを先頭に、俺たちは冒険者ギルド内にあるカウンターへと向かう。そこには冒険者ギルドのスタッフと思われる女性が、椅子に腰を降ろしていた。そのスタッフへ、セレンが二言ふたこと三言みこと話し掛ける。すると女性は、六枚の書類をカウンターの上に置いていた。

 因みに、キャスは登録しないので当然だが数には入っていなかった。

 さて、カウンターの向こう側に座っていた女性の出した書類だが、そこには名前と出身、それと得意なことを記入する欄があるだけの酷くシンプルなものでしかない。その書類に、必要な項目を記入して提出する。これだけで、登録は終わりだった。

 その後、冒険者ギルドや冒険者の説明となるわけだが、その辺りは既にセレンから聞いている旨を伝えると、女性から小雑誌を渡される。その小雑誌だが、そこには冒険者ギルドのルールが記されていた。


「一応、読んでおいて。どのみち、冒険者カードの発行まで少し時間が掛かるから」

「セレン。冒険者カードって何だ?」

「冒険者ギルドに所属していることを示すカードよ」


 冒険者ギルドに所属している者は、全てこの冒険者カードとやらが発行される。最初は無料らしいが、紛失した場合の再発行には金が掛かってしまうらしい。紛失しないよう、気を付けないといけないな。

 兎にも角にも、冒険者カードが発行されるまで、渡された小雑誌を読んで時間を潰す。おおよそ小雑誌の三分の二ぐらいまで読んだ頃、呼ばれたのでカウンターへ向かうと、先程の女性から冒険者カードを渡された。

 渡されたカードに記されているランクは、一番下のカッパーである。実力のあるなしに関わらず冒険者ギルドに所属した冒険者は、必ずこのランクから始めるとルールで決まっているからだ。


「これで、貴方あなたがたは冒険者となりました。では改めまして……ようこそ冒険者ギルドへ」


 臆面も照れもなく、淡々と女性がいう。これは完全に、言い慣れているのだろう。恐らく、手続きが終わって冒険者となった者全員へ言っているのではないかと思われた。

 何であれ冒険者ギルドに登録する手続きが終わったので、さっそく依頼書が張り付けられている掲示板へと向う。この掲示板に張られている依頼書を持ってカウンターで手続きをすれば、その依頼を受けたことになるのだ。

 とはいえ、時間は昼過ぎと言ってよく、あまり依頼は残っていない。あるのは、数件の依頼だけだった。

 実はこの依頼だが、大きく分けて二種類存在する。一つは、依頼者が指定した物品等を確保するという依頼であり、こちらは冒険者ギルドがこなす依頼の一般的なものとなる。だが依頼にはもう一つあって、それは国や貴族などが依頼者となって恒常的に出している依頼であった。

 この依頼だが、大抵は魔物討伐となる。無論、国や貴族が魔物討伐を行っていないということはない。領地の治安維持の為に、寧ろ積極的に行っていると言っていいだろう。しかし彼らには、他にも仕事があるのでどうしても手が足りないのだ。

そこで、冒険者ギルドの出番となる。こちらに依頼を出して、冒険者に魔物討伐を行わせているのだ。

 しかも魔物討伐の依頼だが、魔物であれば相手は問わない。しかし大抵の場合、ゴブリンやオークなどが多かった。前にも述べたが彼らは繁殖力が異常に高く、しかも人型であれば繁殖相手を選ばないからである。それこそスライムなどのような不定形な魔物やゾンビやスケルトンに代表されるアンデットは無理であるが、人型となれば話は別であった。それだけに、厄介でもある。ゆえにこうして、恒常的な依頼対象とされているのだ。

 なお、恒常的に出されている依頼だが、必ず先に手続きをする必要がない。内容だけ把握しておいて、依頼内容を果たしてから受け付けをしてもいいのだ。この辺りの融通さは、恒常的に依頼が出されているメリットと言えた。


「どちらにしても、受け付けをする必要はないと」

「ええ。あとでもいいからね……あら、冒険者ギルドからの依頼だわ」


 冒険者ギルドの依頼などあるのかと思ってみると、確かにあった。しかも、ランクによる制限がない依頼である。しかし、依頼を受けるには条件があり、馬車持ち限定となっていた。

 そして依頼の内容だが、どうやら複数の冒険者ギルド支部への届け物らしい。何といっても冒険者ギルドは、大陸中にネットワークを持っている。それこそ国の枠すらも超えたネットワークであり、冒険者ギルドはそのネットワークを利用して郵便事業や運送事業の代わりも行っているのだ。

 つまりこの依頼は、届け物を運ぶ人員を募集しているということになる。しかも、ランクフリーという割には、報酬も悪くはないように感じる。だがこうして残っているということは、何か問題となる要素があるのだろうと思われた。


「うん。この馬車持ち限定というのが、ネックなのよ。ランクが低い冒険者は馬車を持っていないし、逆に馬車を持てるほどに儲けている冒険者なら、この依頼を受けずにより高額な報酬が得られる他の依頼を受けるから」

「つまり、中途半端なのか。だけどセレン、俺たちなら問題ないだろう?」

「え? あ、そうか。馬車があったね」


 元々人数がいるので、初めから幌馬車を一台用立てている。その幌馬車を使用すれば、依頼を受ける条件はクリアできるのだ。別に冒険者として積極的にランクを上げてメジャーになりたいわけでもない俺たちとしては、うってつけの依頼といえた。

