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第百三十話~真相 三~


第百三十話~真相 三~



 ついに、敵本拠地の周囲に展開していた艦船の排除に成功した俺たち。そして、本拠地へと乗り込む為にカズサなどを囮としたのであった。





 敵本拠地へ向けて囮となっている俺たちの艦隊だが、派手に攻撃を仕掛けている。常に移動し続けながらの攻撃を行っていて、その様子を見る限りこれといった目標があるようには見えない。しかし実際は、めくら撃ちのように見せかけながらも艦船の出入り口となるポートを狙うようにしているのだ。


「流石だよな」

「何がかしら」

「ネルトゥースだよ。一見すると出鱈目でたらめに撃っているようにしながらその実、ポートを狙っているんだよな」

「えぇ。そのように指示を出しているからね」


 あぁ、なるほど。

この行動は、シュネの指示なのか。その様な行動を判断するには、流石にまだ経験が足りなかったということらしい。だけど、ネルトゥースはこれで経験したことになる。ということは、次に同じような事態となればできるようになるのだろう。それはそれとして敵本拠地のポート付近が被った損害具合だが、結構なダメージとなっているようだ。これならば近づいても、気付かれる可能性は低い。どっちにしてもステルス機能を全開にしているのだから、損害がなくても気付かれはしないのだろうけれど、それはそれだ。


「さて、そろそろ近付いても、問題ないよな」

「そうね……大丈夫ではないから」

「よし。ならば、行くぞ。いいな、みんな」

『おう!』

『ええ!』


 みんなからの返答を聞いたあと、俺たちが乗る強襲揚陸艇は敵本拠地へ近づいて行く。ステルス機能が働いているのでまず気付かれはしないだろうが、それでも慎重に行くに越したことはないからだ。細心の注意を払いながら、目標としたポートに接近していく。やがて俺たちは、入り口が壊れているポートの一つから敵拠点内への侵入を果たしたのであった。

 無事に敵本拠地内へ侵入したあと、すぐに強襲揚陸艇を着陸させる。しかしながら、ステルス機能はそのまま働かせておく。こうしておけば、気付かれるまでの時間が稼げるからだ。上手くいけば、最後の最後まで敵には気付かれないかも知れない。そんな希望的観測を抱きながら、俺たちは行動へと移った。

 まずは、敵拠点内へ乗り込む部隊が動く。彼らを率いるネルの指示によって、順次じゅんじ強襲揚陸艇から出て行った。勿論、全ての部隊が揚陸艇から出て行くわけじゃない。最悪の場合、脱出用でもある強襲揚陸艇を守る部隊も、ちゃんと残っているのだ。そんな強襲揚陸艇から最後に出ていったのが、実は俺たちとなる。一応は警戒しながら船外へと出たが、その頃には先に船外へと出ていたネルの部隊が役目を果たすべく動き始めている。流石の手際である、洗練化という意味ではネルたちの方が圧倒的に優位なのだ。

 そのような制圧部隊の手際の良さに感心しつつも、俺たちは別ルートに向かう。それはネルが率いる制圧部隊が、囮でもあるからだ。ネルたちが動き敵戦力を集めている傍らで、俺たちは別ルートで敵本拠地を司っている中枢へ向かう。さらには祐樹たちと別れることで、敵の戦力を分割するのだ。そこまで敵戦力を散開させることができれば、俺たちであっても祐樹たちであってネルたちであってもまず負けはしないだろう。ただ懸念があるとすれば、敵側に対応されていた場合だ。事実、「ゼロエリア発生装置」へ対応をされてしまっている。ならば、拠点内の戦力に関しても対応されていないと考える方が迂闊うかつだろう。気にしすぎかもしれないが、警戒して困ることはないのだ。


「さて、ちょうど分かれ道だ。右は祐樹たちに任せる、俺たちは左に行く」

「了解した」

「じゃ、あとで会おう」

「ああ」


 そう言ってから俺たちは、祐樹に言ったように道を左に折れる。すると背後から、祐樹たちから「気を付けろよ」との言葉が掛かってきた。その言葉に俺は振り返ることなく、ただ右手を挙げて返答の代わりとしていたのだ。



 祐樹たちと別れてからも警戒は緩めることなく、敵本拠地内を進んでいく。さて目標地点である中枢だが、道筋について判明できているから問題にはならなかった。とはいえ、初めは無理だったのである。外部から拠点内部の構造について、スキャンを行ってはみたものの内部を把握することができなかったからだ。しかし、拠点内部に乗り込めたことでスキャンができるようになり問題は解決したというわけである。こうしてスキャンが可能になったことが分かると、シュネとセレンと俊は速やかに敵本拠地内のマップを作成した。こうしてできた敵拠点内マップは、全員の端末にダウンロードしてある。そのマップを見ながら進めば、まず迷うことはない。しかもこのマップには、データもリンクしている。何と、俺たちのパーティと祐樹たちのパーティが進んだ経路が記されるのだ。さらには、味方が制圧したブロックも分かるようになっている。これはネルたちの部隊だけでなく、俺たちが制圧した場合にもちゃんと分かるようになっている優れもののマップとなっているのだ。


