第百九十八話~遺跡 二~
第百九十八話~遺跡 二~
理由は兎も角、隠されていたと思われる遺跡に踏み込んだわけだが、最初に訪れた地下一階で魔力が分解されるという驚きの体験をしたのであった。
まさか、魔力を分解するような物品が存在するとは、正直に言って思わなかった。シュネ辺りにお土産として持っていくことが出来れば、喜ばれるかもしれない。だが、今いる惑星からも脱出できない現状では、ただの荷物となるだけだ。座標自体は記録に残しているので、いずれこの惑星から離れる目途が立ったならば、取りにくればいいだろう。
「一まず、奥へ行ってみるか」
扉が開かない上に壊せないのならば、いつまでもこの場にいたところでどうにもならない。だからこそ俺はこの場から離れて、奥へと向かっていった。すると扉は一つだけではなく、等間隔で並んでいたのである。その様子はまるで、ホテルの廊下とよく似ていた。通路の左右に扉がある辺り、なおさらにその雰囲気がある。違う点があるとすれば、ホテルの様に装飾や雰囲気に気を使っていないところだろう。壁や扉などは無垢の地肌が露出していて、見た目から金属だということが分かる。だが元からその様な作りであったものなのか、それとも長い時が経ったことでその様な状態となったものかは分からなかった。
「一旦、エレベーターまで戻るか」
調べながらということもあって遅々として進んでいる為、あまり奥へと入り込んだ感覚はない。しかも、あまり代わり映えしない光景であり、本当に進んでいるのか怪しく思えてしまう。そこで、これ以上進むよりは仕切り直す意味でも戻る気になったというわけだ。それに、他に気になる点がある。それは、この施設がどういった目的で作られているのか分からないことだ。これだけの施設を稼働させる以上、中枢となる部分が存在する筈である。そしてこの考えに間違いがなければ、このまま探索を続けるより中枢を探し出した方が手っ取り早い。何よりこの施設全体を把握する為にも、中枢を押さえた方が有効に思える。つまり、当てもなく闇雲に探すよりは、遥かにましだと思えたのだ。
それでも一応、目印としてマーキングはしておく。最も、中枢がもし見つかったならば、改めて今まで見ることが叶わなかった扉の中などを調べるので、あまりは意味がないかも知れない。だが中枢がない、または中枢部分が壊れていた場合も考えて、念の為に残しておくのだ。
「これで、よし」
マーキングを終えたあとでエレベーターまで戻ると、B3と記されているボタンを押す。すぐにエレベーター扉が閉まると、下へ動き出した。しかし動き出したのはいいのだが、意外とB3までの時間が長いのである。地上から地下一階へ移動した際に掛かった時間より確実に長い間、エレベーターは動いているのだ。感覚的にだが、結構速い速度で降下しているように思える。だがそれでも、B3の階にはまだ到着していない。「どれだけ深いんだよ!」と内心で思いながら到着するのを待っていると、エレベーターが減速した様な感覚を覚えた。それから間もなく、エレベーターは完全に止まると扉が開く。地上の入り口や地下一階に降りた時もそうだったが、そこも淡い光が灯されている。しかしながらあまり光量が強くない為、少し距離が開くと肉眼では遠くは見えなくなってしまう。ただ、D・S改には可視光増幅機能機能があるので、その意味では物凄く有難かった。
「これは、広場か?」
エレベーターから出た俺とアーレが今いる場所だが、結構広い。しかも壁がカーブを描いていることから、円形ではないのかと推察してみた。つまり、エレベーターを中心に、同心円状に広がっているのではないかと考えたのだ。そのことを確かめる為に、壁まで歩いたあと壁沿いに進んでみる。念の為に、アーレにはエレベーターを出たところで待機して貰っていた。これで、暗くても出発点が分かるだろう。兎にも角にも、壁沿いに進んでいく。すると俺は、元の場所に戻ってきた。ちゃんとアーレが待っていたので、間違いはないと思っていいだろう。
「やっぱり、円形か」
しかも壁沿いに進んでいる際には二か所ほど、通路と思える空間が伸びていることも分かった。どちらも見つけた際には伸びた通路の奥へ向かう衝動にかられたが、今は把握する方が先だと思い直すと先へ進む。そのお陰もあって、こうしてB3階へ到着した最初の場所、即ちエレベーターの扉付近に到着したことで形を把握できた。やはり予想した通り、エレベーターを中心に周り回廊の様な造りとなっているらしい。そこで、今いるエレベーター近くをベースとして、先ほど見つけた二か所の通路と思われる伸びた空間を探索することにした。
