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第二十四話~対決~


第二十四話~対決~



 襲ってきた賊がアジトとしている砦跡地を小型ドローンで偵察してみたところ、そこには地下に存在していた。しかも中には悪魔が、うごめいていたのであった。





 小型ドローンの映像が切れるまで映し出されていた内部構造を元に、簡易的な地図をネルトゥースが作成してこちらへ送ってくれている。その地図を足掛かりにして、地下を進んで行った。

 やはり地下ということもあるのだろう、通路にはところどころ明かりがあるが、外のように明るいとはいえない。だがデュエルテクターのマスク越しとはいえ、片目を覆うようにつけている魔力と光子を検知する機能と可視光増幅機能を持つ暗視装置があるので薄暗いといって困ることはなかった。


「これ、すごいな」

「え? ああ、そうでしょう」


 仮面の上から、シュネの開発した暗視装置をつけている部分を指で叩く。すると彼女は、初め何を指しているのか分からなかったようだが、すぐに言いたいことが分かったようで胸を張っている。幾ら金属で覆われているとはいえ、不相応な大きさを持つ二つの双丘に思わず目がいってしまった。

 しかしその時、何かの存在を検知する。同時に俺は、人とは違う気配を感覚として認識していた。幸い、近くに何も気配を感じない空き部屋があったので、そこでやり過ごすことにする。全員で部屋に飛び込み扉を閉めて間もなく、少し慌ただし気に部屋の外の通路を通り過ぎていく気配が扉越しに感じられた。


「行った……」

「そうなの?」

「ああ。だけど渡された暗視装置って、魔力検知ができるよな。それで、分かるんじゃないのか?」

「魔力の有無や強さは感知できるけど、動きまではね」


 どうやら、細かい動きまで把握するのは難しいらしい。そういえば、さっき検知したのも対象が範囲内に入り込んだからであって、その動きを追った様子はなかった。

 俺は気配で察知できるから問題はないが、そもそも格闘家でもないシュネにそんな芸当ができる筈もなかったか。


「これは、ディテクトスコープの欠陥けっかんかしらね。やっぱり、実際に使用してみないと分からないことは多いわ」

「これって、ディテクトスコープっていうのか」 

「言ってなかったかしら。それなら、ごめんね。それはそうと、この部屋は何かしら」


 改めて周りを見たが、光が全くないので見通しが効かない。そこで仕方なく、ライトで辺りを照らした。その途端、視界に割と大きなものが入ってきたので思わず目を見開く。しかしよく見ると、それは棚のようだった。

 その後、ライトを動かして周囲を順に照らしていくと、その棚が整然と設置してあるのが分かる。しかも棚は空ではなく、何かが入っている。近づいてよく見ると、本かファイルのようにも見えた。


「何かしらね」


 部屋の明かりつけるスイッチを探り出して明かりをつけたあと、シュネも俺の隣に立って棚から本のような物を引っ張り出すと中身を確認している。その向こうでは、エイニも同様に確認していた。そして俺はというと、実は全く手にしていない。こういった調べ物が得意ではないということ、何となく雰囲気的に専門的な何かような気がしたので手を出さなかったのだ。


「ビルギッタも手伝ってやれ。警戒は、俺がやる」

「承知しました」


 一人、出入り口の扉に対して警戒をしていたビルギッタへ、シュネとエイニの手伝いをするように伝える。その言葉に彼女は素直に従い、二人の手伝いを始めた。そのシュネだが、初めは適当に内容を確かめるといった感で見ていたのだが、やがて彼女の雰囲気が変わってくる。ついには真剣な表情で、それこそ食い入るように見始めたのだ。


「これって……まさか!」

「どうした、シュネ」

「エイニ、ビルギッタ。内容なんてどうでいいから、棚の資料を全て回収して」

『分かりました』


 驚きの声を上げたシュネに問い掛けたのだが、完全に無視される。それどころか彼女は、エイニとビルギッタへ棚の中にある物を回収するようにとの指示を出している。無視されたことに、若干気分を悪くしたが、そのあとのシュネの様子にこれはただごとではないということだけは察することができた。

 ここは声を掛けるより、あとで問い質した方がいいだろうと考えて、邪魔をせずに唯一の出入り口となる扉への警戒を続けることにした。それから少ししたあと、ディテクトスコープに反応が出る。同時に壁の向こう側、即ち通路に何かの気配を感じていた。

 俺の持つディテクトスコープに反応があったということは、シュネたちも同様に確認したということになる。ちらりと視線を向けると、彼女たちも本棚からの回収を一旦止めて、唯一の出入り口となる扉を警戒していた。

 部屋に入ってくるとすればここしかないので、俺のように気配を探ることができなかったとしても、そのような行動に出るのは不思議でも何でもない。とはいえ、これなら警戒もいらないかなどと思いつつ、扉の脇の壁を背にして部屋の外を伺う。幸いなことに、その感知した何かが、扉を開けて入ってくることはなかった。

