第百九十話~踏査~
第百九十話~踏査~
アテイ男爵領の領都にあるギルドで解体依頼した熊二頭分を受け取ると、もうこの領都には用がない。キュラシエ・ツヴァイを隠してある森に向かい夜まで待ったあと、次の目的地へ向けての移動を開始するのであった。
夜もふけたので、ツヴァイに乗り込むと次の目的地へ向けて離陸する。俺たちが向かう目的地は、ドルイア王国南部における最大領地を有するカルク辺境伯領だ。一応、アテイ男爵領とカルク辺境伯爵領との間には、女性が当主を務めているメルゲ子爵領がある。だが、別に子爵領に寄る理由もないので無視したのだ。
アテイ男爵領から入ったメルゲ子爵領の上空をすっ飛ばして飛行すること暫く、ここまで飛行すればもう辺境伯爵領地内に入っていることは間違いない筈だ。そこで俺は、ツヴァイを駐機する場所を探すことにした。ドローンを複数機飛ばして、地形などの情報を集めることにする。そして情報収集する間、飛行を続けていても問題はないのだが、落ち着く意味もあって着陸することにする。今いる地域は、カルク辺境伯爵領とメルゲ子爵領の境界線上に近い。その様な理由も手伝ってか、この辺りに人気があるようには感じられなかった。
最も、街道沿いの地域を飛行しているのならば、また違ったのかもしれない。しかしながら俺は、街道近くなどを飛行していない。しかも現在は夜中であるし、まず見つからないとは思っていた。
ともあれ、搭載されているレーダーをも駆使して周囲を探りつつ、ツヴァイの着陸地点を探していく。すると、ここからそれほど離れていない場所にさほど大きくはないものの草原があることが分かった。但し、大きくはないと言っても、ツヴァイを着陸させるには十分な広さを持っている。そこで俺は、その見つかった草原までツヴァイを飛行させてから、着陸態勢に入った。この惑星に不時着して以来、何度も行っている作業なので、失敗することなどまずない。事実、何の問題が発生することもなく、無事にツヴァイを着陸させていた。その後、コックピットから降りた俺は、ドローンが帰ってくるのを眠りながら待つことに決める。勿論、結界を張って魔物や野生動物の襲撃に対する備えはしてある。だから問題など発生することもない、というわけであった。
「シエ、あとは頼んだ」
『お任せください』
シエからの返答を聞いたあと、おれは寝袋を取り出して眠りについたのである。明けて翌日、目を覚ました俺のすぐ近くでアーレがお座りしている。同時に、何か言いたげな雰囲気も感じられた。勿論、アーレは言葉など喋ることなど出来ないので、俺がそう感じただけである。それはそれとして、アーレの言いたいことは何だろうと考えてよく見たその時、俺の腹がなる。そこで俺は、昨日の夜食を抜いていたことに気付いた。それは即ち、アーレも夜食を抜いていたことと同じでもある。つまりアーレは、俺同様に腹が減っているということになるわけだ。
「悪いな、アーレ。すぐに出す」
「ガゥ」
返事をする辺り、俺の言葉を理解している可能性はたかいなどと思いつつ、アーレの食事を用意した。因みにアーレの朝食用にと取り出した肉は昨日、ギルドで解体してもらったばかりの熊肉である。その熊肉を与えると、嬉しそうにかぶりついていた。その姿を見ながら、自分の朝食を用意する。間もなく出来上がったので、アーレ用の器に水を継ぎ足してから俺も朝食を食べ始めた。程なくして食べ終えたので、アーレの分も併せて使用した器の片付けを始める。魔術で水を出して使った食器などを洗ってあと、熱風で乾かしてからマジックバックへ片付けたのであった。
「さて、情報見せてもらうぞ」
「はい」
一旦、コックピットに乗り込んでからドローンが昨日集めた情報を見る。やがて俺は、集めた情報からあることに気付く。その情報とは、ここから程度距離はあるが、大きいとは言えないが山並みがあることだ。辺境伯爵領でもさらに辺境の地域にあるその小さな山並みだが、都合のいいことに周囲に村どころか集落すら見当たらない。もう少し詳しく情報を集めてみないことには正確なことは言えないが、地理的な観点からも人の気配は少ないように思えた。有り体に言ってしまえば、物凄く不便な場所にある山並みなのである。人の気配がないのも、当然であった。