二度手間となることを避ける為に、分かれ道にもマーキングをしておく。マークを付けると、それから俺は奥へと伸びる通路らしき場所を進んでいった。その途中に幾つか扉を見付けはしたが、そのいずれの扉も開かない。その為、扉の中がどうなっているのか分からない。だが、このままでは中枢部分が見つけられないこともまた事実である。そこで、危険を伴うかもしれないが、扉を壊して扉の向こうへ進んでみることにした。その際に軽く扉付近を叩いて、感覚的にどれぐらいの硬さがあるかを調べてみる。すると、硬くはあるが壊すこと自体は問題がない様に思えた。最も、壁とは違って扉である以上、シェルターの出入り口のでもない限り壊せないほど分厚い扉というのはまずないだろう。その様に考えた俺は、扉の前で大きく息を吸いそこで止める。それから、横蹴りを扉に叩き込んだ。すると、その一撃を受けて扉が大きく歪む。だが、驚いたことに蹴りの一発では扉が壊れない。ましてや人一人通れるぐらいまで壊れることはなかった。
「へぇ。身体機能を最大限まで魔術で高めているのに、壊れなかったのか。これは、予想より硬いな」
とは言うものの、扉は確かに歪んでいる。多くてもあと数発も叩き込めば、壊れるだろう」
扉の凹み具合からそう判断した俺は、さらにもう一度、扉へ蹴りを入れる。これには頑丈そうな扉も耐えられなかった様で、部屋の中側に向けて破孔を作ることができた。果たしてその壊れた穴の大きさだが、俺一人なら十分に通れるぐらい。その出来立てほやほやの穴を潜って中に入るが、そこにあったのはある意味でなじみ深いモノだった。
まず、最初に驚いたことだが、機能としては生きている機械らしきものが鎮座していることだ。さらにはその形が、なじみ深い。人一人が優に入れる大きさを持つ円筒状の機械があって、その円筒状の機械から幾筋か伸びた先はやはり機械に繋がっている。その光景は、シーグやシュネが憑依した先代のシーグヴァルドやシュネ―リアが転生する為の肉体が保管されていた場所にとても酷似していた。
「これは、どういうことだ?」
円筒状の中は液体で満たされているようだが、それだけだ。目を凝らしてよく見てみたのだが、やはり円筒状の中には液体以外は何も入っていない。D・S改を使って確認してもみたが、やはり何の反応もなかった。つまり、使用可能状態ではあるが、理由は別にして全く使用されていないということになる。そうなるわけだが、これで一つ分かったことがある。それは間違いなく、今いる施設は生きているということだ。そしてもう一つ、気になることがある。それはこの施設が、どれだけ長い時間、稼働状態にあるのかということだ。これは俺の推察も混じっているのだが、この施設自体は古代文明期に建造されたものだろう。少なくとも俺が惑星に不時着してから確認したこの惑星における現在の文明レベルで作れるような代物ではない。実際、惑星に降り立ってから読んだ幾つかの文献には、古代文明を示唆する話が載っていたのである。あと、俺が今いる施設、いわゆる古代文明の遺産と思わしき遺跡構造物が少ないまでも見つかっているという事実もある。これだけ揃えば、古代文明が存在していたこと自体は間違いないだろう。ただ、今まで数が少ないまでも見つかった遺跡と思わしき施設と俺が今いる施設と明確な違いがある。それは前述した通り、この施設が生きているということだ。何せ俺が見た文献に登場する遺跡は、大抵が壊れているか機能が死んでいたのである。しかし俺やアーレが入り込でいる遺跡は、間違いなく生きている部分がある。この点だけでも、興味は出てくるというものであった。
「これは、真相を解明する為にも、なおさら施設の中枢を司っている何かを探す必要があるな。何とも、面白くなってきやがった」
偶々、偶然見つけた遺跡……いや生きているのだから遺跡は相応しくないな。今まで通り、施設でいいか。何であれ、見付けた施設を探索する気分が俄然高まり、高揚していくのも俺は感じていたのであった。
ご一読いただき、ありがとうございました。
別連載「劉逞記」
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