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第三話~到着~

というわけで、第三話更新です。(どういうわけだろう)


第三話~到着~



 数年前、このフィルリーアへ現れた時のことをつらつらと思い出しながら、何と寝落ちをしてしまったらしい。ちょっと懐かしいなと思いながらも、目を覚ましたのであった。





 朝日の光と、そして辺りに漂う匂いに目が覚める。するとアリナとビルギッタが、朝食の用意をしていた。その朝食メニューだが、パンと焼けたベーコン、そしてゆで卵となっている。なおパンは、日持ちを考えて焼きしめられた硬いパンなどではない。酵母を使って作られた、いわゆる食パンだった。

 普通であれば、食パンや卵などといった食材は旅で使うようなものではない。なにより、フィルリーアではパンを作るときに酵母など使用しないので食パンなどないのである。だがそこは、地球での知識を持つ俺やシュネであれば問題なかった。


「それにしても、やっぱり便利だよな。時間を無視できるって」


 そういって、腰にある魔石のついたウエストポーチを指した。

 別に、このポーチに調理された食材が入っていたわけではない。だが、このウエストポーチには食材を保管している袋と同様の効果が施されているのだ。その効果とは、時間が停止したバック、そんなものを想像して貰えば分かり易いだろう。シュネから渡された時に理論などについて説明を受けたが、聞いても理解できず頭に幾つもはてなマークを浮かべていたのはよき思い出だった。


「……つまりね、シーグ。このウエストポーチに物を入れておけば、時間は無視していいのよ」

「ふーん。流石、ファンタジー」

「そういわれると、身も蓋もないのだけれど」

「まぁ、よく分からないけど分かった。だけどその大きさじゃ、小物ぐらいしか入らないよな」

「その辺りも、貴方あなたの言うファンタジーということになるのかしら。見た目は小さいけれど、ある程度の大きさの物は入るし、容量自体はあるの。但し、このウエストポーチには、凄く大きなものを入れるのは無理だけど」

「つまり、どういうこと?」

「えっとね。大きさ的には、人が扱える程度のものであれば問題ない。その認識でいいわよ」


 因みにウエストポーチを渡された際に、一緒に登山に使うような大きめのリュックサックも幾つか渡されていた。こちらはウエストポーチなど比較にならない大容量であり、入れようと思えばそれこそ十トントラックぐらいの大きさのものまで入るとシュネは豪語していた。

 しかし、大きさ的にはそれが限界であるらしい。とはいえ、容量的には十トントラック一台程度どころではないともいっていたが。

 実は正直にいうと、リュックサックにどれくらいの容量があるのか俺はまだ把握していない。だが複数持たされているので、必要になったときに考えればいいかと思っていた。最悪、一つに入らなければ分けて入れてしまえばいいだけなのだ。

 因みに、この渡されたリュックサックの一つに食材は入っている。

 それから暫くして朝食も終わり、片付けをする。使用した食器に関しては彼女たちに任せて、俺は寝る時に使った簡易ベッドを幌馬車に畳んでしまっておいた。この幌馬車は大型なもので、アメリカ西部劇に出てくる幌馬車を想像してもらえばいい。その搭載量だが、オリジナルならば大体八トンぐらいになるらしい。だが、この幌馬車はもう少し大きくしているので十トンはいけるのだ。

 その幌馬車に馬を二頭繋ぐと、そのまま乗り込む。やがてアリナとビルギッタが、火の始末などを全て終えて幌馬車に乗り込むと、俺は結界の魔道具を操作して張っていた結界を消した。


「さて、と。じゃ、行くぞ」

『はい』


 御者席に座り、手綱を握って軽く動かすと、ゆっくりと進みだした。そのまま野営した場所から離れて道へと戻ってきたが、あまり人通りはない。エリド王国の辺境ということもあって旅人や地元の人間、そして本当にまれにだが俺たちと同じ行商人が通るぐらいであった。

 そう。

 目的もなく、辺境地域にいるわけではない。このフィルリーアに憑依という形で表れてから数年たつが、そのあいだ何もしなかったわけでもない。憑依であれ何であれ、生きている以上は金を稼ぐ必要がある。その手段として選んだのが、行商だった。

