第二十一話~終了~
第二十一話~終了~
次の村へと向かう途中で、盗賊とも野盗とも判別できない集団から襲われる。すぐ反撃に出るも、盗賊や野盗とはとても思えない相手に、俺とオルは切札を使って漸減させるべく動き始めたのであった。
人であろうがそれ以外の存在であろうが、集団を作る者が取る行動などそう大して変わるものではない。だから、その集団で強い者が守っている辺りにいけば、大抵リーダーかそれに準ずる者がいる筈だ。
そう考えて動いたわけだが、どうやら当たりだった。今まで戦っていた場所から少しだけ離れた辺り、そこに数人の気配を感じる。しかも、その気配から感じられる雰囲気は、いわゆる雑魚とは違っている。特に数人がいる場所の中央付近にある気配は、頭一つ抜き出ている感じであった。
しかもオルとビルギッタと別れて散開したことで、その集団にも動きがある。こちらが散開したあと、やや遅れてだが二人ほどがそこから離れたのだ。その二人は、それぞれがオルとビルギッタがいる方へと向かっていた。
そもそもビルギッタやアリナやエイニなどといった誰か付きの彼女たちは、戦闘ができることを前提として創造されている。彼女たちを創造したのは、シュネではなく先代のシーグヴァルドやシュネ―リアとなるので、何ゆえにそんな概念で創造されたのかは分からない。しかし彼女たちが持つ能力は既に知り尽くしているので、相手が誰であってもさほどの心配はしていなかった。
寧ろ問題は、オルであった。
といっても、あの先祖返りの力を表した状態となったオルの発揮する戦闘能力は、保証できる。懸念しているのは、実戦の少なさである。つまり経験が少ないので、思わぬところで不覚を取りはしないかということだけが心配だった。
すると、シュネより通信が入る。どうやら、こちらの様子が気になったらしい。転装をしているので、その辺りをネルトゥースから知らされた可能性もあった。
その時にあることを思い付いたので、すぐにシュネへ伝える。その思い付きとは、オルへの補助だ。つまり、アリナに手助けをさせるのである。彼女を俺付きからオルとキャスの兄妹付としたこと、彼女自身が可愛いものが好きという性格が形成されたことからか、アリナは二人を特に可愛がっている。その彼女であれば、喜んでオルの手助けをするであろう。そう考えての思い付きだった。
その旨をシュネに伝えると、彼女も賛同する。その後、シュネからアリナに伝えられたらしく、すぐに彼女は飛び出していったようだった。
≪幾らこちら襲ってきた奴らを排除して問題がなくなっていたとはいえ……あっという間だったわ≫
「そうか……オルはアリナに任せる」
≪了解よ。シーグも油断はしないでね≫
「こっちも了解だ」
シュネとの通信を終えると、一気に加速する。足で走るより早いので、スラスターを使って一気に敵のリーダーと思しき相手に近づいた。流石に気付かれたようで、残っていた一人が立ち塞がるように動いている。だが俺は、そのまま突っ込んでいった。
もし避ければ、そのまま敵のリーダーにまで突貫する。避けなかったとしても、やはりそいつに突貫する。どちらにせよ、問題はないのだ。
だからといって頭からとはいかないので、肩で相手の腰へ突っ込むように突撃する。相手もまさかそのままくるとは思っていなかったのか、まともに食らっていた。
その流れで腰を掴みスラスターを吹かすと、上空へ舞い上がる。それから、敵の頭が地面に向くようにしてから、再度スラスターを吹かせて地面に向けて突貫した。当然だが、組みついた相手は頭から突っ込むことになる。必死に逃れようとしているようだが、空中で力が出せるわけがない。そのままの体勢で、俺は相手の頭を地面に叩き付けた。
そこで手を離したのだが、そのすぐあとに攻撃される。リーダーと勝手に判断した相手が、着地した瞬間を狙っていたのだ。しかし、こちらとしてもその可能性は考えていたので、咄嗟にうしろへ大きくジャンプをしてその攻撃を避ける。すると、辺りに炎の花が咲いていた。
「……魔術か。まさか、盗賊か野盗か分からない相手が魔術を使うなど思わなかった。落ちたものだな」
魔術を使う者は、大抵エリート認識されることが多い。それは、魔術を使えるようになれる環境に由来するからであった。
何せ魔術を使えるようになるというのは、ある意味で学問である。それゆえに学がない、または学べる環境と縁が薄かったりなかったりする者たちには、機会がないので魔術を扱うことができないのだ。
但し、これはあくまで一般論である。魔術師の中には、スローライフでも目指しているのか地方や辺境の村に隠居する者もいたりする。その為、地方や辺境の村出身だからといって一概には魔術を使えないというわけでもなかった。
だが、普通魔術師といえば、それなりに大きい町出身という傾向はある。だからからであろう、魔術師とエリートが等式で結ばれていた。その魔術師が、野盗と共にいる。俺が落ちたといった理由はそこであり、同時にこれは挑発も兼ねていた。
しかしながら、相手からの反応は薄い。奇襲を避けられたことに若干驚いているような雰囲気はある。しかし、落ちたという言葉に反応を見せているようには感じられなかった。
「そちらこそ、一体全体、何者だ。硬度の高い結界を張る魔道具を持つなど、ただの旅人には思えん。ましてや、その面妖な格好。ただ者ではなかろう」
「確かに、ただの旅人じゃない。俺、いや俺らは一介の行商人だ」
「……貴様、ふざけているのか?」
「事実を言ったまでだが……」
