表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/227

第百三十一話~真相 四~


第百三十一話~真相 四~



 敵の本拠地へと乗り込んだ俺たちは、三つの組に分かれた。一つは言うまでもなく俺たち、そしてもう一つは祐樹たち元勇者組。最後に、ネルがリーダーを務める部隊であった。





 拠点の中枢付近へ最初に到着したのは俺たちだったが、祐樹たちも遅れているというほどでもない。事実、仲間内で各人がダウンロードしていたマップで確認しても、祐樹たちを示すマーカーは大分近国いることを示していた。


「そろそろ祐樹たちも到着する。どうやら、いよいよクライマックスというところか」

「そうだなシーグ。何でこんなことをしているのか、ついに分かるわけだ」


 やや気合が入っているクルドの言葉だが、理由が分かるのかどうかは半々はんはんぐらいだろうと俺は思っている。正直に言えば、相手のタイプによるとしか言えない。仮に黙して語らず淡々と、というような手合いであれば問い掛けたとしても答えないだろうからだ。しかし、そうでなければ、聞いたら答えてくれるかもしれない。そして現在相手がどういった人格の持ち主なのか分からない以上、確率は半々としか言えなかった。

 ともあれ、相手がどういったタイプであろうとも、まずはあってみればいいだけである。祐樹たちが到着次第、突入して相対すればおのずと答えが出る筈だ。などと考えていた時、ついに祐樹たちもこの場へ現れた。これであとは、やや先に見える扉を開くだけ。その中へ投入すれば、いよいよご対面である。なお、ネル率いるガイノイドやアンドロイドの部隊は敵の世店内の制圧がメインなので、待つつもりはなかった。ともあれ俺たちはお互いに頷きあうと、揃って中枢へと繋がっているだろう扉へと向かう。そして扉の前に立ったわけだが、意外なことにすんなりと開いていった。拒絶されて扉は開かず、これはもう壊すしか先に進むことはできないなどと思っていただけに、この反応は意外に思える。とはいえ、扉は開いたのだからこの場に留まっているいわれはない。俺たちはゆっくりと、扉の中へと足を踏み入れたのだった。



 扉を潜った先は暗い……などといったことはなく、普通に照明が灯されていた。部屋の奥にはこの拠点を司っているのだと思われる大型のコンピューターが鎮座している。そしてその前には、医者や科学者が着ているような白衣を纏った壮年というには年齢を重ねているが老人というほどには年齢を重ねていない人物と、その微妙な年齢の人物を守るように配置されている複数の存在が待っていた。なお、護衛と思われる者たちの数だが、俺たちより一人少ない面子となっている。要するに白衣の人物を加えると、俺たちと全く同数となるのだ。

 果たして白衣の人物だが、回りにいる多分だが護衛と思える者たちも見た感じは人と変わりがない。ただ、彼ら護衛は純粋に人とは思えなかった。何と言うか、気配が曖昧あいまいなのである。確かに人というか、生体の気配は持っている。だが、それ以外にも感じてしまう。そしてこの気配、俺には覚えがあった。


「……バイオノイドか……」

『え!?』


 シュネたちが驚いた声を上げているところを見ると、誰も見抜けなかったらしい。

 そう。

 護衛と思われる奴らから感じる気配は、イルタやヘリヤやエルヴィといった医療用としてシュネが創造した生体型ガイノイドである彼女たちが持つ気配にとても酷似していた。だからこそ、俺は一発で見抜けたといえる。もし知らなかったら、流石に見抜けなかっただろう。それくらい、白衣の人物を護衛している者たちの見た目は人と変わりがないのだ。そしてその事実は、俺にあることを確信させる。少なくとも白衣の人物が持ち合わせている技術レベルが、シュネとあまり変わりがないレベルであるだろうということだ。即ち、今まで俺たちがシュネという天才によって受けていた恩恵を、向けられるかも知れない。とてもではないが、気の抜ける相手ではないということだった。


「ほう? まさか、一目で見抜かれるとは、思ったよりもましであったか」


 一見すると感心したような雰囲気だが、実際はそんなことはない。それを証明するように、その白衣の男がたたえる目には、明らかに俺たちをあざけるような色を帯びているからだ。とは言うものの、どうして初対面の人物から馬鹿にしたような視線を向けられるのか。その理由が、全く持って分からない。もしかしたら、程度が低い相手だと思われているのだろうか。まぁ、俺自身は高尚な人物だなどとは思っていない。だが、初対面の相手から馬鹿にされるいわれはないのだが。


