第二百話~施設 二~
第二百話~施設 二~
遺跡改め、施設の探索を続けていたシーグは、ついに施設の中枢へと到着する。するとその場所には、JOFUY8572。通称、ジョフィと名乗るコンピューターと思わしき大型機械が鎮座していたのであった。
施設を司っているのだろうコンピューターらしい機械から簡単に現状の説明を受ける。その説明によれば施設は緊急状態であり、設備は最低限しか稼働していないらしい。そこで俺は、現状から通常状態への回復を伝えたというわけであった。
「では、炉にまで赴き操作をお願いします」
「自分ではできないのか」
「行えない様に、プログラミングされています」
ジョフィに言わせると、現状からの復帰は人の手で行わなければならなければならないらしい。その様にプログラミングが、組まれているとのことだった。どうしてそんな面倒くさいプログラムが組まれているのか分からないが、プログラミングされているというのであるならばもはやどうしようもない。同時に目の前に鎮座している機械は、やはりマザーコンピューターの類であることに確信をもった。同時に折れの中で施設が作られた目的などといった様々な疑問点が浮かび上がってくるのだが、今は取りあえず脇へと置いておくとしよう。それに何より優先させるべきことは、施設のエネルギーを確保する為、再稼働とやらに注力することなのだ。その後、ジョフィから得た情報を頼りに施設を動かす炉が存在している区画へアーレと一緒に向かう。しかし、いざ現地に到着してみると、問題の炉がある区画へと入ることができる扉は当然の様に閉じられていることが判明した。ココで路頭に迷うことだが、そこは安心して欲しい。扉を開く為のパスワードは、既にジョフィから得ているからだ。ゆえに俺とアーレは、問題なく扉を開くことが出来た。それから事前に教えて貰っていた情報に従って、炉のコントロールルームへと向かう。その過程で問題など発生することなく到着すると、やはりジョフィから事前に得ていたパスワードを使って扉を開いて、炉のコントロールルーム内へと入りこんだ。果たして侵入した炉の温トロールルーム内には、様々な機械が設置されている。だが、必要がない物には目をくれずに俺は、炉のコントロールルーム内のある一角へ足を向けた。
「これか……」
そこにあったのは、炉を再稼働する為の設備となる。この設備を決められた順番で稼働させていけば、現状の緊急状態から通常の運転状態へ移行するわけである。ジョフィは、そうはっきりと俺とアーレに言ってのけたのだ。その話を聞いた時、俺は手順を知っているのならば幾らプログラミングがされているとはいえ、時間を掛けさえればできるのではと思い尋ねみた。するとジョフィから、俺が考えた様なことは行えない理由が語られたのだった。
そもそも、プログラミングに逆らおうとすること自体が難しいことであるが上に、組み込まれたプログラムの関係上、ジョフィ自身がプログラムに対して逆らおうとする気にもならないのである。何より、炉を操作する為の設備は完全にスタンドアローンであり、幾ら施設の中枢を司るジョフィであってもアクセスできない仕組みとなっているらしい。それならば、ロボットでも組み上げて代わりに行わせればよかったのではと再度尋ねてみたわけだが、ジョフィのモニターに驚きを示しているのかビックリマークが乱舞していた。どうも前述したプログラムのせいで、炉の再稼働に関しては事前にインストールされているマニュアル通りの対応しかできない仕様になっているようだ。まぁ、初めからジョフィが関与できない様にわざわざプログラミングを組み込んであるのだから、この施設を建造した何者かがその様な仕様を施していたとしても何ら不思議とは思えなかった。
「ま、今はどうでもいいか」
ともあれ俺は、ジョフィより教えられた手順に従って炉を通常運転のモードへ移行していく。だがその最中に、俺はあることに気付いた。それは緊急状態モードで稼働しているにも関わらず、使用できるエネルギーの半分以上がある場所へ注ぎ込まれていることである。しかもロックが掛かっているのか、コントロールルームでも操作ができなかったのだ。何とも怪しい……というか、怪しい以外の何物でもない。とは言うものの、そもそも操作ができない以上はどうしようもないのである。さらに付け加えるとすれば、ジョフィから教えられた手順には、俺が気付いたことなど何一つとして語られていなかったのだ。
「うーん。何だろう。多分、何らかの意味はあるんだろうが……仕方ない、今は炉を通常運転モードに移行することを最優先させるとしよう」
どの道、ジョフィから教えられた手順には、操作の過程で気付いたことに関わっていない。ゆえに取りあえずは棚上げにしておくことにして、今は炉の再稼働に注力することにした。ジョフィから教わった再稼働に対する手順に従って稼働させていき、最後にコントロールルーム内のある捜査台にあるボタンを押す。するとその途端、炉が通常稼働状態へと移行し始めたのだ。すると正常な状態へとなったことを照明するかの様に、コントロールルーム内にも明かりが灯っていく。今までは非常灯によって、コントロールルーム内に明かりが齎されていたのだ。最も、俺自身はナイトビジョンの能力を持つ魔道具を装備しているので、明かりが薄暗い状態であったとしても全く困っていなかったのだが。
ともあれ無事に炉の再稼働が確認できた俺は、その後も暫くの間はコントロールルーム内へ留まり、事前に分かっていた問題が新たに発生していないのかについて確認をする。しかし幸いなことに、問題らしい問題が起きることはなく、また、コントロールルーム内にある大型のモニターにも異常を示す表示は現れない。システム的にオールグリンであることを確認した俺とアーレは、炉のコントロールルームから出ると、ジョフィが存在している中枢へ戻ったのであった。
