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第百五十一話~探求 十一~


第百五十一話~探求 十一~



 俺たちが見つけた人工天体を司るマザーコンピューターに、ネルトゥースが移動。これにより人工天体がネルトゥースの支配下となり、俺たちの旗下へと完全に入ったのであった。





 さて、話を俺の回想から現代に戻すとしよう。

 ネルトゥースがお引越しと言う名の事実上の乗っ取りを行ったマザーコンピューターが鎮座するマザーセンターにある一室へと俺たちは集合したわけだが、そもそも集めたのはシュネと俊とセレンであった。


「それで、俺たちを呼び出した理由はなんだ?」

「実はね、ラキケマを動かしたいのよ」


 シュネから出た言葉に、俺たちは少し驚いた。このラキケマが自力で移動できることは、全員が知っている。そもそも、機動要塞として建造されているのだから動かせるのは当然なのだ。とは言うものの、すぐにラキケマを動かそうという理由が分からない。現状、総点検中の最中さいちゅうなのだから、ここで慌てて動かす必要もないように思える。その点を疑問に感じたので尋ねてみたのだが、今すぐにでも動かさないといけない理由がしっかりと存在していた。その理由はと言うと、何と物資の不足となる。より厳密に言うと、生活物資ではなくラキケマの整備等に必要な原材料の枯渇らしい。無論、今すぐに枯渇してしまうといったわけではないのだが、遠からず整備に必要となる物資の不足におちいってしまうという。だからその様な事態となる前に、ラキケマを移動させておきたいということであった。


「そういった理由なら、仕方ないか……それで移動はいいが、大丈夫なのか?」

「シーグ。大丈夫とは?」

「それは、ラキケマの現在の状態とか、移動先の座標とかだよ」


 何せ俺たちは、前にいた銀河から最短の航路で現在の座標まで移動している。つまり、いまいる銀河の星図など持ち合わせていないのだ。生活物資などは移動前に準備して揃えていたからまだ余裕があるので、今いる銀河に存在している貿易等が可能な惑星にも移動していない。それゆえに俺たちはこの銀河の星図などは、手に入れていなかったのだ。


「大丈夫よ。古いとはいえ、今いる銀河の星図はあったもの。その星図を元に時間経過による星の動きをシミュレーションしたから、問題はない……筈よ」

「え? あったのか、星図」

「ええ。マザーコンピューターのメモリーにね」


 どうやら、ラキケマが建造された当時の星図がメモリーにあったらしい。その星図のデーターを元にして時間経過を計算に入れた上でシミュレーションした最新版の星図……但し予測でしかない……があるとのことだ。もっとも、シミュレーションはシミュレーションでしかない。実際には、どうなっているか分からない。だからその点を指摘すると、銀河内を観測して差異はほぼないことは確認しているとのことであり、流石はシュネだと感心してしまう。するとその時、クルドが口を開いたのだった。


「それなら、ラキケマを建造した文明がある惑星も分かるんじゃないのか?」

『……あ!』


 確かに、クルドの言う通りだ。星図にほぼ狂いがないというのなら、ラキケマが建造された惑星も分かるということになる。だが、クルドの指摘を受けたシュネは勿論だが、俊やセレンも悲しげな表情を浮かべている。その理由が分からずに俺たちは、首を傾げてしまう。それから暫くの間、沈黙が流れる。やがて、セレンが表情はそのままにある事実を口にしたのだ。


「建造された惑星だけど、存在していなかったのよ」

「セレン。それは、どういう意味だ?」

「クルド、そのままの意味よ。もう、存在していなかったのよ」


 あまり感情が籠っていない声色で、セレンがそう告げてきたのだった。 



 ラキケマを移動する根拠として、ラキケマに記録されていた過去の星図からシミュレーションを行うことで作成された新たな星図。そこには、ラキケマを建造した惑星の位置も当然だが記されている。そのことをクルドが指摘したのだが、返ってきた答えだが惑星は既に存在していないというものだった。

 セレンの答えに、何となくだが事情を察する。多分だが戦争の結果、文明のあった惑星が滅ぼされたということなのだと。


「それはやっぱり、ラキケマが原因なのか?」


 その事実を確認するように、祐樹がセレンに尋ねるも、彼女は首を振るだけだった。そこで俊にも視線を向けたが、やはり俊もセレンと同様に首を横に振るだけでしかない。最後の希望とばかりに祐樹はシュネにも視線を向けていたが、彼女は肩を竦めるだけである。その仕草から、シュネたちでも正確なところは分かっていないのだろうということが推察できた。もっとも俺としては、何となくだが予測がつけている。あくまで想像の範疇はんちゅうでしかないのだが、時間の経過が全ての答えなのだと思う。何せラキケマは長い間、眠りについていたと言っていい。そのいわば休眠期の間に起きたできごとについては、把握できていないのだろう。ラキケマの心臓部である炉すらも最低限の稼働に押し留めて、事実上の休眠状態となっていたのだ。その間に起きた事象についてまで、知り得ることは不可能と言っていい。しかも休眠状態にあることから、新たに情報を得ることも難しい。ゆえにラキケマも、自身を作り上げた文明の現状について分からないということになる。そしてラキケマに分からないのであれば、この伴銀河に住む生命からしてみれば異邦人でしかない俺たちが分かるわけがないのだ。

