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第二百十二話~帰着~


第二百十二話~帰着~



 討伐系として初めて依頼を果たす為に向かった森で遭遇した、これまた依頼内容と合致するゴブリンを討伐した俺たちは、次の標的に向かったのであった。





 ギルドで受けた常設依頼であるゴブリンやコボルトの討伐を終えた俺たちは、ドコラの町へと戻って来た。町へ入る手続きを終えると、そのままギルドへと足を伸ばす。中に入り受付に向かうと、依頼の完了をリューリが告げた。正直なところ、受付で討伐完了を告げるのは、俺であろうがリューリだろうがどっちでもいい。だがあえてリューリに行わせたのは、これも経験だからだ。何せ俺とリューリの関係は、いずれ終わることが決まっていると言っていい。それこそ大魔王を討伐すれば、リューリに俺とパーティを組む理由などないからだ。それに俺も、いずれはこの星を離れることとなる。まだ確定とは言えないが、大魔王の元までたどり着けば、恐らくミスリル製の武器か防具の一つか二つぐらいは手に入れていることだろう。そうなれば、修理の為の材料が手に入るのでこの星にいる理由もなくなるのだ。もっとも、大魔王を討伐、もしくは勇者であるリューリが道半ばで敵に敗れて死亡などした時点で、俺がジョフィより受けた依頼も終わりを迎えることとなるのだが……今は考えても仕方がない。何せミスリルなど、まだこの星では影も形も見ていないのだ。その様な状況で、先のことを考えても答えなど出るわけがない。修理の材料となるミスリルなどといった、いわゆる魔法金属を手に入れてから改めて考えればいい話なのだ。


「これは……」


 リューリが討伐完了の旨をカウンター内にいる受付嬢に告げると同時に提出したゴブリンやコボルトの討伐証明を見て、対応している受付嬢は驚いて言葉を失っていた。浮かべている表情から驚いたから言葉を失ったことは理解できるが、問題は驚いた理由だ。討伐を行ったのは二日だけだったが、戦績としては悪くないと思っている。リューリは討伐依頼対象となるゴブリンやコボルト、さらに言えば常設の討伐対象になっていない他の魔物も狩ったことを考えれば十分以上に倒した筈だ。喜ばれこそすれ、驚きを持って迎えられるいわれなどない筈だが。


「何か問題ありました?」

「え? あ、いえ! その様なことはございませんよ」

「そう。ならよかった」

「ええ……まぁ、そうですね……問題はありません。確かに、確認しました」


 その後、討伐数に準じた報酬を得ると、ギルドからの建物から通りへと出たのであった。なお、今回の依頼では、野宿も行っている。しかも俺としては珍しく、結界を使用していない。実はこれもまた、リューリの経験の為だ。今後、俺とずっと一緒に行動するのであるならば問題ないかもしれないが、何度も述べている様にいずれコンビは解消される。その時に、結界を使用した野宿しか知らないとなると、問題が生じると思ったのだ。とは言え、一応知識としてはあるし、経験もしていた。しかしながら、俺も経験が少なかったことは事実である。その為、多少のぎこちなさが出てしまったことはご愛敬ということにして貰う。実際、リューリも俺の様子に気付いた様な雰囲気があって、訝しそうな様子が感じられている。しかし俺は、全力で無視して何でもない様な素振りを続けたのだ。

 ともあれその日は、宿屋に戻って夕食を取ったあと眠りにつく。そして翌日から暫くの間、様々さまざまな依頼を受けることにした。元より、潜在能力が高いリューリである。ゴブリンやコボルト相手では、すぐに物足りなくなることは分かっていた。だからこそ、実戦の勘を掴むと言う意味合いもあって、何度か常設依頼を受け続けたのである。やがて、それなりに実戦の勘を掴んだなと判断したあとは、ゴブリンやコボルトを討伐する依頼から卒業して、よりは強い相手となる依頼を受けることにしたのだ。かなり促成栽培の要素は強いが、これにはいつまでも大魔王を放っておくと言うわけにいかないというジョフィ側の事情もあったので仕方がないだろうと割り切ることにしたのだ。

兎にも角にも、俺たちはこの短期間の間に、人知れず名が知れ渡る様になってしまう。だが、その頃には当初の目的である目的はどうにか果たしていたこともあって、俺たちは根城としていたドコラの町をあとにすることを決めたのだった。しかし話は、そうすんなりとは進まなかったのである。その理由は、ドコラの町を出立すると決めたその日の夜に入った連絡に他ならなかった。果たして連絡を入れてきたのはジョフィであり、その内容は施設が爆発・炎上したというものである。しかもその理由だが、言うまでもなく大魔王の配下が施設へ侵入したせいだった。どうやら数度の派遣を行ったにも関わらず、成果どころか情報すら得られなかったことにいよいよ業を煮やしたらしい。指示をしたのが大魔王なのかそれとも側近であるのかは分からないが、それなりの数の勢力を施設に向けて派遣した様だ。この規模ならばかねてより計画していた「施設を囮にして爆破する」ことを実行しても問題はないと判断したジョフィは、施設もろとも派遣された大魔王の勢力をほふった様である。なお、計画を実行するのかについてのさじ加減はジョフィに任せていたので、彼の判断で行った様であった。


