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第百四十六話~探求 六~


第百四十六話~探求 六~



 人工天体のポートから続く通路の先、そこにあったのは多数の人が利用できるかのようなビルディングの群れである。その事実に首を傾げた俺たちを尻目に、シュネが可能性という名の答えを出したのであった。





 今のまま地道に人工天体内部の調査を続けるよりは、この人工天体を制御する為のマザーコンピューターを探し出した方が効率もいいだろうという形に落ち着いた俺たち。だが、外部からの出入りですら緊急用の装置を使ってしか入れないこの状況下で、人工天体のどこに鎮座しているのかも分からない制御用のマザーコンピューターを探すなど、手間が掛かることは間違いない。しかしながらシュネは、俺たちの心配をよそに当てがあるから任せて欲しいと請け負っていた。しかも自信たっぷりに、だ。本当に大丈夫なのだろうかとは思うが、俺たちではシュネが言う当てどころかそもそも手段すら思い付いていない。このような状態では、当てがあるというシュネに任せるしかなかった。

 さて、彼女の言う当てというのが何だったのか。それは何と、俺たちが通ってきた通路にあったビルディングが立ち並ぶエリアに通じる扉を開く為に動かした操作台だったのだ。


「シュネ。その操作台が、お前の言う当てなのか?」

≪ええ。その通りよ、シーグ≫

「だけど、それってただの操作台だよな。その操作台が、どうしてお前が言う当てになるのか分からないんだが?」

≪シーグ。よく考えてみて。普通、操作台が単独で稼働などということはないのよ。ましてや、制御を統括するマザーコンピューターがあるならなおさらよ≫


 そうか! そう言うことか!

 確かに、外部の宇宙空間と繋がるポートに直結している通路の入り口を開閉する操作台が、スタンドアローン……つまり独立して稼働しているとは考えにくい。システム的にはもしかしたら単独で稼働しているなどということもあるかも知れないが、それでも稼働したかどうかのチェックぐらいはしていると思われる。そしてもし、俺が今考えた通りだとしたら、この操作台とマザーコンピューターは繋がっていることになる。その繋がりを辿れば、マザーコンピューターにまで行きつくことができるだろう。これは確かに、当てとしては十分だと言えた。あとは俺が考えた……というより、既にシュネが思いついていたわけだが。ともあれ、考えが外れないことを祈るばかりである。


≪さて、と。ファルケⅡ全機体のエネルギー、借りるわよ≫

≪シュネお姉ちゃん、どういうこと?≫

≪キャス。扉を開閉するぐらいならまだしも、ほぼエネルギーが枯渇していると思われるこの人工天体のシステムを一部でも真面まともに動かすのよ。持ち込んだバッテリー電源ぐらいじゃ、足りないわ≫


 それは……まぁ、そうだよな。

 大きさ的には、準惑星クラスはあるらしい人工天体なのだ。操作台のようにシステムの極一部を稼働させるぐらいならばまだしも、さらにより大きくシステムを動かそうとすれば、持ち込んだバッテリー程度のエネルギーで足りるわけがない。だからこそ、ファルケⅡだけとはいえ全機からのエネルギー供給をとシュネが言い出したわけか。だが、たとえファルケⅡ全機のエネルギーを回したとしても、人工天体を完全には稼働させることはできないらしい。それこそ本格的に稼働させようとするならば、人工天体にエネルギーを供給する炉を稼働させしかないそうだからな。

 ともあれ、シュネの指示通りにファルケⅡから、繋いだバイパスを経由して流入させる。そのエネルギーのお陰で、一部だけだがシステムを動かせるようになったのだ。するとシュネや俊やエレンが中心となって、ガイノイドやアンドロイドたちと共に怒濤どとうの勢いで調査を始める。そんな彼らを俺たちは、傍から見ているしかなかった。専門家ではない俺たちでは、手伝ったところで邪魔となるのは分かりきっている。そうであるからこそ、俺たちは邪魔にならないようにしているしかない。せいぜいできることがあるとすれば、それは周囲の警戒ぐらいなのだから。



 シュネたちの調査から、人工天体の内部構造がかなり判明する。しかしながら俺たちの目的は、この人工天体を統括管理していると予想できるマザーコンピューターである。それゆえに、マザーコンピューターが設置されている場所が分からなければ意味がない。他にも重要な施設もあるにはあるが、現時点では無視している。代わりにシュネたちは、マザーコンピューターがある場所の限定に邁進していたのだ。そんな彼女たちの努力が実を結び、ついにマザーコンピューターのある場所が判明する。その直後、俺たちは判明したマザーコンピューターの元へ移動を開始していた。因みにだが、システムを一部でも復帰させる為に一時的とはいえ供給したエネルギーだが、もう供給はしていない。何せこのまま下手に供給を続けていると、あるかも知れない人工天体の防衛機能が働いてしまう可能性があったからだ。俺たちは、無断で人工天体内部に入り込んでいる。それはつまり不法侵入者取られかねないので、相手から敵だと認識されたとしてもおかしくはないということになるからだ。ここでエネルギーの供給を続けて復活した防衛機能を相手するなど、まっぴらごめんである。それゆえに俺たちは、目的であるマザーコンピューターの所在が分かった時点でさっさとエネルギーの供給を中断したというわけだ。


