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第二百二十四話~邂逅 二~


第二百二十四話~邂逅 二~



 俺の勝利と言う形で、大魔王との戦いの終止符が打たれた。その時、アーレと一緒に避難させていたリューリが近づいてくる。その彼女曰く、通信が入っているのではと言うことであった。





 リューリからの指摘を受けて、俺は通信をしてきた相手であるシエに連絡を入れたわけだが、そのシエからとんでもない情報がもたらされる。何と、俺が不時着したこの惑星の外からの通信が入っていると言うのだ。その内容に、俺は驚きと喜びがない交ぜとなる。それは、惑星外から発せられる通信など、この惑星出身であれば有り得ないからだ。

 これは以前にジョフィから聞いた話なのだが、俺たちがいるこの惑星では宇宙へ出る手段が存在していないらしい。正確に言うと、古代文明の華やかなりし頃にはあったらしいのだが、現在では全て廃棄状態だと言うのだ。まだ、惑星の軌道上には人口衛星が周回しているらしいが、全て経年劣化で使用不可らしい。要するに人工衛星は、全てぶっ壊れているのだ。つまるところ、新たに打ち上げない限りは、同惑星からの通信などあり得ないと言うこととなる。そして現在、この惑星上で新しく人工衛星を製作し、しかも打ち上げることが出来るぐらいの技術力を保有していたのは、ジョフィが管理していたあの施設ぐらいとのことであった。


「そうなると、やっぱり!……ああ、いやいや。待て、落ち着くんだ。必ずしもそうだとは、言い切れないよな。宇宙空間を航行できる技術など、俺やシュネが抱えている専売特許せんばいとっきょと言うわけじゃないんだから」


 実際、フィルリーアから宇宙に出てからこっち、幾つも惑星間航行や恒星間航行を実現させている惑星など幾らでも見てきた。ならば、シエが受信した通信もそのいずれかからのものなのかも知れない。俺が待望する相手からの通信とは、現状では言い切れないのだ。


≪シーグヴァルド様、いかがなされました?≫

「シエ。その入ってきた通信だが、どこから。そして、誰から入ったものだ?」

≪はい。シーグヴァルド様。発信元はラキケマ、発信者はシュネ―リア様となります」

「……おしっ!」


 シエからの通信内容を聞いて、俺は一拍置いたあとでガッツポーズをしながら声を上げる。その直後、体の内側から懐かしさが込み上げてきた。


≪それで、いかがなさいますか?≫

「あ? ああ。当然、繋いでくれ」

≪承知致しました≫


 それから僅かの間、短いが間が空く。その間は一瞬と言っていいぐらいなのだろうが、俺にとっては萬年にも感じられてしまう。しかしながらそれは俺の主観でしかなく、実際には数秒と掛からずに繋がっていたのであった。


≪ね! ねぇ!! シーグ、シーグなの?≫


 それから間もなく、聞こえてきたのはシュネの声。しかもその声だが、酷く慌てているように聞こえる。彼女の様子に懐かしさと同時にいぶかしさを感じつつも俺は、返答していた。


「ああ。久しぶりだな、シュネ」

≪ほ、本当に……本当にシーグ……なのよね……≫

「間違いなく、俺だシュネ」

≪よ、よかったー、よかったよー≫


 直後、通信越しにシュネの涙混じりの声が聞こえてきたのであった。



 その後も、半泣き状態で俺の安否をシュネが尋ねてくる。しかもその内容だが、多少の言葉に違いはあるものの、総じて言うと同じ様なことを繰り返していた。これでは話が先に進まないが、心配させたことぐらいは分かっているので「これはいつまで続くのかなぁ」などと内心で思いながら、半ば諦めの心境でシュネへ同じ返答を何度もしていた。そしてそれは暫く続いたのだが、流石に時間が経てば少しずつ落ち着きを見せ始めるようである。漸く、どうにか話を聞いてもらえるぐらいにまではなっていた。

 因みにシュネが俺意外に気付かなかったのは、結界を張っていたからだ。話がループしてこれは長くなりそうだと思った時点で俺は、半ば傍観者となっていたリューリとアーレに対して結界を張る為の道具を渡している。とは言え、受け取ったリューリは理解できなかった様で首を傾げていた。するとその時、驚いたことに、アーレが爪で中庭の土に文様を描き始めたのだ。


「……アーレ。これはもしかして、文字なの?」


 少しの間、そこに描かれた紋様を見詰めたあと、リューリが自信なさげに言葉を漏らす。するとアーレは、何度も頷いていた。言われてみれば、確かに文字に見えなくもない。ぱっと見には、文字より紋様の方が近いのだが。ともあれ、アーレの仕草を見たリューリは、真剣な眼差しをアーレの描いた紋様……もとい文字へ向ける。少しの間眺めたあと、ついに解読できた様で彼女は俺の渡した結界発生装置を発動させたのだ。そしてこのお陰で、長い時間、愚痴とも心配とも取れるシュネとの会話を続けても見つからなかったのであった。


 話がそれた。


 兎にも角にも、会話が普通にできるぐらいにまでシュネが落ち着いた頃、当のシュネから現状についての話が出始める。そこで諦観の心持から脱した俺は、やっととばかりに説明を始めた。だがそれは、あくまで現状どうなっているかの説明に過ぎない。本当ならば、俺がキュラシエ・ツヴァイと一緒にこの惑星まで移動した時点からの説明の方がいいのだろう。しかしそれだけの時間があるのかと言われれば、俺は首を左右に振る。今は結界で覆ってはいるが、この場所は打ち倒したとは言え敵である大魔王の本拠地である。そんな敵地で、これ以上長々ながながと悠長に時間を掛けたくはないからだ。


≪それならば、どうするの? 何なら、色々いろいろとサポートをした方がいいのかしら≫

「いや、そうだな……その前に一つ確認がある。だから、少し待っていてくれ」

≪分かったわ≫


 こうして漸く、シュネとの会話が途切れる。それから俺は、俺の近くでアーレを構っているリューリ。それから通信越しとはいえ、ジョフィに対しても質問を投げ掛けてみる。その質問が何かというと、お前たちはどうしたいのかと言うものだ。するとリューリとジョフィは尋ねられると思っていなかったのか、それともほかの理由があるのか。ただ一言、「え?」ととぼけた様な返答をしてきたのであった。

ご一読いただき、ありがとうございました。



別連載「劉逞記」

https://ncode.syosetu.com/n8740hc/

こちらもよろしくお願いします。

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