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第二十三話~合流~


第二十三話~合流~



 変形バイクに乗って偵察に出た砦の跡地は、吹きさらしの荒れ地である。これは外れかと考えた矢先、地面の下より一人の男が出てきたのであった。





 何があってもすぐに対応できるようにと、砦跡地の観察を続ける。しかし、周りは荒れ地なので、目標となるものは砦跡地しかない。それ以外は、ただ荒涼とした景色が広がっているだけである。つまりこれといった物もなく、変化に乏しいつまらない景色であった。

 そのような景色の中で、朽ちた建物だけがやはり存在感を表している。周りに何もないだけに、その姿はいっそ異様と言えるだろう。

 ところで、荒れ地であったとはいえ何で朽ちるまで放っておかれているのかというと、エリド王国内の思惑というか駆け引きの結果である。元々砦は、嘗てこの辺りにあった国境を守る為に建てられたものであった。しかしエリド王国は、国境の外に広がるどの国の領地にも編入されていない土地を国内に取り込む為に開拓村を幾つか作る。それにより、国境が開拓村の北へ移動した為、砦がいらなくなったのだ。

 それでもこの辺りが農地に適していれば話は別だったのだが、生憎と農地には適しておらず開墾しても赤字となる。かといって、管理をしないという選択肢もなかった。そこでエリド王国の王家は、王国北部辺境伯となるクロンビー辺境伯かこの辺りを領地としていたエイムズ男爵に、不良債権ともいえそうなこの辺りの土地を押し付けようと画策したのだ。

 こうしてしまえば、エリド王国が管理する必要もない。また、不良債権ともいえる土地であっても、誰かに下賜してしまえば、与えられた者が管理を行う必要がある。それで上手く発展できればよしであるし、発展させることができなければそれを理由に罰を与えるなど色々いろいろな手を打つこともできる。最終的には貴族家の取り潰しだって視野に入れられるという、王家とってどのような結果であっても損は出ないという結果となるのだ。

 ひるがえって、押し付けられる側となるクロンビー辺境伯やエイムズ男爵側からしてみれば冗談ではない。確かに領地は増えるが、その土地に使い道がない。それでも地下資源でもあれば違ってくるが、残念ながらこの辺りには地下資源などないことが判明していた。

 大きな領地を持つこと自体は、領主などの土地持ち貴族にとって一種のステータスではある。だが、使い道が乏しい土地を貰っても荷物となるだけでしかない。はっきりいえば、そんな土地などいらないのだ。

 こうしてお互いの利害が真っ向からぶつかることとなり、結果としてこの辺りの土地が王国直轄となるのかそれともクロンビー辺境伯やエイムズ男爵に帰属するのかで揉めることとなった。

 そしていまだに決着はついておらず、どっちつかずの土地としていわば宙に浮いた状態となっている。当然ながら土地の帰属がはっきりとしない以上、誰かが手を出すこともない。荒れ地は荒れ地のまま放置され、今に至っていたのだ。


「暇潰しがてら、シュネからこの一帯が放っておかれた理由をデータで送ってもらったけど、何と言っていいのやら」

「致し方ありません。古代王国期ならばまだ何とかできたかも知れませんが、現代のフィルリーア程度の文明では、このような荒れ地を開墾して黒字へと持っていくのはいささか難しいのでしょう」

「だろうなぁ」


 地球でも大変だろうなどと人ごとのように考えていると、シュネから連絡が入る。これから、偵察用の小型ドローンを転送させるそうだ。少し待って貰うと、改めて嘗て砦のあった場所を確認してみる。しかし、人影はもう見当たらなかった。

 もしかしたら陰に隠れているのかも知れないが、それならばそれで転送を確認されることはないだろう。そう判断して、問題ない旨を伝えた。すると間もなく、アザックの家でも使用した小型ドローンが複数転送されてくる。まだ光学迷彩を展開していないので、小型ドローン自体は確認することができたのだ。

