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第二百二十話~相剋 二~


第二百二十話~相剋 二~



 俺とアーレが城の中庭だと判断できる場所へ出てから間もなく、先に大魔王と思しき気配がある場所へと向かわせたリューリが壁を破壊しながら飛び出してきたのであった。





 城の壁を破壊しながら飛び出してきたリューリの後を追う様に、一人の人物がゆっくりと現れる。しかしてその人物の正体だが、大魔王であった。なお、リューリだが、身に負っている大怪我のせいなのか、それとも対峙した大魔王から受けたプレッシャーのせいなのか分からないが、ぐったりとしている。そんな様子の彼女の傷を回復させてから、アーレに任せて後方へと移動させた。無論、その理由は、足手まといだからである。今のところリューリに意識がないので、これから何が起きても能動的な行動がとれない。つまり現状では、お荷物でしかないのだ。その点については、アーレも理解しているようである。彼は自分の背中にリューリを乗せると、一まず邪魔にならない様に建造物の影へと移動していた。そんな二人を視線と気配で確認したあと、俺は腰に佩いている短丈を二本とも取り出す。それから繋げて一本の杖としたあと、杖の両端よりマジックブレードを発生させて構えを取る。するとその一方で、大魔王もまた腰に佩いていた剣を引き抜いていた。

 なお、大魔王が持つ剣だが、特殊である。何せ、剣身がないのだ。その代わりと言っては何だが、エネルギー状の刃が形成されている。つまり、俺のマジックブレードと同じだと考えてよかった。

 それから少しの間、静かに対峙した俺と大魔王だが、その時、風が流れる。その風の動きと共に、それほど多くはないものの木の葉が俺と大魔王との間を流れたのだ。その直後、まるで今の現象が景気であったかのように俺と大魔王は間合いを詰める。持っている得物の差もあって、俺の方が間合いは広い。だからこそ、俺の間合いに大魔王が入った途端、俺はマジックブレードを振り降ろした。しかし大魔王は、力強く踏ん張るとマジックブレードをエネルギー状の刃で受け止める。すると刃が振れあった途端、接触している場所がスパークする。バチバチと鳴り合うなか、俺と大魔王は固まっていた。それから僅かの間はそのままの体勢を維持していたのだが、徐々にではあるものの俺のマジックブレードがじりじりと押し込んでいく。どうもこれは、体勢の差によるものの様だった。

 単純に間合いの差から俺は手にしていた杖を、つまりマジックブレードを振り降ろしている。ひるがえって魔王はと言えば、俺の攻撃を下から受け止めた形なのだ。体勢としては上から圧し掛かる様に押し込んでいる俺と、下から俺に比べれば若干不利な体勢で受け止めている大魔王と言う構図なのである。俺と大魔王の身体的能力がかなり乖離していない限り、この様な状況となるのはある意味では当然であった。

 俺としては、このまま押し込んでいけばいい。そう考えてさらに力を加えようとしたが、敵もさるものである。大魔王はすぐに体勢を変えながら、手にしている剣を斜めにしたのだ。なまじ、真っ向からぶつかり合っているからこそ、エネルギーの刃であるとはいえ反発している。しかしそこに発生している力のベクトルさえ変えてしまえば、反発することもない。そう考えての動きだと思うが、果たしてその考えは当たりであった。エネルギー状の刃が正面からぶつかり合っていたがゆえに発生していたのであろう接点のスパークは消え、そればかりか受け止められていたがゆえに大魔王へ圧し掛かっていた俺の力があらぬ方向へと流されてしまったのである。すると当然ながら、俺は体勢を崩してしまった。大魔王は、その機会を狙っていたのだろう。体勢を変える為に踏み出した足を軸足にして、俺に対して肩から突っ込んできた。流石にこれは、避けられる状態ではない。下手に避けて予想外のダメージを負うよりはいいと考えて、あえて力を抜いてその攻撃を甘んじて受け入れた。その直後、大魔王のショルダーアタックを受けた俺は吹き飛ばされる。しかもその先には、城の壁が待ち構えていた。しかし元より攻撃は受け入れるとしていたので、慌てることはない。スラスターを少し使って体勢を立て直すと、足から城の壁に着地した。

 流石に予想外だったのか、大魔王は驚きの表情を浮かべている。そればかりか、彼には隙が生じていた。ならば、折角生まれた好機を逃すなどもったいない。俺はそのまま壁を蹴ると同時に、スラスターを使ってさらに加速した。そこで気付いた様で、大魔王は手にした剣を使って切り上げようとする。これは、杖の先に発生しているマジックブレードを突き出していたことを見ての行動だろう。果たしてその読みは図星であり、俺のマジックブレードは大魔王の切り上げによって軌道を反らされていた。


「がふっ!」


 しかしながら俺は、大魔王の剣が切り上げられたのと同時に、杖から手を放していた。その為、大魔王の切り上げによって杖は飛ばされたが、俺自身にはほとんど影響は出ていない。お返しとばかりに俺は、勢いは殺さずに肩口から大魔王対して突撃を続行した。まともに俺の攻撃を受けた大魔王は吹き飛ばされ、城の壁にぶつかる。しかしそれだけでは止まらず、彼はそのまま壁を破壊して城の中へと雪崩れ込んでいった。


「取りあえずは、先にダメージを与えたな」


 一言呟きながら、俺は追撃するでもなく身構える。確かに先に当てはしたものの、まだ一撃目でしかない。無論、俺と戦い始める前は勇者であるリューリと干戈を交えていた筈なので、彼女が大魔王の天敵という存在であることを考えれば流石に無傷ということはないだろう。しかしながら、俺と対峙してからも大魔王の動きにおかしな点はなかった。ということは、何らかの方法で傷を治していた可能性が考えられる。俺の様に魔術による回復なのか、それともポーションの様な道具を使うのか。はたまた、別の方法なのか分からないが。

 兎にも角にも、俺が身構えて警戒していると、大魔王のぶち破った壁が崩れる。初めは、壁が壊れたことが原因かと思ったが、やがてその考えは否定された。何と、崩れた壁の一部に手が現れたからである。続いて、いまだ埃が舞うかつて城の壁があった場所に人影が浮かび上がってくる。しかもその人型は、うっすらとではあるが光を放っている様に見えた。


「何だ?」


 より一層、警戒感を高めている中、壊れた壁から人型、即ち大魔王が現れる。しかもその大魔王は、先ほど埃越しに見えた光を纏っていたのであった。

ご一読いただき、ありがとうございました。



別連載「劉逞記」

https://ncode.syosetu.com/n8740hc/

よろしくお願いします。

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