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第百四十八話~探求 八~


第百四十八話~探求 八~



 シュネが発見した人工天体だが、過去は兎も角として現状においては誰かの所有物というわけではないようである。それならば俺たちが入手できないかと、みんなに告げてみたのであった。





 シュネに、いやシュネだけでなく、仲間全員に対して、俺はこの人工天体を手に入れることはできないかと提案してみたわけだ。まだ話を聞く限りでしかないが、それでも現状だと人工天体には所有権というものが完全にない状況だと感じられる。そして、その様な事態に対して、人工天体のマザーコンピューターにも事前の想定がされてはいないようだ。あまりにも想定外であったことが原因だと思われるが。ともあれ人工天体の所有者と呼べる存在がなく、しかも人工天体に残っていた最後のクルーとなる技術者によって、伴銀河のしかも辺境ともいえるこの地にてただ静止していただけという状況。しかも、人工天体はただ静止していただけでもない。およそ想定される様々さまざまな感知から、逃れられるようにとの処置までされていたというのだから徹底している。これが技術によるものか、それともマザーコンピューターの手によるものかはわからないけど……って、あれ? 考えてみて気が付いたんだが、感知から逃れることができる……だと?


「ちょ、ちょっと待て! シュネ」

「何かしら、シーグ」

「今、人工天体は感知から逃れることができるって、そう言ったよな。それならシュネ、お前はどうやってこの人工天体を見付けたんだ?」

『……あっ!?』


 シュネに対して問い掛けた内容を聞いて、祐樹たちが揃って声を上げていた。しかしながら、俺が尋ねたシュネに驚いた様な雰囲気はない。しかもシュネだけではなく、俊とセレンにも驚いたような雰囲気はなかった。それは即ち、シュネと俊とセレンの三人は見つけられない筈だった人工天体を見付けることができた理由を知っているということになる。とは言え、今は脇にでも置いておくとしようかね。まず現状で知りたいのは、どうやって人工天体の存在を感知したのかということだ。その点を改めて尋ねてみたのだが、何とシュネから意外そうなそれでいて呆れているかのような表情を浮かべられてしまったのである。何ゆえに、そんな表情をしているのだろう。


「シーグ。わたくし、言った筈よね。かつてオニシムの本拠地を調べた際に、本拠地の持つ能力で見付けることができたって」

「え……っとぉ。効いた……じゃない。聞いたような、聞かなかったような……」


 うん。確かに、どこかで聞いたような気がしないでもない。だが、俺の記憶には殆どないので、そう答えた上で気まずさから視線をみんなへ向けていた。しかし、緯線を向けたオルとキャスの兄妹は無論のこと、祐樹たちも首を振っている。その仕草から考えるに、彼らも俺と同様か若しくは俺以上に覚えがないと判断できるわけだ。やっぱり、俺が忘れたわけじゃないと思いかけた時、視界にクルドと舞華の姿が映る。すると二人は、何とシュネの言葉を聞いて頷いていたのだ。つまりそれは、俺とは違って心当たりがあるということなのであろうか。そんなことはないと、そう思うのだけど……


「そうね。言っていたわね」

「俺も、どことなく覚えが……」


 しかし、現実は無常であった。

舞華はしっかりと、そしてクルドはやや頼りなげではあるという差はあるものの、二人とも肯定という意味では同じような返事と態度を取っている。もしこの態度が一人だけというなら、シュネの思い違いだと俺も言っていたかも知れない。だが、クルドの方がいささか頼りないが、それでも二人ともが肯定している。そうであるとするならば、二人の思い過ごしとも思えない。だとすると、やはり俺が忘れているということになるんだよなぁ。


「うーん。舞華とクルドの二人が聞いたというのなら言ったんだろうな。すまないシュネ。悪いけど、どうにも思い出せない」

「……ふぅ。まぁ、いいわ。今度からはちゃんと覚えていてね」

「できるだけ善処する。本当にごめん」

「できるだけじゃなくて、しっかりと善処してよね!」

「り、了解しました」


 雰囲気からシュネが怒っていると感じ取った俺は、敬礼付きで返答する。そうでもしておかないと、彼女の怒りが当分の間、解けないようなそんな気がしたからだ。ともあれシュネは、俺の返事に一応でも納得したらしい。その証拠というわけでもないのだろうが、彼女が纏っていた雰囲気が少しだが柔らかくなったように感じられる。そのことに俺は、内心でほっと安堵していたのだった。



