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第百四十二話~探求 二~


第百四十二話~探求 二~



 シュネが伴銀河の辺境で発見した不可思議な天体、それは何と人工物だったのである。驚きを隠せないままにいわゆる人工の天体へと近付いた俺たちは、中の調査を行う為に中へと入ったのであった。





 俺たちが乗り込んだ場所だが、そこはエアロック構造となっているようだ。宇宙空間への出入り口だと思えば、それもまた当然の措置だろう。それから間もなくして人工天体の外部へと繋がる扉が閉まったかと思うと、何かが噴き出しているような音が微かにだが聞こえてきた。何かと思ってデュエルテクターの機能を使って調べてみる。すると、俺たちがいる空間に気体が満たされたようだ。スキャンしてみた結果、成分的に言えば典型的な空気の組成となっている。これが意味するところ、それは人工天体の生命維持装置自体が生きている可能性が非常に高いということだ。


≪少なくとも最低限、生命維持装置を動かせるだけの動力は生きているのね≫

「シュネ、そうなのか?」

≪それはそうよ。でなければ、この場所が空気で満たされることが起きるわけがないでしょう。惑星上みたいにはいかないのよ≫


 確かに。言われてみれば、それはそうだ。

 そもそも俺たちが中に入ったここは、人工物でしかない。地球やシュネーリアなどといった惑星上みたいに、天然の状態で空気が満たされているわけじゃないのだ。宇宙中を探してみれば中にはその様な存在があるのかも知れないが、普通に考えればありえないと判断するだろう。とはいえ、生命維持装置が稼働しているのならば、デュエルテクターを外しても問題とはならないとも判断できる。だが、探索中に何が起きるか分からないので、少なくとも俺にはそんな気はなかった。そして、それはみんなも同じらしい。誰一人として、デュエルテクターを解除していなかったからだ。宇宙服にもなり、鎧にも武器にもなるデュエルテクターである。普通に考えれば、身に着けていることで行動自体が全くできなくなるといったような緊急事態でもない限り、解除する理由になるわけがなかった。


≪さ、扉も開いているから、進みましょうか≫

「え? あ、ああ……」


 ふと視線を、シュネの言葉がした方へと向けてみる。すると、いつの間にか俺たちが人工天体内部に入る際に使用した扉とは反対側の扉が開いていた。シュネが開いたのか、それともエアロックに空気が満たされたから開いたのかは分からない。だが、道が開けた以上、調査の為にも先へ進むのは当然の判断だ。それに何より、探索の人員は俺たちだけじゃない。まだネルが率いるガイノイドやアンドロイドたちも人工天体の外にはいるのだから。

 さて、まず俺たちが向かったのはこの人工天体の中枢……などではない。ならばどこなのかと言えば、それは俺たちが最初に見付けた施設。つまり、カズサなどの大型船舶が停泊させることができるだろポートとなる。そもそも人工天体の中枢がどこにあるのかまだ分かっていない状況なので、一まずは俺たちの宇宙船を人工天体の内部へ入れられるようにしておこうと考えたのだ。とは言うものの、入り口を開いたからといって宇宙船を入港させるのかどうかはネルトゥースに任せるつもりだったりする。ならばなぜにポートを開くのかと言えば、ポート付近を周回させているカズサら俺たちの宇宙船に何か問題が起きた場合に対する緊急避難的な意味合いが大きい。要するにこの人工天体を、俺たちの艦隊に万が一の事態が起きた際の逃げ道の一つとすることを考えているのだ。


≪えーっと……多分、こちらだと思うわ≫

「おいおい。シュネ、多分って大丈夫なのか?」

≪仕方ないでしょ。人工天体の外側からだと、スキャンがあまり出来なかったのよ≫

「え? マジ!?」


 シュネは、いやこれはシュネだけじゃなくて俊やセレンもスキャンは行っていたみたいだが、当初見付けたポートから人間の出入り口となるだろうさっき入った扉まで移動する時間で人工天体の内部構造のスキャンを三人は行っていたらしい。しかしながら人工天体の外壁に特性でもあるのか、広範囲の内部構造を正確に把握できていないようである。どうやら、人工天体の外側となる岩壁の直下、即ち外壁にもっとも近い場所ぐらいしかスキャンはできなかったらしい。その不完全と言えるスキャンで判明した情報を繋ぎ合わせることは、できたようである。しかもスキャンができた範囲は狭く、ところどころに若干だがあやふやな情報が含まれている。だからこそシュネは、「多分」と表現しているみたいだ。ただ話を聞く側としては、その情報に想像が含まれていたとしても、はっきりと言い切って欲しいところではあったのだが……まぁ、いいか。

 ともあれ俺たちは、シュネや俊やセレンがスキャンした情報を基にして作成した人工天体内部の通路に従って先へ進む。俺が先頭に立って警戒はしているが、幸いなことに敵らしき相手は出てきていない。これが|偶々そうなのか、それとも意図された結果、敵もしくは敵に該当する可能性がある存在が出てきていないのかについて、判断できないでいた。


「ここまで全く遭遇できていないところを見ると、そもそもの話何だが人工天体の内部に敵になるような存在はいるのか? それとも、あえているのか? シュネは、どっちだと思う?」