 もっとも、この銀河内に存在が判明している星系間航行を実現できている惑星にまで赴いて調べてみれば、もしかしたら当時のことも分かるだろう。だが、そこまでしてかつて存在したらしい惑星……と言うか文明について必要があるようには思えない。だが、これはあくまで俺の考えでしかない。もし仲間の誰かが調べたと思うのなら、別に止める気もない。そこでその点を聞いてみようとも思ったのだが、俺が口を開く前に俊に先を越されていた。


「どうする? 祐樹。何だったら、調べてみるか?」

「……そうだなぁ。気になった程度だけど、調べてみるかな?」


 おおう。

どうやら祐樹は、調べる気になっていたようだ。ならば、情報収集は祐樹に任せてしまおう。そちらはそれでいいとして、話を本来の道筋に戻すとしよう。そもそも俺たちは、ラキケマを現在の場所から移動させることについて召集が掛けられていたのだ。こののちに祐樹が上布収集へ動くとして、移動先は伝えておく必要があるからな。


「それなら、そちらに関しては祐樹に任せる。じゃあ話を戻すが、ラキケマの移動に関してはどうする?」

「さっきも言ったように、問題はないわよ」

「そうか。それでシュネ、移動先だけどどこになる?」

「ここよ」


 そう言いながらシュネは、モニター上に俺たちが今いる伴銀河の星図を映し出す。どうやら、これが先ほどまでの話に出てきたシミュレートしたという星図なのだろう。その星図にだが、二つの光点が記されている。一つは、俺たちと言うかラキケマが鎮座している座標だろう。そしてもう一つだが、状況から考えるに移動先だと思う。果たしてその移動先だが、それほど離れてはいない。伴銀河の辺境という意味では同じなのだか、距離としては一万光年ぐらいだろうか。


「それで、どうしてそこ何だ?」

「それは簡単、資源となる小惑星やら衛星とかが、すぐ近くに集まっているからよ」


 そういえば、ラキケマを移動させたい理由は物資……というか原材料の枯渇を想定してだよな。どうやらシュネというか、この場合はシュネと俊とセレン。それから、マザーコンピューターへお引越ししたネルトゥースの判断によるものなのだろう。整備を行う上で必要な物資を調達する為に、小惑星や衛星を資源の材料にしてしまおうという考えなのだ。何と言ってもラキマケは、下手に準惑星級の大きさを持っている。そんなラキケマを総整備しようとすれば、かなりの物資が必要になるのは今さらだと言えた。当然ながら必要となる物資を揃えようとするならば、かなりの出費を強いられることになる。だが、自前で調達して揃えるなら話は別なのだ。そしてそれだけのことが、ラキケマにならばできる。小惑星や衛星というある意味での資源から精錬して物資にすることができるだけのプラントを、自前で揃えているからだ。なお、他にも幾多のプラントがある。その為、ラキケマでは、原材料さえ調達できれば小物や食料から宇宙船……それこそ戦艦や空母まで作り出すことが可能なのだ。カテゴリー的には機動要塞となっているが、実際は一つの国家クラスにも比肩しうるくらいの規模を持っているのである……そりゃ、存在が敵にばれれば、警戒されて攻撃されるわな。


「そう言った理由か。それで移動方法だけど、どうやるんだ? その辺りは、まだ聞いていなかったよな」

「その方法だけれど、ワープよ」

「え? この大きさを持つ存在なのに、ワープができるのか!?」

「それが、できるのよ。しかも何気なにげに、カズサより性能がいいのよね。そのことが分かった時、少し悔しかったわ」


 えっと……マジか! マジで、カズサより性能がいいのか。色々いろいろと改修やらなにやらをシュネと俊とセレンが中心となって行っている関係から、俺たちの艦隊では旗艦ということもあってカズサの性能が一番いい。確かに艦齢で言えば、工作艦や工作艦と同時に建艦した大型駆逐艦の方が艦齢は若いだろう。しかし船の性能という意味では、間違いなくカズサが一番いいのだ。そのカズサよりも性能がいいのか……しかもラキケマは、かなり昔に建造されている。それであるにも関わらず性能がカズサよりいいとは。うゎあ。俺も今さらながら興味出てきたな。ラキケマを作り上げた文明とやらに。


「もっとも、俺やセレンの場合は、悔しさより驚きしか感じなかったけど」

「ええ、そうね」


 どうやらシュネと違い、俊とセレンは驚きの方が大きかった様だ。多分だけど、俺と同じ気持ちだったんじゃないか?


「それで、シュネ。どれぐらい性能がいいんだ?」

「まだ整備の途中だから、完全に把握できていないわ。だけどワープの距離については分かっている。大体だけれどもシーグ、カズサの三倍は確実にワープできるのよ。しかも、あくまで最低限に見てだから。実際は、もっと長い距離をワープできるのでしょうね」

『……はい!?』


 かなり昔に建造されたはずであるにも関わらず想像の斜め上を行く性能の良さに、俺だけじゃなく既に性能について知っているだろうセレンと俊を除くみんなも、一様に驚きの声を上げていたのであった。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n8740hc/

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。



ご一読いただき、ありがとうございました。

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