第百九十六話~不明 二~
第百九十六話~不明 二~
到着したススコ辺境伯領の辺境地域にキュラシエ・ツヴァイを隠したあと、同辺境伯領の領都の衛星都市へと向かった俺とアーレであったが、その道中にてデュエルテクターのセンサーがある反応を捕えたのであった。
改めて行ったD・S改による確認の結果、反応があった何かは地下にあるのではないかと結論付けた。そこで、入口を探す為に周囲の探索を始める。勿論、俺自身だけではなくデュエルテクターのセンサーも、さらにはD・S改をも働かせている。無論、アーレも協力してくれていた。とは言うものの、周囲にあからさまな目印となる様な建造物や構造物などはない。最も、その様な建造物などがあれば、確実とは言わないまでもドローンを飛ばしたときに見つけていた可能性が高い。しかし昨日の夜に飛ばしたドローンが集めた情報には、町や村から離れたような場所に建造物が存在するかのような情報など全くなかったのだ。確かに、情報を集めそこなったという懸念はある。基本的に全方位をカバーできるよう飛ばしているが、完全に隙間なく周囲の情報を集めているとは言い難いからだ。とは言え、これはこれで仕方がないことではある。何と言っても、ドローンの数には限界がある。これがラキケマから放出されたのであるならば、それこそ隙間なく情報を集めることは出来るかも知れない。だが、俺が今の状況で使えるドローンの数は、決して多くはない。どれだけ効率よく運用させたとしても、一晩ぐらいではどうやっても取りこぼしが出てきてしまうのだ。
まぁ。それはそれとして、置いておくとしよう。今は、いかにして入口を見つけるかの方が重要だ。目標となる様な物質や物体がないということは、それだけで十分探しづらいことを示している。しかしそれでも、俺は結構楽しんでいた。何と言っても、この惑星に不時着して以来、初めてといっていい探索なのだ。探索自体は不時着直後に行ってはいるものの、それはあくまでも現状の把握が優先された事柄でしかない。今回の様に、何ら切羽詰まった状況にない。それこそただ純粋に探索を行う様な状態では、初めてなのだ。
「ふんふん♪ 何かあるかな♪ 何があるかな!?」
無意識に拍子を付けながら探索していたわけだが、残念ながら見付けることは出来なかった。これはアーレも同じであったが、そのことが手詰まりとなったことを示すものではない。確かに俺とアーレが見つけることは叶わなかったが、怪しい場所に関してはちゃんと見つけているのだ。果たしてどうやって見付けたのかというと、それはD・S改である。流石は、シュネの作り出した装備だと言えた。
「ここ、か」
視覚的には、全く何もない場所である。試しに反応がある辺りに手を差し出すも、何も感触はない。本当に何かあるのか疑問に思うが、D・S改が反応している以上、何かがあることは間違いなかった。しかしながら、見えない上に感触がない理由も分からない。先に述べた様に光学迷彩ならば、見えていなくても視覚的に捕らえられないだけでしかないので、触ることは出来る筈なのだ。しかしながら、見えない上に触れられないとなると光学迷彩とは違う別の何かが働いているということになる。それが何であるのか、もしくは原因が何であるのかが分からなければどうすることもできない。もしこの場にいるのが、俺ではなくシュネやセレンや俊であれば話は別かも知れなかった。シュネは言うまでもなく地球にいた頃に若くして幾つかの博士号を持ち、かつ天才の名を冠していた。セレンや俊にしてもシュネからの薫陶を受けたこともあって、かなり頭がいい。もし地球で披露する機会があれば、間違いなくシュネと同様に持て囃されることになるだろう。だが、現実としてここにいるのは、先に挙げた三人に頭ではおよばない俺なのだ。一応にでも、シュネから教えられたこともあって俺、自身も一般的な評価からすれば上位に見られるとは思う。しかし、セレンや俊はさらに上であり、シュネに至っては次元が違うと評していいぐらいの存在だ。有り体に言えば、比べるのも烏滸がましいというやつになるだろう……ん?