「では、施設に行くとしようか」

「異論はないわ」


 こうして俺たちは予定を変えて、ドコラの町から出発したあとの最初の目的地は、以前居た施設へと決まったのである。それから二日後、旅に出るだけの用意を十全に行った俺たちは、ドコラの町を出発した。目指すのが施設であることは当然なのだが、しかし向かった場所は施設のある方面ではない。ならばどこに向かったのかと言うと、それはキュラシエ・ツヴァイへ乗り込む為であった。かつて、ススコ辺境領内へ移動した際に同僚内の辺境地域に隠したツヴァイだが、施設から領都のイユムへ移動する際にドコラの町の近く、とある場所に移動して隠してある。実は、イユムからドコラの町へ移動した理由には、ツヴァイのことがあったのだ。ともあれ俺たちは、ツヴァイを隠した場所へと向かう。幸いなことに、途中で大きな問題にあうこともなく無事にその場所へ到達することが出来ていた。


「さて、と。シエへ連絡して、光学迷彩を解除させるか」


 その後、シエへ通信を送って機体を隠蔽している光学迷彩を解除する。間もなく、見慣れた機体が目の前へ現れた。そのままコックピットへ向かうと、座席にはさほど大きくはない塊が鎮座していた。その正体は、ジョフィとなる。以前はかなり大型のコンピューターであったが、今は見た通りの大きさとなっている。何せ今のジョフィには、施設の維持管理などが必要なくなっているので大型化しておく必要がない。必要な機能の分だけチョイスして、さらにはコンピューターとしてのシエをも参考にして作った結果であった。

 とは言うものの、移動するにあたって座席より移動させる必要がある。そこでジョフィは、俺のバックパックへしまうことにした。バックパックには必要だと思われるアイテムを入れているが、それでも最大容量を満たすほどではない。実際、フィルリーアで使用した見た目上は馬にも変形するバイクを仕舞い込むことが出来るし、たとえバイクを仕舞ったとしてもまだまだ容量には余裕がある。だから以前よりかなり小型化しているジョフィを仕舞っておくことなど容易なことなのだ。


「じゃ、しまうぞ」

「了解しました」


 俺は、一言断ってからバックパックへ仕舞い込む。こうしてスペースを確保した俺とリューリは、コックピットへ乗り込んだ。それぞれの椅子に座り、シートベルトを締める。それからエンジンに火を入れると、ツヴァイはゆっくりと上昇を始めた。なお、アーレだが、流石にコックピット内には入り込めない。何せ体つきはもう、人間の大人を凌駕しているので、入り込めるスペースがないのである。だがアーレは、自前の羽で飛ぶことが出来る。ゆえに俺は、アーレの速度に合わせてツヴァイを飛行させた。現時点で出せる最高速度で飛べば、二時間も掛からずに到着できるのだが、アーレに合わせているので速度は五分の一を少し超えるぐらいである。だからこそ途中で休憩を兼ねて、夜は飛行しないことにした。

 近隣の地図から休憩ポイントに決めた場所に到達すると、そこで着陸する。周囲に結界を張り、魔物などの敵対性生物を排除した上で夜を明かした。翌日、朝食を取ってから今度こそ目的地である施設へ向かった。暫く飛行して施設近隣の上空に差し掛かると、ツヴァイのセンサーに反応が複数出る。どうやら、調査の為に派遣した生き残りかも知れない。同時に、この地はススコ辺境伯領の一部でもある。あくまで可能性の問題でしかないのだが、辺境伯側の人員の可能性も僅かだが残っているのだ。


「うーん……しょうがない。シエ、ツヴァイを頼むぞ」

「それは構いませんが、シーグヴァルド様はいかがするのですか」

「俺が直接向かう。リューリ、今からコックピットのハッチを開けさせる。しっかり踏ん張っていろ」

「うん」

「それから、アーレ。俺を通して聞こえたな」


 直後、了解のニュアンスが感じられる何かが脳内に返答される。やはりテレパシーなのだろうなどと思いつつ、俺は後部座席を確認する。するとリューリは、俺の言いつけ通りしっかりと踏ん張っていた。それから、シエに命じてコックピットハッチを開けさせる。すぐに空中へ飛び出すと、スラスターを使って飛行する。それから通信越しにリューリを促すと、彼女は少し躊躇ったあとで俺へ向かって空中へ飛び出してくる。その直後、リューリをいわゆるお姫様抱っこで抱えると、アーレを伴って爆破した筈の施設へ向かって飛行したのであった。

ご一読いただき、ありがとうございました。



別連載「劉逞記」

https://ncode.syosetu.com/n8740hc/

よろしくお願いします。

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