「ふーん。ツヴァイを隠すには、いいかもしれないな。取りあえず、向かってみるか」
一まず、方針を決めた俺は、ツヴァイを離陸させる。一応それなりの距離はあるのだが、完調ではないとはいえ五百キロメートルの速度は優に叩き出せるツヴァイからしてみれば、それこそ問題となる距離ではない。大した時間を掛けることもなく、無事に現地へ到着していた。すると、確かに山並みがある。俺がこの惑星に不時着した場所にあった山並みに比べれば遥かに小さいが、それでも山並みは山並みである。ツヴァイを隠すには、十分だし打ってつけであった。あとはどうやって隠すかだが、正直に言ってまだ考えてなかった。そこで俺は、取りあえず山並みの辺りを調べてみることにする。一まず、ドローンを放出してよさそうな場所を探し始めた。同時に俺自身も、ツヴァイで周辺を飛行してレーダーや目視などで探したのである。とは言うものの、そう簡単に見つかる筈もなかった。
ツヴァイを隠す為の理想を挙げるとすれば、やはり壁に穴だろうと思う。しかし、そんな優良物件が簡単に見つかるかと言われると難しいと言わざるを得ないだろう。そしてもし見つからなかった場合、手持ちの武装を使って作るというのも手段だと考えていた。まぁ、見つかりすればそれでいい。しかし、どの様な結果が出るか。それは、神のみぞ知るところだろう。
途中で食事を挟みながら探したわけだが、残念なことにこれという場所を見付けることはできなかった。まだ一日目だから、仕方がないのかも知れない。そう考えてさらにもう少し時間を掛けて探したのだが、これが功を奏した。ついに、かなり条件が合致したいい場所が見つかったのである。それは、山並みの中にある小さく開けた盆地状の場所となる。地面は草に覆われていて、海抜こそ高くはないけれど、まるで高原を連想する様な場所だった。せっかく見つかったのだから、確認しないなどあり得ない。取りあえず候補地へ、ツヴァイを向かわせた。すぐに到着したその場所は、情報通り開けていて、地形的にはすり鉢状になっていた場所であった。
「これって、もしかして昔の噴火口とかか?」
「その可能性は高いかと判断します」
「それって、噴火の危険はないのか?」
「もう少し調べてみねば何とも言えませんので、早速調べてみましょう」
どうやってやるのかと思えば、シエがツヴァイのセンサーを使って調べ始めていた。それなら邪魔する必要はないと思い、俺はツヴァイから降りることに決める。コックピットのハッチを開けて機体の外へ飛び出すと同時に、デュエルテクターを纏う。すぐにスラスターを働かせると、地上へと降り立った。その俺のあとを追う様に、アーレが地上に降りてきていた。
問題なく地面へ降りると、周囲に視線を巡らせる。しかしながら、見ただけでわかる筈もない。俺は火山を専攻している学生でも、ましてや火山学者でもないのだ。
「これだったら、フィルリーアで鉱山を探している時に使った探索機器をマジックバックに入れておけばよかった」
とは言うもの、結果論でしかない。フィルリーアでは宇宙へ出る為の船を作成するという理由が初めからあったが、今回に限って言えば完全な事故でしかない。だからこそ鉱物探索用の機器など、持ち合わせている筈もないのだ。そこまで先が読めるなら、完全に予知能力者だと言っていいだろう。だが、もし俺が予知能力者だったのならば、そもそも今回の出来事に巻き込まれている筈もない。つまり、考えるだけ無意味でしかないのである。俺は頭を振ってとりとめもない考えを頭ら追い出すと、スラスターを使って高原の端まで移動。そこは崖になっていて、手を加えるにはちょうどいいのではと思えた。
「この崖に穴を穿って、ツヴァイが収容出来るだけの大きさを持つハンガーを作るのもいいな。この場所に危険がなければ、だけれど……これは、シエの調査待ちだからな」
俺はそう結論付けると、取りあえずシエの調査が終わるまでの間は、この場所で待機することに決めたのであった。
別連載「劉逞記」
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