「あれ? 今、何か引っかかった気がする……えーっと……」
何だ?
俺は、何に引っ掛かりを覚えた? シュネが天才だというのは……違う。そんなことに、今さら引っ掛かりなど覚えるわけがない。また、セレンや俊はかなり地頭がいいともまた違う。こちらに関しても、今さらなことでしかないからだ。そして、俺が三人には及ばない。というのも、言わずもがなである。そうなると……あ!
「そうか! 次元だ!! シエ!」
『シークヴァルド様。いかがなされましたか?」
「センサーが集めた情報から、シミュレートしてみてくれ。その結果から、推論でもかまない。結論を出してくれ」
『暫しお待ちください』
シエはツヴァイに搭載されているコンピューターなので、火器管制や機体の制御などが得意分野である。つまり命令したシミュレートなどが、あまり得意なことではないことは分かっている。だら、それでも現状ではシエを頼るしかない。前述した様に、シュネもセレンも俊もいないのだ。
思いのほか時間が掛かっていると感じてしまうのは、待っているせいか。それとも、別の理由があるからか。などと考えて時、ふと時間を確認したが、自分が感じているほど時間は進んでいない。どうも俺は、焦っているのかも知れない。だが、焦ったところで始まらないので、ここは深呼吸でもして落ち着くことにした。
深呼吸する為に早速にでも息を吸い込んだその矢先、突然通信が入ってくる。まさかのタイミングであったからか、俺は思わずむせてしまった。その直後にシエからの報告があったわけだが、むせている俺には返答する余裕はない。それから少しの間せき込んだあとで、漸く落ち着けることが出来たのであった。
「あー。苦しかった」
『大丈夫でしたか』
「ああ。大丈夫だ。それよりもシエ、通信の理由だが終わったのか?」
『はい。今より送ります』
シエがそう前置きした直後、シミュレートした結果が通信される。果たしてその情報だが、俺の考えを後押しするものだった。その考えだが、隠蔽する為に次元をずらしているのではないかというものである。入口が確実にある筈なのに今はない、そんな矛盾を解決できるのではないかと考えてシミュレートをシエに行って貰ったというわけだ。しかしながら、結論が出ても解決方法がなければ話にならない。しかしながらシエからの通信には、現状の解決に繋がる事柄も記されていた。記されていた情報から推察すると、鍵となるのは魔力である。デュエルテクターのセンサーも、確かに魔力の痕跡を捉えている。事実、今でもデュエルテクターのセンサーには魔力の反応が出ているのだ。しかし、魔力があっても、魔力が発生している原因が分からなければ手が打てないことは前述した通りであった。
「えーっと……魔術陣だと?」
『はい。確証があるとまでは言いませんが、魔術陣によって次元をずらされているのではないかと思われます』
なるほど。
つまり、センサーが反応する理由は、魔術陣が働いていることで発生している魔力にということとなるわけだ。何か、こう考えてみると、魔力って万能だな。尽きるかどうか分からない上に、ほぼ恒常的に存在しているエネルギー。ある意味では、夢のエネルギー源泉だと言えた。
まぁ、今はエネルギー云々ついては置いておくとして、一まずはシエのシミュレートを検証してみることにした。まずは、魔術陣の有無となる。そもそもからして、この魔術陣の存在がなければ話そのものが意味をなさなくなってしまう。そうなれば、別にシミュレートでもするしかない。どちらの結末であったのか結論を出す為にも、何より地下にある何かを探索する為にも魔術陣の確認は必須なのだ。
「魔術陣……魔術陣…………あ!」
暫く周囲を探索し続けた結果、漸く俺とアーレは魔術陣と思わしき痕跡を見つけることに成功したのであった。
ご一読いただき、ありがとうございました。
別連載「劉逞記」
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