 それから間もなく、転送されてきた小型ドローンたちが一斉に飛び立っていく。間もなく見えなくなったので、光学迷彩が展開されたのだということが確認できた。


「シュネ。もう暫くはここで待ち、ということでいいよな」

≪ええ。それと偵察で得た映像は、そちらにも回すわね≫ 

「分かった」


 それから腕輪を操作して、空間投影を行う。するとそこには、ドローンが得た映像が映し出された。とはいえ切り替えもできるので、必ず一台からの映像しか見られないというわけでもない。だが、操作に関しては、研究所を統括しているネルトゥースに任せているし、ドローンがどこへ向かうかなどといった指示はシュネが出している。映像を見て何か気になることでもあれば伝えるつもりだが、そうでなければこちらから何かできるわけでもなかった。

 なお、ビルギッタは砦跡地の監視に重点を置いている。彼女も映像を確認することはできるが、俺が送られてくるドローンの映像を見ているので、彼女に監視しているといった状態だった。



 さて、映像を見るにドローンは地下への入り口を探している。何せ、悪魔と思われる存在が出入りしていることは視認しているのだ。間違いなく入り口があり、しかもそれなりの大きさがあるだろう。

 勿論、カモフラージュをして入り口を隠しているだろうが、探せないわけでもない。さらに言えば、ドローンは必ずしも入り口から入る必要はないのだ。これから探索する拠点が、規模は別にして地下であるのは間違いない。そうなれば風の通り道、要は通風孔かそれに代わるものがある。そしてよほど小さく作られていない限りは、小型ドローンであれば通れる筈だからだ。


「お、あったみたいだな」

「シーグヴァルド様、何がでしょうか」


 俺の呟いた言葉に、ビルギッタが相も変わらず監視を続けながら訪ねてくる。その言葉に、律儀に返答しておいた。


「侵入口だ。これは、通風孔かな? 一応、入り口も見つかっているが、シュネはどちらから侵入するつもりだろう」


 するとビルギッタは取り敢えず監視を止めると、俺の隣に移動してくると空間投影している映像を見た。なんでわざわざ移動をしたのかというと、あくまで俺が見る為に空間投影しているので、見る方向が違えば変な映像になってしまうからだった。

 そのあいだにも、ドローンが侵入していく。どうやらシュネが選んだのは、通風孔からの侵入らしい。よく考えてみれば、入り口からでは小型ドローンが侵入するには難しい、というかほぼ無理である。ならば、他に入り口があればそちらを選ぶのは当然だった。

 さて通風孔より侵入を果たした小型ドローンだが、明かりをつけていない。仮に明かりを使ってしまうと、潜入が相手に判明してしまう可能性がある。その為、映像は僅かな光でもとらえられる超高感度カメラの物へ代わっていた。

 こうなると若干見づらくなってしまうが、そこはネルトゥースがいればどうとでもなる。そのことを証明するかのように、こちらに送られてくる映像は、画像処理後のものであった。鮮明度という意味では、映像が弱冠落ちるのは仕方がない。しかしそれでも、見ている分には全然問題ではなかった。

 侵入を果たした小型ドローンは、敵の拠点というか根城の内部を探っていく。すると、映像から確認できる人影は思ったより少ない。だが、確認できている姿は全て悪魔であった。悪魔の姿を平然と晒していることに少し驚いたが、よくよく考えてみれば当然といえるだろう。自分たちの勢力範囲だと断言できる場所で、わざわざ姿を変える必要などないからだ。


「……少し慌てているような気もするな」

「それは恐らく、味方と連絡がつかないからではないかと思われます」

「味方……ああ、俺たちが倒した悪魔か」

「はい。私たちが襲撃してきた悪魔たちを倒してから、ある程度は時間がたっています。そのかん、連絡どころか誰一人として帰ってこない。流石に、何かったのではと思うのではないでしょうか」