「さて……思った以上に悪くないのか」

「そうね。わたくしたちもそうだけど、祐樹たちもそうね。そして、ネルたちもね」


 そう。

 拠点としての規模が大きくなり、しかも相手となる敵の防衛手段も以前に制圧した拠点からすれば間違いなくレベルが上がっている。どのような理屈が働いているのかは分からないが、この本拠地にいる敵に対してはサブマシンガンやアサルトライフルぐらいでは足止めぐらいにしかならない。俺の持つガトリングや対物魔ライフルならば撃破できるが、逆に言うとそれぐらいの威力を持つ武器でないと倒せないときている。その代わりに役立ったのが、魔術だった。敵のユニットに対して意外と言うと失礼となるかも知れないが、効果があるのだ。とはいえ、魔術一発で敵を撃破! とはいかないし、下級魔術程度ではそれ程の効果は望めない。中級魔術以上の威力で、漸く敵が被る損傷は大きくなる。そして上級魔術以上となれば、確実に敵を撃破できるのだ。とは言うものの、効率という意味では魔術より銃をモデルとした魔道具の方が上を行く。その辺りはどうにかならないかと、俺はシュネに尋ねてみた。このような場合、彼女が解決策を持っていることが多い。事実、過去にもそういったことがあったからだ。


「なぁ、シュネ。何かないか?」

「シーグ。何かって何よ。具体的に言いなさい」

「いや。シュネなら、強力になった敵も撃破できる案でもないかと、そう思ってさ」

「……仕方ないわねぇ。期待されたら、出さないわけにはいかないじゃない」


 そう言ってから彼女がマジックバックから取り出したのは、いわゆる機関銃だった。しかも、どこか見覚えがある。どこで見たのだろうかと思っていると、すぐにシュネから回答が出てきた。シュネの取り出した武器だが、元はフィルリーアで使用したこともある探索用車両のウニモグに搭載されていたMG5らしい。しかしそのままだと取り回しに難があるので、人が扱えるように軽量化を行いその上でコンパクト化したものが目の前にある機関銃……なのだそうだ。実際、MG5 Sという名称で似たようなコンセプトの機関銃があるとのこと。つまり、実績もあるバージョンだということだ。


「やっぱり、手段はあったのか……そう言えば、シュネが前にも言ったことがあったな。確か「こんなこともあろうかと」だっけ?」

「または、お約束よ」

「ふーん。ということはもしかして、ネルたちの制圧するペースが悪くない理由も……」

「そう、シーグが考えた通りよ。ネルたちには、既に持たせてあるわ。念のためにとして、だったけど。どうやら、図に当たったみたいね」


 シュネに言わせると、この拠点が最後である可能性がたかいことを考えてらしい。何らかの手が打たれるかも知れないと辺りを付けて、個人用武装の強化を行ったのだそうだ。何せネルたちガイノイドやアンドロイドは、俺たちと違って魔術が全く使えない。魔術と同等の効果を出せる魔道具を持たせれば別だが、その魔道具も効率というか効果という意味では、オリジナルの魔術と比べると費用対効果が落ちてしまうのだ。無論、万が一通常の武器が通じないなどと言った事態もありえるので、幾つか魔術と似た効果をもたらす魔道具は持たせている。しかしながら前述したように費用対効果を考えた場合、魔術と似たような効果を齎す魔道具を使用するより、武装自体の強化を行った方がお手軽となるのだ。だからこそシュネは、ガイノイドやアンドロイドの持つ武器の改良行ったというわけである。それに武装の強化は、結果として俺たちが持つ武器の強化にも繋がる。その意味でも、新たな武装や武器のバージョンアップは、有効なのだ。

 その理屈は分かる。分かるのだが、こういった新装備は早めに出して貰いたいものであ。出し惜しみというか、お披露目するタイミングを計る辺り俺がシュネを評してマッド気味な面があると言う根拠なのだ。しかしその点を指摘したとしても、シュネは聞く耳を持たないだろう。


「それで数だけど、どれぐらい用意した?」

「予備を含めてとなるけれど、全員が使っても余るわよ。ただ、シーグは必要ないかしら」

「現時点では、いらないな。ガトリングで十分だし」

「でしょうね」


 対物魔ライフルと並んで、俺の持つガトリングは敵をほふるに十分な効果を上げていることは前述した通りだ。ガトリングに装填する弾丸が無くなれば必要になるかも知れないが、まだまだ弾丸には余裕があるので、今は必要がないということである。それに、もしガトリングが玉切れを起こしたら、それこそ接近戦を始めればいい。その点を鑑みても新装備は、あまり必要がないかも知れないな。


「そう言えば、祐樹たちに持たせたのか?」

「俊君が持っているわよ。侵攻速度がわたくしたちとあまり変わらないところを見ると、既に使っているかも知れないわね」

「または、魔術でごり押しの可能性もあるか……な!」


 その直後、通路の角から敵が数体だが現れる。しかし俺とオルとクルトは気付いていたので、俺はガトリングを。そしてオルとクルトは、渡されたばかりの魔道具仕様の機関銃をぶっ放している。反撃する間も与えない銃撃を受けて、敵は蜂の巣となっていた。しかもお陰で、効果がよく分かった。俺のガトリングと対物魔ライフルしか撃破できなかった敵が、魔道具の機関銃で撃破できたのである。これでより一層、敵撃破の効率が上がるというものだった。


「どう? 問題ないでしょう?」

「ああ、そうだな。それじゃあ、先に進むとしよう」


 このあと、事実として侵攻の効率が上がる。そのお陰もあってと言うべきか、ともあれ俺たちは敵の中枢への扉近くまで到着したのであった。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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