 さて、改めてシュネから聞いた話では、この人工惑星だが科学的にも魔術的にも隠されていたらしい。その意味で言うと、俺たちの艦隊やオニシムの本拠地や今いる伴銀河を引き付けている以前いた銀河の東西南北の領域に存在した拠点と同じと考えていいとのことである。ただ、違う点があるとすれば、俺たちの艦隊やオニシムの拠点よりもより性能が高度となるそうだ……って、それはよく見付けられたものだなと余計に思うのだが、それはどうなのだろうな。そこで俺がその疑問点を指摘してみると、シュネは小さく微笑みながら答えてくれたのだ。


「それは、逆に高度であったからこそ見付けられたのよ。ね? 二人とも」

『ああ(ええ)』


 言葉の最後で、シュネは俊と舞華へ声を掛ける。すると二人は、頷きながら肯定したのだ。しかし、そうなると、逆に分からなくなる。人工惑星のステルス技術が俺たちの知る技術よりも高度だったから見付けられたとは、一体どういうことなのだろう。その点はみんなも同じだったらしく、俊とセレンを除く仲間もよく似た不思議そうな表情を浮かべていた。だが、それも仕方がないだろう。この場合、観測……と言っていいかは分からないが、兎にも角にも観測した相手の方が技術的にも上であるにも関わらず、その技術が上だから見付けられたというのは本当に理解に苦しむ。これじゃ、まるで謎々なぞなぞだな。


「なぁ、結局のところ、どんな意味なんだよ」

「……そうね。いつまでも話を先に進めないというのもいただけないわね」

「そうね」


 少し苛ついている声色で祐樹が問い掛けたことが分かったのだろう、シュネが少し考えたあとで話を進めようと言い始める。その言葉にセレンも同意し、そして俊も同意の声こそ出さないものの頷くことで了承の意を示していた。

 その後、シュネからの話によると、今いる人工天体を見付けたのはある意味で偶然の産物であったらしい。そもそもシュネは、オニシムの拠点における機能の把握の一環として、あえて長距離の宇宙観測を行っていたと言うのだ。その際に、観測できない領域を発見したらしい。その見付けた領域の大きさだが、言うまでもなく俺たちが今いる準惑星と同程度の規模である。こうして観測ができない領域を見付けたことでむくむくと沸いた興味のままにシュネ、いやシュネだけでなく俊とセレンも巻き込んでその見付けた観測できない領域を重点的に観測し始めたらしいのだ。しかしながら、中々なかなかに観測は遅々として進まなかったようだ。するとその現実に対してシュネは、増々ますます余計に燃えてしまったというわけである。彼女は、オニシムの本拠地が持つ性能をフル活用する勢いで観測等を徹底的に行ったのだという。まぁ、そのお陰で完全にオニシムの本拠地が持っていた性能を把握できたらしいから瓢箪から駒と言えるかも知れない。何はともあれシュネは、俊とセレンをも巻き込んで、嬉々ききとしながら観測できない領域を観測し続けたようだ。するとその執念とも言える執拗な観測が、ある意味で一つの奇跡を呼び込んだのである。何と、一瞬だけだが人工天体の観測ができたのである。そしてシュネには、その一瞬だけで十分だったようだ。たった一回、それも一瞬だけという状況を彼女は何度も再現させたらしい。しかも、判明した観測条件に合わせて、観測に使用した関連機器をチューンアップまでしたというのだからすさまじい……と言うか、ただすごいとしか言いようがなかった。


「それからずっと、観測し続けたと」

「そう言うことよ、祐樹くん」

「そして、前にいた銀河で俺たちへ告げた発見へ繋がるというわけか」

「その通りよ、シーグ」


 祐樹に続いて俺が言葉を続けると、ウィンクしながらシュネが返事をする。その様は、つやっぽいように感じられると共に、とても楽しげである。やっぱり、とても興味を惹いたのだろう。きっと、な。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n8740hc/

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。



ご一読いただき、ありがとうございました。

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