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第百三十七話~真相 十~


第百三十七話~真相 十~



 危うく恋人に抱き潰される寸前までい込まれるという、まるっきりギャグかよ! と突っ込みたくなるようなアクシデントも起きてしまったわけだが、それはそれとして敵の首領だろう思われる男との決着をついに付けた俺たち。その後、シュネの希望もあって本拠地の調査を行うのであった。





 俺たちが制圧した敵本拠地内部の調査は、シュネや俊やセレンが中心になって行う電子機器関連。そして、敵本拠地自体。最後に、周辺及び銀河の東西南北地域にそれぞれあった拠点となる。ただ銀河南部地域にあった拠点は文字通りの意味で消滅させているから、該当しなくなっているがそれはそれである。なお、銀河各地域にある拠点に関してだが、魔力による結界と自動防衛以外の活動は命令を送って停止させている。これは、各拠点の調査によって判明した今まで行ってきたちょっかい染みた手出しを行わせない為の処置だ。

 もっとも、俺が指示したわけじゃなく、シュネが独自に行ったらしい。まぁ、最近になってようやく勉強を始めた俺ら程度では、そこまで意識が回らないので指示など出す筈がないのだが。ともあれ、銀河の北と東と西に存在する拠点は、緊急時に対応する以外の活動は、完全に停止された状態にあった。

 さて、この時点で俺にできることなど大体が決まっている。敵本拠地周辺の警戒、そして、シュネたちのアシスタントとなる。但し、俺は無論だが祐樹やオルたちにもシュネや俊やセレンのような専門的な知識は持っていないので、アシスタントとは言っても彼らの指示に従って雑用をこなすだけの雑用係でしかないのだけれど。

 

「ところで、どれぐらい時間が掛かるんだろうな」

「さぁ。気長に待っていれば、それでいいんじャないか?」


 今日も今日とて、周囲の警戒やアシスタントと言う名の雑用係をこなしているわけだが、その中で偶然にも思い付いたという感じで祐樹が俺に尋ねてくる。そうは言うものの、何度も言うようにシュネたちのような専門知識を持ち合わせていない俺では、その問い掛けに明確な答えを返せるわけがない。かくて俺の返答は、凄く曖昧あいまいと言うか頼りないものでしかなくなっていた。


「それほど、待つ必要もないわよ。近日中には終わるから」

「へぇ。速いのか遅いのか分からないが、流石だな」

「ありがとう、シーグ。それより、原因のわたくしが言うのもなんだけど、体は大丈夫?」

「Natürlich!」


 これはドイツ語で、勿論とか当然とか言う意味を持っている言葉だ。前にシュネから教えられた単語の一つであり、覚えていたから使ってみたというわけである。


「あら。覚えていたのね」

「偶々だけどな」

「なぁ。その今の言葉って、どういう意味だ?」


 その時、祐樹が言葉の意味を訪ねてきた。祐樹が地球にいた頃に、ドイツに行ったことはないらしい。そえに高校までの間に学校で教わるのは、普通は英語だ。そう考えれば、一般の学生だった祐樹がドイツ語に縁があるような生活をしていたとは思えない。とはいえ、俺も似たようなものだったりする。確かにシュネから、幾つかドイツ語を教わったことはある。しかしそれは、本格的に教わったわけじゃない。何かの拍子で俺が聞いたから、シュネが教えてくれた程度のものなのだ。

 そのようなことは一まず置いておくとして、俺は祐樹の質問に答える。すると祐樹は、感心したような表情をしていたのだった。


「ふーん。今度使ってみようかな」


 まぁ、使うか使わないかは、祐樹の勝手だ。しかし使える相手は、酷く限られる。少なくとも地球出身の五人……あ、今はいないけどフィルリーアで悪魔王スイフルを名乗っていた斗真と悪魔妃フルンを名乗っていた悠莉ならば通じるかも知れない。つまり、都合七人だけということになる。随分と範囲は狭いが、それでも祐樹は使う気なのだろうか。かくて、俺の考えていたこととは裏腹に、思ったよりも通じる相手がいることをシュネから聞かされるとは夢にも思わなかった。


「好きにしなさい、祐樹クン。フィルリーア出身のサブリナちゃんやオルくんやキャスちゃん、それから宇宙で合流したクルドくんには通じないけど、それ以外なら通じるから」

「え? マジ!?」


 完全に予想をくつがえされた俺は、驚いてシュネに問い掛ける。すると問い掛けたシュネの方が、逆に驚きの表情を浮かべていたのだ。まさかシュネがそんな表情をしてくるとは考えてもいなかった俺であり、なおさらに驚きを隠せない。ここに何とも奇妙な、驚きの三重奏カルテットが生まれたのだった……って、何でだよ!