 通路を移動する気配は、そのまま消えていく。そのことに安心すると、シュネたちはすぐに作業を再開していた。

 やがて棚の中に入っていた目ぼしい物の物色……いや、回収は終わったらしい。それからは、棚に収められていない物の回収までも行っていた。どうやら、この部屋から根こそぎ持ち出すようである。やがてその回収作業も終盤を迎え、彼女たちが調べていない場所の方が少なくなったと思えた頃、何やら外の様子が慌ただしくなり始めた。


「おい! そろそろ切り上げろ、何か様子がおかしい」

「あれ? 幾つか反応が……」

「理由は分からん。だが、妙だ」


 シュネも反応が多くなったことに気付けたようだが、頼みのディテクトスコープは検知するだけである。俺のように、動きや気配までは感知できない。つまり、反応を示した相手の様子までは分からないのだ。


「あ、うん。そう、なのね」

「ああ。そうだ! シュネ。いっそのこと、ここから研究所まで転送できないか?」

「ちょっと待って……ネルトゥースに確認するわ」


 そういうと、シュネは研究所へ通信をこころみる。まもなく、ネルトゥースからの返信が届いた。この地下へ入る前に小型ドローンのコントロールができなくなったので、もしかしたら通信ができないかも知れないと考えたが、問題はなかったようだ。


≪何でしょうか、シュネ―リア様≫

「転送、いける?」

≪……問題ありません。すぐに転送を開始いしますか?≫

「シュネ! その回収した資料とやらを持って転送しろ。俺は残って、ここを潰す」

「分かったわ。だけど、潰す前に徹底的に捜索をして。もしかしたら、とんでもないものが出てくる可能性があるから」

「とんでもないもの?」

「いいから! 兎に角、徹底的にお願い。いいわね!!」


 次の瞬間、部屋の中に転送の光が溢れる。やがて光が消えると、シュネとエイニとビルギッタの気配は消えていた。しかし、すぐに転送の光が現れる。その光が消えると、ビルギッタがそこにたたずんでいた。


「やっぱり、か」

「愚問です。私は、シーグヴァルド様つきですので」

「まあいい。付き合ってもらうぞ」

「はい」


 その後、暫く部屋の中から、外の様子を伺う。すると、外の通路を移動する気配を一つだけ感じた。その気配が、ちょうど扉の前にくる頃を見計らって思いっきり扉を開ける。予想外だったのだろう、悪魔の姿をしている相手は驚きの表情を浮かべていた。

 だが、こちらは既に潰す気である。文句があるなら、喧嘩を売ってきたことを恨むがいい。

 俺は問答無用で悪魔の腕を掴むと、部屋に引っ張りこむ。するとビルギッタが、手にしたフライパンで悪魔の顔面をしたたかに打ちすえる。その攻撃に思わずといった感じで顔を押さえる悪魔に近づくと、魔刃まじんで一刀両断にした。

 物体を切るという抵抗感すらなく、悪魔を二つに断ち切る。うめき声を漏らすいとますらなく、悪魔は倒れ伏した。魔刃によって唐竹に割られた悪魔を一瞥したあとで、その場を離れる。どうせ、間もなく消滅するので死体の処理などは気にする必要がないのだ。

 そのあとは、できるだけ隠れながら遭遇した悪魔を容赦なく討っていく。俺とビルギッタの二人で、それから計三人ほど倒した頃、さらに騒ぎが大きくなる。それに伴い、この砦跡の地下に慌ただしさだけでなく、殺気や剣呑さも漂うになってきた。

 ここからは気を引き締めるかと考えつつ、拠点内の捜索を続けていく。それから、さらに二人ほど奇襲して倒す。次の相手はと移動をし始めた矢先、ビルギッタが小さく声をあげた。


「どうした」

「結界とよく似た何かが、展開されています」

「結界に似た何か?」

いて例を挙げるとすれば、アザックと戦った時とほぼ同じです」


 彼女の言葉に、見当がついた。

 そして、もしビルギッタの言った通りとなると、相手にこちらの行動が判明している可能性がある。そのような事態であり得るとすれば、どこかで待ち構えているか待ち伏せをしているだろう。


「どんな感じで広がっている?」

「流石に、そこまでは分かりません」

「仕方がない。強硬手段に出る」

「了解しました」


 といっても、無差別攻撃に出るなんてことはしない。堂々と、拠点内を探っていくだけだ。あからさまに動けば相手の反応で動きが見えるだろうと考えてのことだったが、途中で一体の悪魔をほふっただけだった。

 いささか肩透かしを食らった感じの俺とビルギッタだが、やがてある扉の前に到着する。目の前にある扉は、他の部屋と違い左右に押し広げる形である。扉の表面には、華美とはいかないまでもそれなりの装飾が施されており、しかも扉の向こう側からは気配を複数感じる。これで、この場所が何でもないとは思えない。十中八九じゅっちゅうはっく、扉の向こうで待ち構えているだろうことが想像できた。