「それで、あんたは何者だ? 何よりこの銀河のデータを、どうして集めていた? わざわざ、面倒ごとを起こしてまで。しかも、長い期間に渡ってだ」

「……おう。まさか、そこまで把握していたか。これは予想外、予想外」


 相も変わらず嘲りの色を浮かべた目をしているが、男の浮かべる表情自体はさも楽しそうだと言っていいだろう。ただ本当に上機嫌なのか、それとも不愉快と思っているのか。はたまた、こちらを見下しているのか判断がつかない相手ではあるが。


「それで、どうだ? こちらからの質問に、答えてくれるのか」

「さてのう……と、言いたいところだが、せっかくの来客から出た要望。答えてやるというのが、もてなしというところか」


 おお。

 まさか、こちらからの問いに応えてくれるとは、思ってもみなかった。韜晦とうかいなりして真面まともな受け答えはしないだろう思っていただけに以外でしかない。だが、せっかく教えてくれるというのだ。下手にちゃちゃなどは入れず、黙って静かに口上を聞くことにしようか。

 そのように考えた俺だったが、ふとシュネがしかに入ったので彼女に視線を向ける。すると俺の視線に気づいたシュネは、小さく頷くことで返答してくれた。その仕草から考えるに、どうやらシュネも同じ考えらしい。また、祐樹たちからもこれといった反応がない辺り、このまま相手に語らせるべきだという考えに思いが至っているのだと見当をつける。その様な、言わばギャラリーである俺たちの反応に気をよくしたのか、男は滔々とうとうと語り出す。果たしてその内容は、端的に言えばシュネが予測した通りであった。


わたしがこの銀河にて行っていたそれは、人という種をさらに高位への存在へと押し上げる為に必要な実験である」

『実験?』

『……』


 白衣を着ている男が自身の行った行為を説明する第一声に対して、俺たちの反応は二つに分かれてしまっていた。俺と祐樹、オルとキャスとクルド。そしてサブリナは、男の言葉の意味を図りかねて、それこそおうむ返しに言葉を返している。しかしてシュネとセレン、それから俊と舞華は俺とは違ってただ黙っていた。その口を閉ざしている四人のうちで、舞華を除く三人の表情は特に乏しい。そして残った舞華はというと、驚きの表情を浮かべていたのである。


「ふむ。思ったよりも、頭が悪い一団というわけでもないようだ。少なくとも四人は、及第点といったところか。その者たちに免じて、言葉を続けるとしよう。私が行った実験が成功すれば、人はより高位の存在、即ち高位種となれるのだ」


 男がのたま実験云々じっけんうんぬんに関しては、シュネからその気配があると事前に聞いていたのでそこまで驚く言葉でもない。だが人がというか人という種が高位の種になれるとは、何を指して言っているのか分からなかった。そもそも高位種とか、全く意味が分からない。人は、というか人だけではないだろが、種族として上も下もないのではないかと思うのだけれど。


「……何なんだよ、その高位とか。意味が分からない」

「ふむ。そなたでは、やはり分からぬか。では、そちらの四人……いや……どうやら勘違いだな。驚いている娘は、ただ驚いているだけのようだからな。だが、残りの三人ならば、私の言った言葉の意味、分かっているのだろう?」

『え?』


 白衣の男の口から出た言葉に、俺たちは異口同音に驚きの声を上げる。しかし男から指摘された三人、即ちシュネとセレンと俊は、男へ言葉を返すでもなく沈黙を貫いている。だがその態度から、俺は何となくだが分かってしまった。この三人は白衣の男が言ったように、言葉の意味が分かっているのだということを。


「本当なのか、シュネ」

「……ええ。馬鹿馬鹿ばかばかしくて、わたくしでもやってみたい、実行してみたいとは思わない。そのようなことをこの男は堂々と、そして自信たっぷりに言っているのよ」

「だから、シュネ。それは、何のことだよ」

「より高位の存在への進化、即ち種が人として人を超えること。そしてこの男の最終的な目的、言ってしまえばそれは神への到達。そこへ至る道筋としての実験、そんなところかしら」

『…………はい?』


 シュネの言葉に、俺と祐樹、オルとキャス。クルドとサブリナの計六名は、ただただ唖然と声を漏らすしかないのであった。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