 しかもこの依頼、向かう先が取りあえずの目的地となるオデンと同じ方向なので、その意味でも都合がいい。これだけ条件が揃っていて、依頼を受けない理由はない。それでも一応はみんなに聞いたが、反対は出なかった。

 全員からの賛同も得られたので、この依頼を受けることにする。手続きを行う為にカウンターへ依頼書を持っていったが、そこで何と冒険者ギルド側から待ったが掛かった。一応、冒険者ギルドとしては、馬車の有無を確認したいらしい。わざわざ条件を付けたぐらいだから、その気持ちも分からないでもない。面倒ではあるが、馬車を持ってくることにした。

 だが、持って来るのは明日でいいそうである。それまでは、仮に依頼を受けたという扱いにしておくとのことだった。

 その後、冒険者ギルドを出ると、エイムの町に到着してすぐに確保した宿へと向かう。だが、その途中であまりよろしくない気配に気付く。その数は四つであり、しかも覚えがある気配であった。


「シーグヴァルド様、尾行されています」

「分かっている。冒険者ギルドで絡んできた、あの四人組だな。さて、どうしたものか」

「どうしたの?」


 俺とビルギッタの様子に不審さを感じたのか、シュネが尋ねてくる。黙っていても仕方がないので、素直に話しておく。どうせ巻き込まれるのだから、情報は共有しておいた方がいいのだ。

 またシュネだけでなく、他のメンバーにも話をする。その為に立ち止まったのだが、こちらにつられる形で尾行している四人もまた立ち止まる。それから間もなく、四人は歩き始めるとこちらへ近づいてきた。


「まだ何か用か? センパイ」

「ふん。あそこまで虚仮こけにされた上に、支部とはいえギルドマスターに睨まれた。落とし前を付けないわけにはいかないんだよ! ガキども!!」

「セレン。あのおっさん、ギルドマスターだったのか」

「うん。報告の内容も、ちょっとアレだったから」


 何と言っても、悪魔関連の話である。この辺りも、報告したセレンが冒険者ギルドへ疑われた理由かも知れない。


「聞けよ! 無視すんな!」


 その気はなかったが、結果的に無視した形となったことを不快と感じたようで、名も知らない自称センパイがキレている。これぐらいでキレるなんて、カルシウムが足りていないのだろう。

 小魚とかを食することを推奨するぞ、俺は。


「無視したつもりはない。だけど、もう少しカルシウムをとった方がいいぞ。健康の為にも」

「あ? カルシ……ウム? 何、わけのわからんことを言っている。本気で、舐めてんのか!」


 すると、さっきまでいた冒険者ギルドの時と同じく、大柄の男が近づいてくる。一つ違うところは、その男が手を伸ばしてくるのではなく初めから殴り掛かってきたことだった。とはいえその攻撃は遅く、脅威にすら感じない。俺はその男の腕を掴むと、一本背負いの要領で地面へ投げてみせた。

 すると背中からしたたかに地面へ打ち付けられた男は、痛みからうめいている。そんな男の鳩尾に拳を落として、すぐに気絶させた。その様子に、残った三人は驚いた表情を浮かべている。どうやら、こんなにあっさりと気絶させられるとは、思っていなかったらしい。そんな彼らへ俺は、その気絶した男を連れてどこかへ失せろと告げてやった。


『……ふざけんな!』


 すると同じ言葉を吐きながら、一斉に躍り掛ってくる。すると、ビルギッタとエイニとアリナが静かに前に出た。見た目は均整の取れた体つきをしている彼女たちだが、ガイノイドであり戦闘もできる。その彼女たちの相手としては、三人はいささか……いや、かなり役不足であった。

 全員が攻撃を避けられた上に、カウンターの攻撃で逆に倒されている。しかも全員、その一撃で気絶させられていたのだ。


「シーグ。全員を気絶させたのはいいけれど、これからどうするの?」

「こいつらは放っておいて、問題ないだろう。どうせ明日には、町を離れる。それでも因縁いんねんを付けてくるようなら、次は容赦しない」


 その直後、気絶している四人目掛けて濃密な殺気をぶつけてやる。意識がなかろうが、これだけの殺気をぶつければ反応するだろうと考えたのだ。すると意識のない状態でも呻きき声を上げながら表情を歪めているので、多少は腕に覚えがあったと思われる。だが、相手の力量を読めるほどの実力はなかったらしい。

 どのみち、このままいると町を巡回している兵に見つかりかねない。さっさと消えてしまうのが、得策だと思う。ゆえにシュネたちへ合図をしてこの場から立ち去ると、今度こそ宿屋へと向かった。

 明けて翌日、宿をチェックアウトしてから冒険者ギルドへ向かうと、そこで昨日の依頼を正式な形で受ける。そのあとで、届け物を幌馬車に積み込んで貰った。その積み込みが終了するまであいだ、冒険者ギルドで情報を集めてみたが、これといった情報はない。強いて上げるとするならば、勇者一行がアシャン神皇国を出たぐらいだろう。だが、彼らがどこへ向かったかまでは、分からなかった。

 その情報を得た頃には荷物の積み込みが終わっていたので、そのままエイムの町を出発したのであった。


どうやら、プライドは高かったようです。

結果は、恥の上塗りですが。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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