 ビルギッタから言われてみれば、確かにその通りだ。

 これが逆の立場であったとしても、そう思うだろう。だが、この件で一つ判明したことがある。それは悪魔に俺たちのような、長距離を連絡し合えるような手段は存在しないということだ。少なくとも、元砦を根城としている悪魔たちにはないと思われる。全滅している事態を把握していない様子からも、それは間違いないようであった。

 するとその時、不意に映像が乱れたかと思うと、もなくして映像が消える。思わず首を傾げたが、それと同じくしてシュネから映像付きの通信が入ってくる。空間投影されている画面に映るその表情は、あまりいい物ではなかった。


「どうした」

≪理由は分からないのだけれど、偵察用に放ったドローンをコントロールできないの≫

「え? 何でだよ」

≪だから、理由は分からないわ。そのことを調べる為にも、そちらに行くわ≫

「本気か?」

≪当然、本気よ。それに、私専用のデュエルテクターもシーグが実戦をこなしてくれたお陰で完成しているしね≫

「完成したのか。ところでシュネ、まさかオルとキャスは連れてこないよな」

≪ばーか。連れて行くわけないでしょ。阿呆あほなことをいっていないで気を付けなさい、転送するから≫

「へいへい」


 そういったあとで、シュネは映像通信を切った。それから少ししたのち、彼女はエイニと共に転送してくる。アリナとヘリヤがいないところを見ると、研究所へ戻った際に置いてきたようだ。アリナはオルとキャス付きだし、ヘリヤはそもそもキャスのアフターケアで同行していたのだから、オルとキャスの兄妹が研究所に残った以上はこちらに戻ってくる必要はないわな。

 なお、ビルギッタは一人、砦跡地の監視を続けていた。

 マジ、優秀である。


「お待たせ。では、始めましょうか」

「だな」

転装てんそう!』


 次の瞬間、俺とシュネはデュエルテクターを纏っていた。

 シュネのデュエルテクターが完成した状態なのを始めて見たが、そのシルエットは彼女の体つきとほぼ同じである。材質的には緋緋色金ひひいろかねなので、メタリックな感じも俺のデュエルテクターと変わらない。しかし、その金属的なシルエットが、逆に何とも言えない美しさを醸し出していた。

 場違いなことは分かっていても、思わず凝視ぎょうししてしまう。シュネとは、浅くない関係を結んでいることもあって、なおさらだった。


「正直、妙にあでやかというか……goodだ」

「変なことを言わないで。それよりも、行きましょうか」

「ああ」


 冗談でも変なことでもなく本心なのだけれどとか内心で思いつつ、シュネに返答する。それから馬型としていたバイクを、もう一度バイク形態へと戻してから彼女をうしろに乗せる。そしてもう一台には、ビルギッタとエイニが乗り込んでいた。

 もう少し改造して貰って、二人ではなく数人が乗れるような仕様のバイクも悪くないかなどと考えつつ、バイクを走らせる。通信が切れる前のドローンから得られた映像が示す通りに拠点内がいる悪魔たちが慌てているからか、こちらの接近が気付かれている雰囲気はない。そのまま敵の根城となる嘗て砦があった場所にまで移動すると、そこでバイクを停めた。

 それから、二台のバイクにプログラムされている自動迎撃システムを立ち上げる。これでバイク二台が、各自で判断して動くことができるようになるのだ。このシステムは、AIエーアイほど高度ではない。それでも、それぞれが勝手に自身の武装を使って迎撃するなどといった対処を行うことができるのだ。

 無論、普段使う場合は武装などが表に出ていることはない。武器等に関しては、自動迎撃システムを立ち上げるか、直接指示して武装を表に出すようにしない限り見た目はそれがバイクの形態で当ても馬の形態であっても無武装の状態なのだ。


「ここ、だよな」

「ええ。間違ないわ」


 指し示した場所だが、見た目的には地面と変わらない。だが、確かにここには入り口があることは確定している。それは映像によって確認したことだから、間違いはない。しかし、開閉スイッチのような物は見つからなかったので、侵入の為に壊すつもりだった。

