第二十六話~爆破~
ま、間に合った。
第二十六話~爆破~
砦跡地の探索中に、使われていないにも関わらず、奇麗に清掃されている牢獄を見付ける。妙な感じがしたのでシュネに連絡をすると、彼女は砦跡地へ再度現れたのであった。
通信の終了後、エイニと共に転送してきたシュネはというと、何かの機器を持ってきている。その機器だが、地中探査機であった。前に鉱山で採掘した時にも使用したが、その時の様子が違う。よく見れば、何と四隅にプロペラが取り付けられていて、まるでドローンのようであった。
「……そうか!! ドローンを作った時、確か漏らしていたよな」
「あら。覚えていたのね。地中探査機も空を飛べた方が色々便利かなと呟いたことを」
「偶々だけどな」
その後、シュネは床に鎮座しているドローンにそっと手を添えた。見た目は、小型化した地中探査機の上部にドローンをくっつけたと考えれば分かり易いだろう。
実際、その通りなので他にいいようもないのだが。
間もなくシュネは、手早く操作して地中探査機を起動する。ドローンのプロペラが回り、地中探査機が床から少し浮いた状態で探査を始めた。探査して得られたデータは、シュネと俺の腕輪に転送されると、空間投影される。初めのうちは何も映し出さなかったのだが、やがて映像が変わっていく。その映像は、如実に地下空間の存在を示していた。
「まさか、まだ下があるのか」
「やっぱり……」
「シュネ。やっぱりと言うことは、これの映像に心当たりがあるのか?」
「うん。できれば、なかった方がよかったわ。それより、下への入り口がある筈だから探すわ」
発見された地下空間の周りを、少しずつ地中探査機を移動させながら探索していく。やがて映像には、階段と思えるような映像が映し出されていた。するとシュネは、その場所を重点的に探査していき、ほどなくして階段がこの牢獄の床へ繋がる場所を特定する。その場所とは、牢獄の片隅であった。
「ここね」
「これから、スイッチとかを探すのか?」
「うーん。壊していいと思うわ」
「了解」
シュネの言葉を受けて、短杖を構える。それから魔刃を展開させると、階段へ続くと思われる床を一閃する。魔刃は流石の切れ味を見せて、奇麗に床を切り裂いて見せた。
すると切断された床が下へ落ち、ぽっかりと口を開ける。そこには、間違いなく地下へと向かう階段が見えた。ここまでやれば、あとは力技でいい。隙間ができた床の部分に両手を入れて、強引に地下三階への入り口をこじ開ける。間もなく完全に入り口が開くと、そこを抜けて階段を降りていく。すると階段を降り始めて間もなく、明かりが灯った。
どうやら人が階段へと入ると、明かりがつくような仕掛けとなっているようだ。要はセンサーのような物があるということになるが、古代文明期は兎も角、現代のフィルリーアでそんな道具が作れるとは思えない。だが、まれに同様のシステムが生きている遺跡があるので、絶対にないとは言い切れないのも事実であった。
何とはなしにシュネを見たが、とても難しい顔をしている。その様子に問い掛けるのが憚られたので、結局のところ何も聞かずに視線を階段の先へと戻していた。
その後、一言もしゃべらずに、黙って階段を降りていく。その距離は思いのほか長く、地下一階分どころか、地下二階分を降りた時よりも長い時間を掛かっているように感じる。それでも黙々と階段を降りていくと、やがて踊り場に辿り着いた。
そして踊り場の先は、通路になっている。その通路の先には、金属製と思われる扉があるのが見て取れる。その扉によって遮られているので、その先については分からなかった。それから慎重に通路を進んで、その扉の前に立つ。見た感じ、鉄扉のようである。
「よろしくね」
「ああ」
とはいうものの、ツインマジックブレードを振り回すには少しばかり狭い。もっとも、あの切れ味ならば壁すらも切り裂きそうだがそこまでする必要もないだろう。ゆえに俺は、拳で殴りつけた。
その直後、表面に拳の跡を付けた状態の扉がゆっくりと倒れていく。扉が開いたその先は、空間となっている。だが、明かりが近くまでしか届かないので様子が知れない。その時、ビルギッタとエイニがライトを取り出して中を照らし出した。
すると案の定、空間となっている。しかもその空間は、かなり広い。その時、シュネが自身でライトを取り出すと扉の中に入って行く。それから扉の脇の壁を探ると、やがてカチッという音がする。その直後、扉の中の空間は光によって照らされていた。
そこは、かなり広い部屋となっている。大きさで言えば、ネルトゥースが鎮座する部屋よりもさらに広い部屋だろう。だがその広い部屋には、とても気になるものが置いてあったので、そちらに注意が向いてしまっていた。
その気になるものとは機械的な何かであり、とてもではないが現代のフィルリーアでは作り出すことなどできない代物である。何よりそれは、俺やシュネが憑依した体が一万年の時を過ごしていたという装置に近い雰囲気を持っている。だがよく見ると、俺とシュネが憑依した体を保管・維持してきた装置より、構造的にも機械的にも大分稚拙なような気がした。
「何だ、これ」
「……なければいいと思っていたのだけれど、やっぱり本当にあったのね。ということは、ここは重要な拠点だったということなのかしら?」
「シュネ。いい加減、話せよ」
「ご免。まだ話せない、というか今は話したくない。もう少し待って、お願い。気持ちの整理がついたら、必ず話すから」