 とはいえ、すぐに行商を始めることはできない。何せ俺やシュネには、フィルリーアにおける常識というものに欠けている。まず、その欠けている常識を習得する必要があった。

 そういった諸々の問題への対応や、研究所自体の把握などといったことをしているうちに時間がたってしまったのというわけである。

 光陰矢の如しとは、よく言ったものであろう。



 話を、戻すとしよう。

 エリド王国の辺境地域に走る道を進んで行くと、やがて分かれ道へと差し掛かった。一方はエリド王国の国境とその途中ある小さな村へ繋がる道であり、もう一方は辺境に存在する幾つかの村の一つへと繋がっている。そこで、迷うことなく国境方面ではなく村へと向かった。

 そもそもこうして辺境にいるのは、先に述べた通り行商での金儲けだが、他にも観光という目的がある。折角、フィルリーアという世界にきたのだから、観光もしたかったのだ。

 そしてもう一つ、別の目的というか夢がある。そんな複数のやりたいことを兼ねて、行商をしているのだ。

 なお、行商をしなくても比較的短時間で金銭を大量に稼ぐ方法がないわけでもない。それは、魔道具を作り売ることだ。何せ研究所では、新品の魔道具を作ることができる。しかも出来上るのは、古代文明期に作られた魔道具と遜色ないレベルの魔道具だ。ゆえに作れば、高く売れるのは間違いない。その点については、ネルトゥースが保証してくれたぐらいなのだから。

 その魔道具を売り払った金で物資などを買えば、結果として元は取れるだろうことも分かる。だが、この方法はこの方法で問題があった。現代のフィルリーアでも再現できるような簡素の作りの魔道具は、それなりの値段ではあっても高額というほど高くは売れない。大量に金を稼ぐ為には、あまり世間へ出回っていない高度な魔道具を作って売ることとなる。だがそんなものを纏めて売ろうものなら、どこで手に入れたのだと追及されるのは間違いない。いや追求だけならまだしも、国や貴族が関わってくる可能性すらあった。

 そんな面倒ごとに関わるなど、ぶっちゃけて言えば御免である。無論、火の粉が降りかかってくれば話は別で、当方に迎撃の用意はある。泣き寝入りなどはしない、売られた喧嘩は買うのだ。

 そしてもう一つ、実はこちらの方がより深刻な問題といえるだろう。それは物資や資材の不足にある。それというのも、研究所に蓄えられていた物資や資源が減っているのだ。それこそ、今日明日にでもなくなるということはないし、量的にいっても当分は持つだろう。しかしそれは、何も生み出さなければという注意書きが付いていた。

 魔科学を含めて古代文明をそのままに伝える研究所などというものを手にしていて、そこには蓄積された技術や資料などがある。それらとシュネの持つ地球での科学技術、そしていまだ実践されていない理論上の考え方などを活用すれば、夢とか荒唐無稽こうとうむけいとかフィクションだとされた様々さまざまを作ることができるのだ。

 そんなある意味でロマン……いや浪漫を追える立場にありながら、何もしないなど無理だ。これは、知的好奇心を刺激されたと自ら言っていたシュネも同様となる。


「色々なものが作れそうね。わくわくするわ! それから、シーグもアイデア出してね」

「それは、何でもいいのか?」

「いいわよ。それこそ妄想とか、フィクションの中のことでもいいわ。できるかできないかは、アイデアを聞いたあとで判断すればいいことだからね」

「なるほど。考えるだけならただ、か」

「だけど、問題もあるわ。何かを作るにしても、材料がなければお話にならないわ。この研究所の在庫分はまだあるのだけれど、何かを作れば当然だけど減っていく。そうなると、分かるわよね」

「物資の調達ってことか……そういえば、補給というか資源の調達ってどうなっている?」

「実は、その問題もあったのよ」


 そう漏らしたシュネの言葉に、違和感を覚える。そこで改めて聞くと、研究所を含めて俺たちが抱えている事情を教えてくれた。

 彼女曰く、この研究所では物資や資源の調達などをしていなかったらしい。実はこれも、古代文明にAIという考え方がなかった弊害であった。ネルトゥースを筆頭とした彼らというか彼女たちは、指示されたことを履行することしかできなかったのである。それゆえ、消費された物資や資源を補給するという行動もまたしなかったのだ。

 この事態は、研究所の持ち主だったシーグヴァルドも想定外だったようである。その上、まさか自身が転生を行っている最中さいちゅうに文明が滅び、しかも世界から魔力が著しく減退してしまった為に、それが原因となって転生の魔術の効果が発揮されずに自身が亡くなってしまうとは思ってもみなかったのだろう。確かにそんなことを予想できるなら、占い師とかにでもなった方がいいと言えた。

 しかもこの物資や資源の減少は、俺とシュネがこの研究所の主となり、さらには研究所をすべて把握したことで抱いた夢……憧れといってもいいかもしれない。兎も角、その夢を困難にしてしまったのだ。