ただのかどうかは分からないが、紛いなりにも行商をして辺境などを回っているのだから、間違いなく行商人であると言い切れる。それを告げてふざけているのかと言われても、それが事実だと答えるしかない。
まぁ、普通の行商人どころか、国でも一、二を争うような大商人あっても扱えないような代物をふんだんに使っている自覚はあるが、それはそれである。少なくとも、表向きは間違いなく行商人なのだ。
「言うつもりはない、そういうことか」
「全くの誤解だ。それより……てめえらこそ何者だ! いきなり襲ってきたのは、その風体から当たりはつけられる。襲われたこと自体を納得できるかどうかについては、別としてだが!」
「それこそ、お前らにいう理由はない」
「そうかよ。では、敵として潰す! 振りかかる火の粉は、払っておく必要があるからな」
「ならば、こちらも手加減はせん。ついさっき、僅かの間に一人倒されたばかりだからな」
そう言った途端、野盗のリーダーかなと当たりを付けた者から光が溢れる。いわゆる魔力の光であり、普通であればそんな現象は起きない。唯一そのような現象を起こせる存在として知っている相手、それは悪魔だった。
「まさか、悪魔とは」
「ほう。知っていたとは、ますます侮れん」
「でも、何で悪魔が、野盗なんかをやっている?」
「何度も言わせるな。答える理由は、ない!」
その言葉を言い終わると、間を置かずして突っ込んでくる。同時に、炎の塊をこちらへ向かって飛ばしていた。多分、牽制を兼ねた攻撃なのだろうが、甘い判断だと言わざるを得ない。そんなちゃちな牽制が通用するほど、弱いつもりもないからだ。
俺は少し横に跳ぶことで、炎の塊を避けた……つもりだった。
「何だと!」
「かかったな」
何と炎の塊が、追ってきたのだ。まさかホーミング機能が付いているなど夢にも思わなかったので、不覚にも食らってしまう。その為、やや横殴り的な衝撃が襲ってくるが、それだけであった。流石は緋緋色金製のデュエルテクター、炎の塊によるダメージは完全に遮断していた。
その時、先行した炎の塊の陰に隠れるように接近してきた悪魔の攻撃が迫ってきていた。その攻撃方法は、俺が倒した悪魔アザックと同じである。つまり、硬質化していると思われる爪によるものであった。
どうにも、これが悪魔のお約束らしい。これが初見であったならば、有効かも知れない。実際、普通に考えれば、爪などが伸び皮鎧ぐらいまでならば兎も角、金属鎧すらも貫通するなど思いもよらないからだ。
しかし、既に何度か経験している俺からしてみれば、その攻撃は奇襲となりえない。向かってくる悪魔に対して体を回転させると、その回転した勢いを載せた右腕でなぎ払う。そんなバックブローの一撃で、悪魔の爪を全て粉砕してみせた。
まさか金属鎧すら容易に貫く自分の爪が、ただの一撃ですべて砕かれるとは思っていなかったのらしく、間抜けな声と共に驚いている。その隙を見逃すなど、ありえない。体の向きを変えた勢いはそのままに、続く左腕で横から相手の首を腕で刈り取ると、勢いよく腰を降ろす。その動きに悪魔は、強制的についてくる。そのまま、俺は悪魔を地面に叩きつけた。
「これで、終わりだ!!」
地面に叩きつけられたその反発から、逆に空中へ浮かび上がる。同時に悪魔は、口から息を吐き出していた。多分、肺にあった空気が出たのだろうが、そんなことはどうでもいい。俺は両手を組むと、完全に死に体となっている悪魔の心臓がある辺りに、その手を組んだ腕を振り降ろす。組んだ拳の部分が心臓の真上に当たるように振り降ろすと、空中に有りながら悪魔の体がびくっと震えた。
次の瞬間、悪魔は大きく目を開き口から声にならない声を出す。その直後には白目を剥いたが、そんなことなど気にせず、もう一度勢いよく地面へと叩きつけた。
「これで生きていたら化け物だけど……やっぱり化け物かよ」
かなり弱くなっているが、確かに心臓は脈打っている。このまま放っておいても止まるのではないかなとも思えるぐらい弱い脈動だが、動いている以上は油断大敵だろう。右腕で頭を掴み持ち上げると、左腕で手刀を作る。そしてそのまま、止めの一撃として心臓を手刀で貫いた。
その途端、悪魔は最大限に目を見開く。そしてそのまま、こと切れていた。
これで終わったかなと思いつつ、念の為に少し前に地面へと叩きつけた相手も確認しておく。だが、既にその姿はない。
「そうだった。悪魔は死ぬと、消滅することを忘れていた」
リーダー格だった存在が悪魔だったのなら、その配下が悪魔であっても不思議はない。その意味では、シュネたちが籠っていた結界が爆発に似た現象に晒された理由も分かる。
分かるのだが……
「でも、こんな辺境といっていい場所に悪魔が、それも集団でいる? 全く、わけが分からん」
「シーグヴァルド様」
「アリナか。それにオルとビルギッタも無事か……それで、他の奴らはどうした?」
「勿論、全て倒しました」
そう淡々と、倒した事実を告げてくる。問題が、取り敢えず終わりを告げたことにひとまず安心する。とはいえ、まだ問題はある。倒したこいつらがアジトにしていると思われている古い砦の跡まで、出向く必要があるからだ。
悪魔が関わっていることが分かったので、なおさらである。
「取りあえず、シュネたちのところへ戻るぞ」
『はい』
オルとアリナとビルギッタの返事を聞きつつ、シュネと合流するべくその場から離れる。その時、俺が倒した悪魔の最後の残滓が空中へ溶けるように消えたのであった。
連日更新中です。
名も出ないまま、悪魔が退場しました。
いとあはれなり(爆
ご一読いただき、ありがとうございました。




