第百七十九話~乱入~
第百七十九話~乱入~
この惑星に降り立ってからギルドでの初仕事となる薬草集めを達成させる為、事前の情報集めを行う。幸いなことに薬草について記された本を借りることができたので情報を得るとともに、借りた本のデーター化をシエへ頼んでおくのであった。
宿について間もなく、シエから連絡が入ってきた。こちらから連絡を入れようと思っていたところだったので、正にナイスタイミングである。すぐに応答したあとでシエから聞かされた内容は、頼んでいた電子データー化が終了したという知らせだった。思いのほか早くできたことに少し驚きながらも俺は、出来栄えを確認する為に閲覧してみる。すると、使い勝手は悪くない。検索も行いやすく整理されているので、探しやすくなっていた。そのデーターから、俺は一つ呼び出す。それは、依頼の薬草について記されたデーターだった。
「……うん。これならわかる。あとは、実際に探してみるしかないな」
この手の探索は、フィルリーアにいた頃にも行っている。その意味で言えば、俺は採取に対してのノウハウを、既に持っていることとなるのだ。ある程度、時間は経っているので、やり方を思い出すまで少し時間が掛かるかもしれない。それでも、全く知らないよりはまだましだということは間違いなかった。
取りあえず把握できたのでデーターの閲覧を中止した俺は、アーレとスキンシップを行う。まだ子供だということもあって、体はうぶ毛の方が多い。それだけに、とても手触りが気持ちいい。その間に俺は、アーレの食事もかねた肉を与える。すると、嬉しそうに啄んでいる。やがて眠気に誘われたのか、アーレがうつらうつらし始める。そこで俺も、眠ることにしたのだった。
明けて翌日、既に起きていたアーレへ肉を与える。嬉しそうに食べているアーレを部屋に残して、一階の食堂兼酒場へと向かった。この時間は、宿泊している客専用となっているのだ。その食堂で朝食を取りつつ、食堂内に視線を巡らせる。すると俺と同じ様な宿泊客が、やはり俺と同じように朝食を取っていた。その様な宿泊客を見つつ朝食を終わらせると、借りている部屋に戻り片付ける。そして宿を引き払うと、薬草を探しに出発したのであった。
入口で、村へ入るときに世話になった……えっと……そうだ! ダイアだ、ダイア!! 門番ことダイアの名前を思い出した俺は、彼へ軽く挨拶をしてから、アカト村を出る。それから手に入れた情報を元にして、薬草を探して歩く。しかし、思ったほど見つかることはない。だが、考えてみれば当然かも知れない。薬草の採取に関しては、常設の依頼となっている。しかも、制限などはない。つまり、誰でも受注できる依頼なのだ。今までそれこそ、何人も依頼をこなしてきたのだろう。その上、今現在に至ってもその動きには変わりがないと考えて差支えはない筈だ。その点を考慮すれば、少数であればまだしも村に近い場所で大量に見つけることなどそれこそ不可能に近いと言っていい。事実、いまだに少ない数しか採取できていないことが証明していた。
「ふむ。日銭を稼ぐのが精一杯、いや。もしかしたら日銭も稼げないかも知れないな。懐具合に余裕はあるが、手持ちが多いに越したことはないからな」
俺は周囲を見回して人気がないことを確認すると、デュエルテクターを身に着ける。それからアーレを抱えると、キュラシエ・ツヴァイを着陸させてある森へと向かうことにした。あの森はツヴァイを隠す為に選んだくらい、かなり深そうな森である。だからこそ、薬草もまだ沢山がある可能が高い。そう判断した俺は、隠してあるツヴァイの元へ向かうのであった。
恙なくツヴァイの隠し場所に到着した俺は、周囲に展開させている結界を解く。同時にツヴァイへ、ステルス機能を働かせておくように通信を入れておいた。間もなく準備が整ったとの通信が入ると結界を解く。しかしながらステルス機能を働かせているので、ツヴァイの姿は見えない。そのことに頷くと、再度結界を展開する。完全に結界が機能すると、ツヴァイの姿が現れたのであった。
「シエ、どうだった? 近くに人が来たとか、動物や魔物が結界に手を出したとかいった様ことはなかったか?」
「ありません」
間髪入れずに返答してきたことから、本当に問題などはなかったのだろう。そう考えた俺は、ツヴァイにあることを頼む。その頼みとは、近くにある薬草を探索することだ。一々自分の目と耳と足で探すより、ツヴァイのセンサーで探したほうが効率いいし何より早い。折角の道具、使わない方がもったいないのだ。
