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第百二十五話~報告 一~


第百二十五話~報告 一~



 目標としていた拠点を、制圧することに成功。早速、シュネたちが情報の収集を行っていた。そのかん、俺たちはというと、万が一を考えて警戒にいそしんでいたというわけである。だが幸いなことに万が一のような事態など起きず、シュネたちが行っていたコンピューターからの情報吸い上げも終わる。もはや用なしとなった拠点を、さっさと引き上げたのであった。





 ワープを使って距離を取った俺たちが再び現れた場所、それはマカルト王国領内となる。前述したように、アーマイド帝国とマルカト王国は現在進行形で戦争中だ。そこで、情報も流れていないだろうというシュネの提案に従って、ワープの目的地に選んだというわけである。

 他に俺たちの情報が流れる可能性があるとすればギルド経由なのだが、余程の事情がない限りたとえ相手が国であろうともギルドはメンバーの情報は渡さない。シュネの「俺たちの情報が流れていない」と言った理由の根拠でもあるのだ。

 それとは別に、マルクト王国まできた理由は他にもある。それは、俺たちが制圧した拠点のアンテナの向きに理由がある。銀河南方地域で消滅させた拠点が、北にアンテナを向けていたのは以前に述べた。だからこそシュネが、銀河北方に本拠地があるのではないかと予測をたてたというわけである。しかしながら、場所を突き止めていざ制圧してみれば、拠点にはアンテナが二つあったのだ。一つは、銀河の南方に向けられている。そしてもう一つは、なぜか西に向けられていた。正確にいえば西寄りであり、南西となるのかも知れなかいのだが。

 それはそれとして、どうしてわざわざ二つもあった理由が分からない。しかもアンテナそれぞれが、別々べつべつの方向となっていることも同様である。その点も含めてシュネたちは、工作艦にて絶賛情報の解析中なのだ。

 果たしてシュネとセレンと俊を中心として、情報解析に精を出している者たちはいいとして、問題は残された者たちとなる。シュネたちが情報の解析を行っている以上、下手な手出しができない。何より、手出しをしたところで邪魔となるのは今さら言うまでもないことである。だからといって、暇だと言っていても何もはじまらない。そこで俺は、今までシュネに任せきりとなっていた分野、つまり餅は餅屋として手を出していなかった様々さまざまな分野に対する勉強でもしておこうかと思い立ったのだ。とはいえ、いきなり高度なことをする気はない。何ごとにおいても、基本が大事だからだ。

 さて教えを乞う相手だが、ネルトゥースとなる。俺たちのメインコンピューターであるネルトゥースは、シュネたちが行っている情報解析にも既に関わっている。しかしその片手間で、殆ど素人の俺に対して教えるなど、負担にならないからだ。


「その話、俺も参加できないか?」

「え? 祐樹が勉強するのか?」

「がって、酷くないか? まぁ、いいか。それで、できればだけどさ」

「うーん。ネルトゥース次第だな……」


 何と言っても、俺が教えるわけではないのだ。そもそもからして、俺も教えて貰う側となる。だからこそネルトゥースに聞くしかない、似た者が一人増えても大丈夫なのかと。するとモニターに映っているアバターのネルトゥースが、器用にも胸を叩いていたのである。その仕草から、了承していることぐらいは分かった。しかもその際、アバターが胸揺れまで再現していたりする。芸が細かいというか、何と言うか。まぁ、いいのだけれど。


「はい。問題ありません。ほぼ知識がないシーグヴァルド様、そのシーグヴァルド様とほぼ同等の知識しか持ち合わせていない祐樹様が一人増えたところで負担とはなりません。何でしたら、他の方もどうですか?」

「いいのか?」

「先ほど申し上げましたように、問題ありません」


 教師役となるネルトゥースがいいというのなら、俺も仲間が増えることはやぶさかではない。むしろ、望むところである。だが、勝手に話を進めるわけにもいかないので、取りあえずネルトゥースには確認してからということにして貰った。

 その後、オルたち他のメンバーに対して俺……と祐樹が始めようとしていた勉強会に参加するかの打診をしたところ、全員から参加したいとのことである。ここに、情報解析している三人以外の全員参加が決まったのだった。


「……そう。いいと思うわよ。というか、漸く決断してくれたということね」

「あー。まー、そういうことだな。済まん」

「いいわ。これで少しは、説明も楽になるもの……多分だけれども」

「えー、善処いたします」


 シュネから過去に何度か言われたことだが、それでものらりくらりと俺は逃げていたからな。少し皮肉気味なシュネの態度も、仕方がないと言えば仕方がない。せめて基礎の基礎ぐらいは分かるようにしよう。うん、そうしよう。