≪うーん……わたくしとしては、単純にエネルギーが足りていないを追加で選択に加えるわ≫

「え? エネルギーが足りない? それは、どういう意味だ?」

≪これも憶測なのだけれど、何らかの理由があって人工天体が有している機能を全て動かすだけの動力が足りないのではないかしら。そこで優先順位みたいなの付けて、取捨選択しているかも知れないわ≫

「取捨、選択ねぇ。たとえば、どんな理由があるんだ?」

≪そうねぇ……エネルギー炉が壊れかけているとか≫

「炉が壊れて、いや、壊れかけている?」

≪うん。まぁ、あくまで可能性でしかないし、私の想像でしかないのだけれどね≫


 ふむ。なるほど。動力の枯渇か。あり得そうと言えばあり得そうな話だな。だが、現状では、シュネ自身が言ったようにどこまでも想像の範疇は出ない。それこそもっと人工天体の内部を調べてみなければ、本当のところは分からないのだ。因みに俺たちだが、徒歩での移動はしていない。探索用のセンサーが多数搭載されているドローンを先行させて偵察を行い、その後にあと追う形でスラスターを使って移動しているのだ。これは徒歩での移動となると、時間が掛かってしまうことを懸念してとなる。なんだかんだ言っても、下手をすれば直径で四桁に近い大きさを持っている人工の天体だ。それだけの大きさを持つ人工物の内部を、ちんたらと歩いて移動していたらどれだけ時間が掛かるか分かるものじゃない。そこで少しでも時間を短縮する為に、ドローンとスラスターを並行使用して人工天体内部を移動しているのだ。


≪……あ!≫

≪どうしたの?≫

≪多分だけど、あの扉がそうだと思うわ。舞華。あそこの扉を抜けた先が、ポートエリアになると思うのよ≫


 俺たちの向かう先には、確かにシュネが指摘した扉が見える。その扉だが、先行したドローンの光によって照らし出されている。既に偵察用の機器を搭載しているドローンがその場所に到着しているということは、その扉までの道すがらでは途中に何も問題がないことを示していた。


「了解。じゃ、行ってみようか」


 そのまま俺たちは、デュエルテクターの機能であるスラスターを使って、ドローンの照射する光に浮かび上がる扉の近くまで到着する。その後、既に扉の開閉方法を確立していたらしいシュネによって、くだんの扉が開かれる。しかし、いつの間にできるようになっていたのだろうか。


≪俊とセレンの協力のお陰よ≫

「俺、何も言っていないんだが」

≪それぐらいわかるわ。私たち、小さい頃からの付き合いなのよ≫


 途中でシュネの留学などがあって離れていた期間もあるのだけれど、全体で見れば確かに俺とシュネ……いや俺と瑠理香はそれこそ小さい頃からの付き合いだ。それだけの時間、共にあれば、これぐらい読まれてしまうのかも知れない……か。まぁ、それも今さらだな。ともあれ俺は、シュネが開いてくれた扉を潜ってみる。するとそこは、とても広い空間になっていた。その規模としては、俺たちの艦隊を全て停泊させてもなお何もない空間の方が広いだろうな。そう思わせるぐらい、大きな空間となっていた。


≪……ひろっ!≫

≪うん!! すっごい広い!≫


 ポートを見た祐樹とオルが、驚いたような声を上げている。また、他のメンバーは声こそ上げていなかったものの、だいたいが驚いている様子が感じられる。実際、俺も予想以上に広いポートに驚き、一言声を上げて以降は声が出ないでいる。何せ、地球で生きていた頃も併せて今まで見たことがない光景を目の当たりにして、驚きを隠すことなどできなかったからだ。

 その一方でシュネは、あまり驚いているようには見えない。全く驚いてはいないというわけではないようだが、それでも俺に比べれば、驚き具合は小さいように思えた。


「シュネはさ。その……比較的だが、冷静に見えるな」

≪そう? これでも一応は、驚いるつもりなのだけれど≫

「そりゃ、驚いていることは分かる。だけど俺たちと比べると、そうは見えないんだよなぁ」

≪え? ああ、そう言うことね。ポートの規模は少々しょうしょう予想外だったけれど、それでも広い空間は存在していると予測はしていたのよ≫

「なるほど。これはつまり……予想していた人間と、全く予想をしていなかった人間との差か」

≪そんなところよ≫


 事前に心構えがある人間と、全く心構えがなかった人間。その両者を比べれば、その行動に差が出るのは当然か。シュネの言葉から俺はそう考えていたのだが、当のシュネはと言えば既に驚きの状態から脱している俊とセレンを伴って調べ始めている。どうも調べている辺りはと言えば、ポートの入り口付近のようだ。恐らくだけれど、シュネは当初の目的通り、入り口を開くつもりなのだろう。そう当たりを付けた俺は、シュネとセレンと俊の邪魔にならないようにと少し離れた場所に移動して、そこで見守ることにする。すると、祐樹たちも俺の近くへ移動してくる。どうやら、考えは同じのようだ。それから少し経つと、静かにポートエリアと宇宙とを仕切る扉が開いていったのである。

 因みに、ここには空気がない状態なので、俺たちが宇宙空間へ吸い出されるなどといった間抜けな事態になることもない。しかし空気がないので、音が聞こえてくることもないのである。その為、前述したように、とても大きい扉が動いているわりには静かに、ポートの出入り口が開いていくのであった。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n8740hc/


古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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