 しかしてその行為は、シュネから止められる。何でと思いつつ理由を問い掛けると、彼女はある物を差し出してくる。それは、90センチ弱ぐらいの長さを持つ棒であった。

 シュネが差し出したその棒、長さ的にいえば短杖や半棒と呼ばれる長さの棒を受け取る。御堂流には杖術もあり、その派生として短杖術もある。そして俺は、そのどちらの杖術も使えるのだ。


「その短杖を使えと? 短杖術も修めているから、使えるけど」

「そうではないわ。いいから、短杖を手にしたら魔力を込めてみて」

「魔力を? 分かった」


 少し訝しげに思いつつも、シュネに言われた通りに短杖へ魔力を込めてみる。その直後、短杖の両端から何かが飛び出した。一瞬、何かと思ったが、よく見ればそれは半透明の青い光を放つ魔力で構成された刃である。その刃は少しだけ反りが入っていて、見た目は二つの日本刀を柄の部分で繋げたような形だった。


「うん。問題なし」

「そうじゃなくてシュネ。これは、何だよ」

「ツインマジックブレードよ。魔力を込めると両端から魔力の刃、いわゆる魔刃まじんが出るわ」

「ツインマジックブレード……魔刃……」

「そう。それからシーグ、さっき込めた魔力の半分……もう少しかな。六割から七割ぐらいに、魔力を調整してみて」


 またしても言われた通り、込める魔力の量を調整する。すると短杖の両端から出でていた魔刃の片方が消えて、もう片方の魔刃が残る。だが、その残った魔刃の長さは先ほどまでより少し長くなっていた。


「魔刃は、片方だけにも出せるわ。そして込める魔力の量で、魔刃の長さを変えられる。長短ちょうたんのどちらでも可能だけど、上限はあるわ」

「……これはいい。気に入った!」


 再度、魔力を込めて短杖の両端から魔刃を出して使い勝手を見る。刃が出ている分、扱いに気を付ける必要はあるが取り回し自体は悪くない。いや、悪いどころかとても面白い。それこそ、何かが刺激されそうだった。

 刺激される何かは、あえて追求しないでくれたまへ。


「それと、短杖自体もアダマンティン製だから、そのまま短杖としても使えるわよ」

「あれ、実用化できたのか」

「まぁね」


 シュネがどや顔をしているが、分からなくもない。

 実はアダマンティンだが、緋緋色金ひひいろかねと同じくシュネが生み出した金属となる。もともとこのフィルリーアには、アダマンタインという名を持つ、非常に硬い金属が存在していた。オリハルコンに比べればまだましだが、それでもミスリルより希少な金属である。その希少な金属であるアダマンタインの構造解析をして、シュネは似た特性を持つ金属を作り上げたのだ。

 アダマンティンは、オリジナルとなるアダマンタインより、僅かに硬度では落ちる。それでも、もの凄く硬い金属であることに間違いはなかった。そのアダマンティンだが、漆黒といっていい色をしている。当然ながら、手渡された短杖も漆黒一色である。その色が青の光を放つ魔刃と、とてもいい対比を生み出していた。

 暫く取り回して馴染ませたあと、魔刃で入り口を切り付けてみる。すると地下への入り口は、刃物でチーズを切ったかのように容易く切り裂くことができた。


「驚いた。とんでもない切れ味だな」

「……私も、これほどとは思わなかったわ」

「ツインマジックブレードか……シュネ、いいものをくれた」

「気に入ってくれて、なによりだわ。さて、入り口もできたし、潜入といきましょう」


 短杖に送り込んでいた魔力の供給を止めて、魔刃を消す。それからツインマジックブレードと合わせて渡された短杖を入れる為のホルダーにしまう。それから魔刃で切り裂いた入り口から、中へ潜入するのであった。


連日更新中です。


シュネと合流しました。

次回は、敵の拠点に入り込みます。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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