 

「中で、待ち構えているな」

「分かっています。シーグヴァルド様のように気配を探るなどといったことはできませんが、魔力検知はできますので」

「そうだったな。では、いくぞ」

「はい」


 扉を蹴り飛ばして中に入ると同時に、間髪入れず短魔機関銃なり魔術を撃つなりするのも一興だが、ここはあえて様式美にこだわってみる。扉に手をかざして力を籠めると、両扉は簡単に開いていく。軋む音が一つもしないところを見ると、どうやら手入れはいいらしい。まもなく開いた扉から中に入ると、そこは大きめの部屋であった。

 そして部屋の奥に一人いて、少し豪華な椅子に座っている。その椅子の両脇には三人が立っており、それぞれが警戒の視線を向けてくる。当然のように、四人とも悪魔であった。


「どうやら、お待たせしたみたいだな」


 からかうかのように一言を告げてやると、立っている悪魔の一人が苛立たしげに声を張り上げた。


「ふざけるな! 貴様ら、何者だ!!」

「答えてやるいわれはないが、強いていうなら敵だろうな」

「そんなことを聞いているのではない!」

「ふん。知りたければ、力ずくで聞いてみろ! 悪魔ども!!」

「いい度胸だ! 望み通りにしてやる」


 次の瞬間、椅子の両脇にいる三人が一斉に攻撃してくる。二人が火球を、残りの一人が氷の槍を飛ばしてきた。すると、ビルギッタが一歩前に出る。そして、右手と左手に持っていた短魔機関銃をフルオートで放った。

 次々に放たれる魔力でコートされた銃弾とぶつかり合い、二つの火球が弾ける。それでも氷の槍は近づいてきたが、放たれた弾丸が多いせいでので削り取られていく。そしてその氷の槍を、俺は腕で払うことで霧散させた。


「な、何だと!?」

「ば、ばかな……」


 まさか火球や氷の槍が無効化されるとは思っていなかったのか、明らかに動揺している。そんな隙を見逃すほど、愚かでもない。一気に接近すると、三体のうち二体の顔を右手と左手で掴む。そのまま、後頭部から床へ叩きつけた。

 一体はグシャという音とともに動かなくなるが、もう一体は受け身をとったらしく致命傷とはなっていない。だが、背中をまともに床へと叩きつけらたからか痛みに仰け反っている。その直後、悪魔の頭を踏み抜いて止めをさした。

 すると時を同じくして、椅子に座っていた悪魔が立ち上がると一足飛びに踏み込んでくる。以外にもその悪魔は剣を持っており、その剣で切り付けてきたのだ。しかし悪魔の踏み込む速度は早かったが、反応できない速度でもない。打ち下ろされた剣を引き抜いた短杖で受け止めると、足の形に少し床がへこむ。どうやら悪魔が得物を打ち下ろした威力で、陥没したらしい。しかし短杖は欠けることなどなく、受け止めていた。

 何せ短杖は、アダマンタインと比べれば若干落ちるが、それでも比肩しうる硬度を持つアダマンティンによって作られている。そしてオリジナルとなるアダマンタインの堅牢さは、神の金属ともいわれるオリハルコンと同等か僅かに劣る程度であるとされているのだ。


「ほう。反応したことにも驚いたが、この剣を受け止めるとは思わなかった」

「そうか」

「だが、いつまで持つかな?」


 そういうと目の前の悪魔は、乱撃のように剣を切り付けてくるが、その攻撃を時には避け、時には短杖で受け止めるなどして躱していく。最初は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)といった様子の悪魔だったが、徐々にその表情に焦りのようなものが浮かんでくる。

 どうやら、今の事態は完全に想定外であるたようだ。


「くっ、この! 当たれ!!」

「断る」

「いいから、いい加減に死んでしまえ!」

「……ふっざけんな!!」


 あまりの物言いに、怒りが込み上げてくる。悪魔にいかなる事情があるのか知らないし、知ろうとも思わない。だが、そちらの掲げるわけの分からない何かに、こちらが従う必要などないのだ。

 その怒りをぶつけるように、手にしている短杖から魔刃を出して剣に切り付ける。すると流石の切れ味を見せつけた魔刃は、悪魔の持つ剣の半ばから奇麗に両断していた。まさか自身の剣が切られるなどとは想像もしていなかったのだろう、自分の手に残る両断された剣を見て戦慄わなないている。その隙を見逃さず、首を切り飛ばした。

 すると悪魔の頭は、顔に驚愕の表情を浮かべながら床へと転がる。その首に魔刃を突きさし、返す刀で体を両断して完全に息の根を止めておいた。

 なお、ビルギッタと相対していた悪魔も彼女によって倒されている。これにより判明している敵の駆逐は、終わりを迎えたのであった。


連日更新中です。


潜入、そして決着です。

因みにシュネは、何かを見つけたようです。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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