「あー、えーっと。シーグの口からそんな言葉が出てくる何て夢にも思わなかったわ」

「いや。その、だけどさ。そんなこと思わないじゃないか」


 ここが地球の日本だというのなら、もしかしたらシュネの言った鳥居にドイツが通じるというシチュエーションもあるのかも知れない。しかし俺たちは、異世界……かどうか確実には言えないけど、ほぼ地球とは関係がないフィルリーアに偶々たまたまあった転生の魔術を使用する為に用意されていた肉体に憑依することで生き永らえたのだ。まぁ、これが本当の意味で生きているのかと思われてしまうかも知れない。しかし俺にしてもシュネにしても、問われれば間違いなく生きていると答えるだろうって、話がそれた。

 兎に角、地球とは縁も所縁もないフィルリーア……いや、本当に縁も所縁もないのか? 俺とシュネが評したのは勿論だが、祐樹たちにしても転生と言う形となるがフィルリーアに表れている。偶然の産物とするには、縁があり過ぎのような気がしないでもない。もっとも、そのことを証明する術もないので、その点についてはどうにもならにけどな。


 またしても話がそれたので、戻すとしよう。

 

 取りあえず、縁云々えんうんぬんは置いておくとして、地球でも日本でもない惑星のフィルリーア及びフィルリーアが所属する銀河でドイツ語が通用するとは思わない方が自然というものだろう。少なくとも、俺がそう考えたとしても罪などない筈だろう。いや、むしろそう考える筈だ。


「えっーとね、シーグ。私やシーグがいる時点で、地球の言葉はネルトゥースにインプットして記録させるわ。特に憑依初期は、どうやっても私もシーグも地球と言うか日本での常識などに囚われるから。そこに生まれる齟齬そごを解消させる意味でも、私がしておいたのよ。お陰で、問題なかったでしょう?」

「えー、あー。その、うん。問題、ありませんでした」


 確かに、憑依した直後は兎も角、それから暫くもしないうちにスムーズにネルトゥースとのやり取りが行われていたのは事実だ。これはネルトゥースがとても優秀だから短時間でできるようになったのだろうと思っていたのだが、まさかシュネがそこに関わっていたとは完全に想像の埒外らちがいでしかない。これは寧ろ、シュネが積極的に関わったからこそ問題が短時間で解決されたのだろう。ただ、どんな問題があったのかは知るよしもないのだけれど。


「まぁ、いいわ。今さらだしね。それよりさっきも言った通り近日中には終わるから、そうしたらみんなを集めるわ」

『りょーかい』


 シュネの言葉に俺と祐樹が声を揃えて返答したのであった。



 それから数日たったある日、シュネが言った通り仲間クルー全員が集まることになる。集まった場所は、当時敵の本拠地だった拠点を攻める為に集まった会議室だ。流石に周囲の警戒、俺たちの艦隊や元敵本拠地の運営等もあるので、ガイノイドやアンドロイドが全員集まると言うようなことはない。彼らの統括としてシュネが艦橋に残っているので、実質はネルトゥースだけとなる。しかし彼らは情報の共有ができるので、全員が参加しているのと同じ意味だろう。


「じゃあ始めるわね」


 シュネの言葉を皮切りに、報告が始まる。果たしてそこからは、物凄く目新しいという情報があったわけでもない。名前も知らないまま撃破した敵の首領……なお、この報告で初めて相手の名前を知ることになる。しかしてその名前だが、オニシムと言うらしい。そして目的はと言うと、戦う前に行った会話でシュネが指摘した通り人としての種が人を超えること。即ち超人となることだそうだ。また本人自身は、その超人となった種に君臨すること。いわば、神となることだったそうだ……うん、やっぱり厨二だわ。


「神、ねぇ。俺には、さっっっっぱり! わからんわ!!」

「でしょうね。私にも分からない」


 俺の思いに同意したシュネだけではない、仲間も同様だった。しかし、のちに聞いた話では、地球出身の面子めんつ及びクルドと、フィルリーア出身の面子ではその思いに違いがあったそうだ。祐樹たち地球出身者とクルドでは、神になるなど馬鹿馬鹿しい意外に何ものでもないといった思いから、オニシムの考えが分からないというものとなる。しかしフィルリーア出身となるオルたちとなると、神にとって代わるなど不遜だという思いからその考え方が分からないということとなる。どうやら宇宙に出て暫く経っていたとても、幼い頃から教えられた考えと言うのは影響するようだった。


「まぁ、いいか。今となっては、死んでいるわけだし。それに今さらシュネも意思を引き継ぐなんて気もおきないのだろう?」

「はじめっからないわよ、そんな考え」


 シュネは、間髪入れずに思いっきり不機嫌そうな返答をした。

 因みにオニシムだが、厳密に言うと本人ではないらしい。嘗てこの銀河が旧マルクト王国によって統一されていた頃から存在していたらしいから、相当な時が経っていることとなる。幾ら何でもただの生物が、長い時を生きるなどできるわけがない。それゆえにオリジナルとも言える初代のオニシムは、自分のクローン体に記憶を刷り込むことで自分が死んだあとでも目的を果たそうと考えたそうだ。そして実際に実行した結果、何代目かになるのかは知らないがともあれオニシムクローンと俺たちの闘いが起きたということとなる。経緯としては偶然の結果であり、互いに巻き込まれた形だと言える。確かにそう言えるのだが、何ともはた迷惑な話であった。

 もう、二度とごめんだわ。こんな、わけの分からない事態に巻き込まれることは。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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