 その夢だが、それは宇宙に出て旅するということだ。かつて古代文明が華やかなりし頃の話となるが、文明の範囲は宇宙にまで及んでいたらしい。その意味では夢を叶えることはすぐにでも可能なのだが、先に言った通り研究所は物資や資源が不足気味という事情を抱えている。

 それでも、大きくはない魔道具や高品質の道具を作るぐらいならば問題とはならない。だが、大型となってしまうような物品を作るとなると話は別で、現状では無理な話だった。

 なお、今はシュネが対応したのでそのような事態にはならない筈である。古代文明崩壊時に減退してしまった魔力も、一万年という時間とともに回復しているということもある。それより何より、シュネがネルトゥースを筆頭に彼女たちへAI、即ち人工知能を搭載させたからである。これは、物資や資源を消費しながら補充はしないという過去と同じ轍を二度と踏まない為の措置なのだ。



 さて話を、物資の補給や資源の調達へ戻すとしよう。

 物資の補給は、行商などで金を稼げば補うことはできる。しかし、資源となるとそう簡単にはいかない。少数ならば、購入などといった方法がある。しかし、纏まった資源となると、鉱山などを探すしかなかった。

 何せ、作ろうと考えているである。半端な量では、とてもではないが足りないのだ。

 だが、自身が中枢に関わっていない国で鉱山探しなどをすれば、いかなる理由があったとしても、その国が兵力付きで出てくることになるのは必至だった。そこで、俺とシュネは各国の領外にある鉱山などを探すことにしたのである。既に幾つかの候補地はピックアップしてあるので、あとは実際にその現地調査をすればいい。そのカモフラージュの為にも、行商をしているのだ。

 何せ行商を営む行商人は、人がいて儲けが出るならばそこに向かう。だから行商人が不便そうな辺境にいようが国境近くにいようが、また国の中央付近にいようがあまり不審がられない。つまり行商という職業は、隠れ蓑として色々な意味で都合がいいのだ。

 因みにシュネだが、今回は同行していない。普通ならば同行するのだが、今回はある理由があって同行を見送っていた。

 何はともあれ、俺は行商の為に村へ向かっているわけである。やがて昼頃に差し掛かった当たりで、ようやく目的地となる村の前まで到着することができた。

 辺境にある村としては、平均的と言えるだろう。入り口には木で作られた門があり、村自体も柵によって区切られている。その柵のすぐ近くには畑があり、村人が畑の世話をしている様子が見えた。

 そして門の脇には、皮鎧を着て槍を手にした門番が一人だけで番をしている。俺はその門番に近づいて、村に入る手続きを行った。基本的に、俺たちが町や村に入るのは問題にならない。別にこちらは犯罪者などではないので、とがめられることなどないからだ。

 そのまま門番に近づいた俺は、彼へ金を払う。これは別に、袖の下などではない。ならば何のかというと、一種の保障金みたいなものである。こちらは犯罪者ではないという証明をしていると、考えてみればいいだろう。日本出身者としては、町や村に入るたびに金が取られるというのは納得しづらいものがある。だが、郷に入っては郷に従えということわざもある。下手な行動をして公権力から睨まれても面倒なので、このフィルリーアのやり方に逆らわず金を払っていた。

 ただ、村を出る際に一部徴収されるが渡した金は戻ってくるので、それほど気にしてもいない。しかし、例外的に多く徴収されるところはある。それは、主に国境を越える場合だった。各国への出入国の場合、それがどの国であっても金額が高めになる傾向がある。これは国防などが関わっている為とされているので、どうしようもない側面があった。

 それはそれとして、手続きを終えて村に入ると、俺たちは村長のところへ向かう。これは、村の中で行商を行う許可をもらう為であった。幾ら入り口で行商人であるという手続したとはいえ、それはあくまで村に入る上で自身を証明したに過ぎない。村の中で商売を行うには、やはり別の許可が必要なのだ。

 これが町ほどになれば、わざわざ町長のところへなど行きはしない。大抵の町ならばいちがあるし、そこで許可を取ればいいだけだからだ。

 その後、町に入る際に門番から聞いておいた道を辿って、村長の家へと到着する。玄関で扉をノックして、家の中へ声を掛ける。すると間もなく、玄関の扉が開いていく。するとそこには、四十代中頃から後半ぐらいの年齢だと思われる人物が立っていたのであった。


地味に連日更新です

内容は……殆ど説明回かなぁ。


ご一読いただき、ありがとうございました。


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