そういったシュネの顔は、いっそ苦痛に歪んでいると言っていいだろう。それは、気持ちを押し殺す為に浮かべているような表情であった。
「……分かった。それと、この場所とあの機械も含めてだが、爆破していいのか?」
「いいわ。こんな装置、あってはいけない物だもの。それと、ご免ね」
「もう、いいよ」
その後、先にシュネが研究所へと転送する。それから間もなく、追加の分とばかりにかなりの数のマジックボムが送られてきた。よほど腹に据えかねているのか、それとも確実に消しておきたいとでも考えているのか知れないなどと思いつつ、新しく見つかった装置の周りを中心にマジックボムを仕掛けていく。勿論、この広い部屋にも、そして部屋へと繋がる通路や階段にも仕掛けていった。
やがて、全てのマジックボムを仕掛け終えると、地上へ出る。それから、自動迎撃システムを立ち上げた状態にしていた二台のバイクへ近づいて、そのシステムを解除した。
「……これでよし。聞こえるか、ネルトゥース」
≪何でしょうか、シーグヴァルド様≫
「マジックエアバイクと地下から運び出した遺体だが、研究所へ転送させてくれ」
≪承知しました≫
間もなく、マジックエアバイクと地下より運び出した遺体の全てが転送の光に包まれる。やがて光が消えると、ネルトゥースへ伝えた全てが転送を終えていた。最後に、転送の取りこぼしがないことを確認してから、転送をさせなかったバイクのうしろにビルギッタを乗せると、砦跡地から離れた。
その後、ネルトゥースから教えられた爆破の影響範囲から、さらに遠く離れた場所までバイクを走らせる。万が一を考えて、距離を余計に取っておく為である。ネルトゥースを信用していないわけではないが、爆発時に何が起きるか分からないからだった。
実際問題として、俺やシュネはその体現者といっていいだろう。そうでなければ全く見ず知らずの体に憑依して、しかもフィルリーアにいるなんてことは起きる筈などないのだから。
「ぽちっとな」
お約束ともいえる一言を呟いてから、マジックボムに魔力を送る。間もなく、魔力によって一斉に点火がされると、爆破が完了した。とはいえ爆破した場所の大半が地下なので、それほど爆破によって生まれる衝撃や爆発の煙が地上まで出てきていない。だがそれでも地面は盛り上がり煙も出ているので、爆発が成功したのは間違いないだろう。
それから、確認の意味合いもあって、慎重に砦跡地へ近づく。だが下手に近づきすぎると、爆発が原因の落とし穴擬きに落ちてしまう可能性がある。その点を考慮して、ある程度しか砦跡に近づかないようにした。
砦跡地に近づいてから辺りを眺めるが、見える範囲では上手く地下の施設を破壊できているようにも思える。ちょうどその時、シュネより通信が入った。
≪シーグ、こちらでも確認したわ≫
「それで、上手くいったのか?」
≪問題ないと思うわ。だから戻ってきて≫
「分かった」
その後、シュネの言葉通り、転送して研究所へ戻った。
なお、地下牢で見つかった怪我だらけの女性に関しては、イルタがどうにかするだろう。何より、この研究所の防衛や運用を一手に司っているネルトゥースの監視下にある。余程のことが起きたとしても対応できるので、そもそもからして心配することなどないのだ。
転送を終えて研究所へ到着すると、デュエルテクターを解除する。それから、ネルトゥースにシュネの居所を尋ねた。
さて、彼女を探す理由だが、砦跡地で見つけた用途不明の装置について確認する為となる。するとネルトゥースは、砦跡地で手に入れた資料を調べているという。それならば邪魔をしない方がいいかと考え、シュネに尋ねるのは一旦、棚上げすることにした。
「あ! そうだ、ネルトゥース。賊というか悪魔に襲われた時に野営していたところへ転送したいが、できるか?」
≪勿論、可能です。但し、ガイドビーコンは埋設されておりませんので、あちらの様子は分かりません≫
「そう……だったな。参ったね、これは」
≪そこでシーグヴァルド様。ご提案があります。小型ドローンを、先に派遣しましょう。そうすれば、転送先の様子も分かります≫
ネルトゥースからの提案に、思わず両手を打っていた。
そもそもガイドビーコンには、転送の補助という目的がある。しかしこの補助だが、実は必ずしも必要ではないのだ。ネルトゥースが座標を把握すれば、ガイドビーコンなどがなくても転送が行える。それであるにも関わらず、わざわざガイドビーコンを埋設している最大の理由は、転送地点周囲の状況確認と把握だった。
もっとも、転送座標の把握がなかったとしても、いわゆる石の中にいる! などといったことは起きない。単純に、転送されないだけなのだ。
「おお、なるほど! その手があったな。では、心配する必要はないな。転送する時は、頼むぞ」
≪承知しました≫
これであとは、明日にでも転送して最初の目的地だった村へ行けばいい。基本的に、馬車の旅での予定など、あってないような物である。それゆえ、行商人の到着が一日や二日くらいずれ込んでいだとしても、それぐらいの理由で怪しまれることなどないのだ。
「さて、あとは夕食まで時間でも潰すとしよう」
独り言のように呟くと、ベッドへと倒れ込んだのであった。
連日更新中です。
爆破は……浪漫だ!
というわけで、悪魔の拠点の一つが地上よりロストしました。
ご一読いただき、ありがとうございました。