「……それでシュネ、ここがそうだというわけか」

≪そういうことよ≫


 俺たちが行きついた場所は、人工天体の中枢だろうと思われる場所だ。ビルディングが立ち並ぶエリアを抜けたその先にその施設があり、その施設の中に分け入った俺たちは、マッピングをしながら施設内部を進んでいたというわけである。やがて辿り着いた場所、それがここ扉の前であった。さて、俺たちが入り込んだ施設だが、キュラシエやファルケⅡが入り込めるほどの大きさはない。そもそも、全高で二十メートルを超える人型兵器が入れるようになっている施設などそうはないだろう。それでも中央入り口となる玄関ホールならば、まだ無理矢理入り込めるかもしれない。しかし、施設内の通路は俺たちがコロニーステーション内部で通り抜けるような通路とそう変わらない大きさなのだ。その為、俺たちは全員が乗機であるキュラシエやファルケⅡから降りて施設の中を進んでいる。なお、俺たちが降りたあとのキュラシエやファルケⅡだが、それぞれの機体に搭載されているコンピューターに任せていた。これで俺たちが機体に搭乗していない間に何か問題が起きたとしても、独自に対応してくれるだろう。もっとも、今までも敵襲がなかったことから大丈夫だとは思ってはいるのだが……まぁ、起きてもいないことを杞憂きゆうしたとしても仕方がないな。


「それで、どうやって扉を開けて中に入る?」

≪今までと同じよ≫


 ふむ……つまり、バッテリーから限定的にエネルギーを供給して扉を開けることで中に入ろうとそういうわけか。確かに扉をぶっ壊して中に入るという手もないわけじゃないが、そんなものは万策尽きた時の最終手段だろう。穏やかな手段で障害を排除できるのならば、それに越したことはない。何はともあれ、シュネや俊やセレンたちを中心に扉を開く手立てが講じられる。そんな彼らの手腕のお陰もあって、大した時間が掛かることもなく扉は静かに開いていった。


「それじゃ、様子見も兼ねて先に入る」

≪お待ちください、シーグヴァルド様≫

「何だ、ネル」

≪我らが先に参ります。シーグヴァルド様たちは、我らが確認したあとからお入り下さい≫


 むぅ……未確認の場所へ一番に入るから面白いのだがなぁ。とはいえ、そんな彼、彼女たちの思いを聞って捨てるというのも後味が悪い。ここは大人しく、ネルたちの気持ちを汲むことにしよう。そう考えて俺は、少し間を開けてからネルの言葉に頷いていた。その後、ネルの命令を受けた数体のガイノイドとアンドロイドが中へと入っていく。まだ人工天体内部でのエネルギーの供給体制が確立していないので、彼らが扉から中に入るとすぐに彼らは暗闇の中に消える。代わりに、持ち込んだ明かりだけが動いているのが確認できた。もっとも俺たちは、デュエルテクターを身に着けている。このデュエルテクターには、暗視機能が備わっているので、幾ら暗闇であろうとも視界の確保は問題とはならないのだ。


≪やはりマザーコンピューターと思われる機器がございますので、人工天体の中枢であると思われます≫


 それが暫くの間、扉の向こうを調査していたネルが一旦、俺たちのところへ戻ってきてから様子を報告した。既に人口天体の内部構造を大よそでも把握していたこともあって、マザーコンピューターがあることはほぼ間違いないとは思っていた。だが、それでも推察と実際に確認されたあととでは安心感が違う。無意識だったとはいえ俺たちは、ネルの言葉を聞くと揃いも揃って胸を撫で下ろしていたのだった。

 それから俺たちは、安全が確保されたというネルのあとに続いて扉を潜っていく。そこはかなり広い空間となっており、流石は人工天体を統括管理しているマザーコンピューターが据えられていると思われる場所であった。すると早速、シュネたちが調査へと入る。ただ、目的はマザーコンピューターを押さえる……ゲフンゲフン。味方とすることなので、調査程度で終わることがないのは明白だった。


「それで時間だが、どれぐらい掛かるのやら。どう思うよ」

『さぁ?』


 マザーコンピューターおよび人工天体調査、それから把握。最後に掌握と、躍起やっきになっているシュネと俊とセレンを見つつ、俺と同様によく言えば見学組。はっきり言えば、ぼーっとした様子で見ている祐樹たちへと話し掛けた。すると返ってきた答えは、俺が思っていることと同じで、掌握まで掛かる時間など分からないというものであった。最近になって専門外な案件についても勉強を始めたとはいえ、現時点ではいいところ素人に毛が生えた程度の知識しかない。この様なにわか知識では、シュネたち三人の調査についていけるわけがないのだ。結局のところ俺たちは、調査を行っているシュネと俊とセレン。そして三人をサポートしているネルが率いているガイノイドやアンドロイドたちの邪魔にならないよう、するしかないのであった。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n8740hc/

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。



ご一読いただき、ありがとうございました。

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