ともあれシエに頼んで、ツヴァイの周辺……とは言ってもそれなりに広い範囲をサーチしてもらう。すると、中々の数の薬草が自生しているのを発見できた。しかも、手に入り易い薬草ばかりではなく、珍しい薬草も数こそ少ないものの見付けることができていた。ツヴァイを隠したこの森だが、深いだけでなく人里からも距離がある。俺はスラスターを使うことで時間を短縮しているので足を伸ばせているが、自分の足でとなるとかなりの距離を踏破することになる。少なくとも、一日や二日で到着できないだけの距離はあるのだ。とは言うものの、これで闇雲に歩き回るより探しやすくなったことは事実である。その上、方向と場所については、デュエルテクターと魔道具である腕輪とリンクさせているので、ヘルメット内にHUDとして映し出しているのだ。それにたとえヘルメットを外したとしても、腕輪の機能で空間投影もできる。どちらにしても、薬草を探す手助けとしては十分な機能なのだ。
「よし。見つけに行くとしよう」
「お気をつけて」
俺はツヴァイに対して親指を一本立ててから、スラスターを使って森の上空に出た。そこから、HUDに映し出されているポイント近くへ移動すると着地する。直接、映し出されたポイントに降なかったのは、踏むなりスラスターのから排出で薬草を駄目にしてしまうかもしれないと考えたからだ。それに幾らかポイントがずれていたとしても、座標は既に分かっている。薬草を探すのが、そう難しいとは思えなかった。その後、HUDに映し出されている反応と座標を頼りに探したのだが、思いのほか短時間で見つけることができる。早速、薬草の採集を始めたが、ポイントで見つけた薬草の全てを採取してはいない。別に、全滅させたいわけでもないからだ。ある程度の数を確保すると、俺はHDUに表示されている別のポイントへ移動すると、そこで薬草の採取を行っていく。採取した薬草は大抵の人物なら知っているだろうという、いわゆるメジャーな物が一番多い。だが、珍しい薬草もある程度は確保しておいた。やがて大体の数を採取し終えると、一度ツヴァイとシエの様子を確認しに戻る。程なくして到着したが、機体の周囲に展開している結界も、ツヴァイとコンピューターのシエも何ら問題は発生していない。そのことに安堵すると、再度結界を展開してツヴァイを隠したあとでこの場から離れたのであった。
薬草の採取を終えてアカト村へと戻る道すがら、俺はある出来ごとに遭遇した。それというのも、ある反応が表示されたからである。果たしてその表示だが、ある狭い範囲に複数の光点が集まっているというものだった。そのことに俺は、違和感を覚える。これが街道であるならば、まだ分からなくもない。しかし反応が出ているのは、ツヴァイを隠してある森とアカト村の間なのだ。当たり前だが、ツヴァイを隠している森へ繋がるような道など存在していない。そもそもアカト村には、南北の二か所しか門に当たる入口はないのだ。南側の門は少し前までいた開拓村へと繋がっている。そしてもう一つある北側の門は、アカト村を含めてこの辺りを治めている男爵の領都へ向かう為のものだ。だから、反応のある光点は旅人などではないと考えていい。無論、可能性としてはなくもないのだろうが、まず有り得ないと思ってよかった。
「行ってみるか。どうせ、大した距離でもない」
俺はデュエルテクターのスラスターを使って、反応が出ている場所へ向かってみる。やがて俺が視認できる距離まで近づいてみると、そこでは戦いが起きていた。見た目からしてゴブリンと思える魔物が九体くらい、跳梁している。しかもそのうちの一体は、他のゴブリンと一線を画しているように見えた。多分だが、ゴブリンリーダーとかそういった類の魔物なのだろう。そのゴブリンの集団に取り囲まれる様にして、三名ほど戦っている。しかしてその戦況は、明らかに数の少ない方が劣勢である。遠からず、負けてしまうことは間違いないと思えた。
「……気付いていなかったらスルーしてもよかったんだが、こうして気付いているしなぁ」
このまま、見て見ぬふりをするなど寝覚めが悪くなる。それに、ここからアカト村はそう離れているわけでもない。このままゴブリンが生き残ってしまうと、アカト村が襲われる可能性は決して低くはない様に思えた。
「こうなると、自ずと答えは出てくるな」
俺は一言呟くと、スラスターの最高速度で戦場へ近づく。そしてそのまま、戦闘へ乱入したのであった。
別連載「劉逞記」
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