やがて中枢へと戻ってきた俺は、疑問点をジョフィへぶつけた。まず気になったことは、何でジョフィが俺に協力的なのかということである。確かに、炉の再稼働を望んだのは俺で間違いない。だが俺は、この惑星出身者でも何でもないのだ。そんな俺の頼みにジョフィは、正しく答えたのである。これで気にしない方が、おかしいというものだ。しかしてジョフィからの答えだが、緊急時におけるマニュアルによるものとのことだった。
「緊急時のマニュアル? 何だそれは」
訝し気な表情を浮かべながら俺が尋ねると、ジョフィからの答えは以下の通りであった。
まず、第一の想定としては、重大なトラブルが施設内で発生して施設内のスタッフでは復帰が困難な場合となる。この場合は、外部からのアクセスによって緊急時からの復帰を行うことになっている。しかし外部からのアクセスが難しい、もしくは不可能な場合、外部から派遣されたスタッフに従い、緊急時からの復帰を行うといったものである。だが、前述した方法が全て選択できない場合、ジョフィへのアクセスが行えた存在に従うというものであった。
それならば、ジョフィの元まで辿り着けさえすればそれが悪党でも力を貸すのかと続けて問い掛けてみる。するとジョフィからの答えは「ほぼ不可能なので、設定されていない」というものであった。まぁ、施設の入口を隠蔽する。ただそれだけの為に、次元まで歪めているのだ。そんなことが出来る時点で、侵入者などまず施設内へ侵入出来ないことは容易に想像できる。それであるならば、想定がされていないことも有り得る話であった。
「と、言うことはだ。ジョフィは、俺に協力するということでいいんだな」
「はい。「JOFUY857、通称ジョフィ」は、想定された状況に従い、ただいまよりあなた様に従います。何なりとお申し付けください」
理由は兎も角、俺の命令を聞いてくれるというならばそれは吝かではない。ならば俺は、湧いた疑問点について、さらに色々と尋ねてみることにした。そんな俺が次に気になったことを、聞いてみることにした。それは、今いる施設が省電力状態で稼働している間であっても、使用できるエネルギーの半分以上が施設内のどこかへ注ぎ込まれている事実に対する答えであった。
「当施設は、勇者計画の中枢となります」
「えっ……とぉ……何だ? その、勇者計画というのは?」
「では、ご説明します」
そう前置きしてからジョフィは、俺への説明を開始した。
そもそもからして、勇者計画というものは初めから存在していたわけではないとのことである。初めの計画では、極一部の年嵩な者たちが求めた不老不死を極秘裏に研究する為の施設だった様だ。その過程で様々な計画が立案され、検討されたのち実行された計画もあれば、計画だけで終わったものもあったらしい。その様な中にあって、ある計画が立案されたのである。果たしてその立案された計画というのが、新たに創造された肉体へ乗り移るというものであった。しかし、ただ移し替えるだけでは面白くないと計画に関わった研究者たちが考えたのか、それとも不老不死を求めているかの様な者たちが言い出したのか。それは、当時に生きていたわけでもない俺が分かるわけがない。ただ一つ分かっているのは、移し替える為に創造した肉体に対して、強化改造が施されたということであった。それならばいっそのことサイボーグやアンドロイドを作ればと思わないでもないのだが、なぜだか彼らは揃って自身の体を改造することに対して難色を示したらしい。何ともわがままだと思えるのだが、しかしながら彼らはいわばスポンサーでる。研究に対して、多額な金を供給してくれる存在なのだ。その様なスポンサーから出た要望では、断ることも難しい。結局、金がなくては何にもできないのだ。ゆえに彼らは、スポンサー様の意向に従って移し替える肉体の強化や改造に注力していたのであった。そのお陰もあって、副作用や反動などがかなり抑えられた移し替える為の肉体第一号が完成する。しかし、まだまだ課題も多く、実験の状態を超えてはいなかった。それであるがゆえに実験は続けられ、時を追うごとにより確実な技術となっていく。しかしながら、その様な最中にあって、とある研究所である実験体が生まれることになるとはだれも想像できなかった。そもそも、生み出される肉体には意識というものがない。前提条件としてどの創造されたどの肉体も、最終的にはスポンサーたちが移し替わる為の肉体を選定としているからだ。その肉体に別に意思などがあっては邪魔でしかない。だからこそ、創造された彼らには意識がなかったのだ。その様な中にあって、とある肉体が創造される。何と、明確な意識を持つ存在が創造されてしまったのである。普通なら当初のコンセプトを逸脱していることから、廃棄対象となる筈である。だが、そこの研究者に所属していた数名がこの存在に対して興味を示してしまったのだ。 何せ意識が生まれない様にと設定されている筈であるにも関わらず、創造された肉体には意識が存在している。件の研究者たちが、これは研究に値するとして仲間には勿論、スポンサーたちに対しても隠蔽してしまったのだ。そして彼らは、密かに研究を続けたというわけである。とは言うものの、やはり研究対象でしかない。その肉体に対しては非人道的な実験なども、数多く行われたのだ。その様な状況にさらされて、意識をしっかりと持っている存在が甘んじ続けるわけがない。ついにはその肉体は、人類に対して反旗を翻したのであった。
ご一読いただき、ありがとうございました。
別連載「劉逞記」
https://ncode.syosetu.com/n8740hc/
もよろしくお願いします。