 こうしてシュネたちの解析が終了するまでの間に勉強を行いつつ、気分転換として武術の鍛錬も行っていた。こちらに関しては、俺が主導して行ったようなものである。ともあれ俺たちはそのようなことをして時間を潰していたわけだが、やがてシュネたちから情報解析が終了したとの連絡が入ってきた。前回に比べて若干だが、早いようにも感じる。もしかしたら、シュネたちも慣れたのかも知れないな。ともあれ戦艦カズサの一室、多人数を集めることが可能な広い部屋。ぶっちゃけると会議室であり、俺たちはその会議室でシュネから報告を聞くことになった。というわけである。


「それで、結果の方はどうだった」

「それが、ねぇ……銀河南部の拠点で手に入れた内容と比べて、大差がなかったのよ」

「そりゃ、どういうことだ?」


 シュネから聞かされた内容に、祐樹が思わず問い返している。無論、その考えは俺も同じだが。そして俺たちの思いはオルや舞華たちも同じだったらしく、みんな一様に首を傾げたり悩んだりしている。そんな俺たちの様子に、シュネだけでなくセレンや俊もさもありなんといった雰囲気を漂わせていた。


「えーっと。説明頼むわ、シュネ」

「勿論よ。その為に、集まって貰ったのだから」


 どうにも理解しきれずに改めて説明を頼むと、シュネは了承したのだった。



 シュネのげんによれば、拠点に遭った情報とはアーマイド帝国がある銀河北方地域で起きた、もしくは起こされた様々さまざまな事象に対しての反応をデータ化して送っていたというものらしい。確かに、銀河南方でも同様のことが起きていたとシュネから説明されている。そのことをシュネは、私見だが「実験しているように感じる」と言っていた。そのことを踏まえて考えた場合、銀河北方地域でも同様のことが行われていたということになる。つまるところ、シュネ曰く実験ということになるのだろう。


「えっと。シュネは確か、実験と言っていたわよね……と言うことは、少し前までいたアーマイド帝国でも、その実験が行われていたと言うの!?」

「そうね、舞華。厳密にはアーマイド帝国だけではなくて、銀河北方地域に対してとなるのだけれど。だけど、概ねその通りと思っていいわ」

「何で? どうしてよ?」

「さぁ。前にも言ったと思うけれど、こればかりは実際に実験を行っている者にしか分からないわ。ただ……」

『ただ?』

「実験云々うんぬんは兎も角として、分かってきたこともあるわ。ネルトゥース、モニターに表示して」

「了解しました」


 シュネからの指示を受けたネルトゥースのアバターが頷いたあと、モニター画面が切り替わる。ネルトゥースのアバターは画面の隅に小さく表示され、代わりにモニター画面の大半は俺たちが今いる銀河の全体図へと変わっていた。その銀河全体図の南北それぞれに、光る点が一つずつ表示されている。そして南北の点から点線が伸び、その点線は銀河の中心にある巨大なブラックホールから少し離れたところでぶつかり合っていた。

 因みに、銀河の中心だが、ほぼブラックホールだと言われている。それゆえ、俺たちが今いる銀河の中心にブラックホールがあることは不思議でも何でもない……らしいのだ。


「ところでこの南北で光る点だけど、これは何?」

「サブリナ。その点は、拠点を表しているわ。北にある点は、つい先日までいた拠点。そして南にある点は、魔術陣砲で消滅させた拠点よ」


 ああ、そうか。言われてみれば、確かにそうかも知れないな。厳密な座標を聞いていないからはっきりとは言えないが、銀河全体から見れば大体その辺りとなるのかも知れない。 となると、それぞれの拠点から出ている点線は何を意味しているのだろう。しかもその点線だが、銀河の中心から少し外れたところでぶつかっている。そうなると、やはり点線にも何か意味があるのだろう。というか、シュネがわざわざ意味のない線を描いているとも思えない。絶対、意味があって線を引いている筈なのだ。


「それは分かったけど、シュネお姉ちゃん。この点線は、どうして描かれているの?」

「キャスちゃん。その点線の意味は、拠点にあるアンテナより発信されていた魔力の波長を表しているの」


 銀河南方地域の拠点を殲滅した際、シュネが言ったようにアンテナが北を向いていたことは既に述べている。だからこそ俺たちは、銀河北方地域へと移動したのだ。そこに本拠地があると判断して。

しかして実際は、本拠地ではなく拠点だったというわけである。しかも今度は、南と南西方向の二つにアンテナが向いていた……あれ? そういえば、南西の方向に向けられていたアンテナがあったにも関わらず、その点線は銀河全体図には記されていない。これは、どういうことなのだろうか? 


「なぁ、シュネ。北にあった拠点から向けられていたアンテナは、南側だけじゃなくて西というか南西に向けられていたアンテナもあったよな」

「そう、確かにね。そのことも含めてネルトゥース、お願い」

「分かりました」


 シュネの言葉に画面の隅にちょこんといるシュネーリアのアバターが頷くと、銀河の全体図に二つの光点が加わった。一つは今俺たちがいる銀河西部地域にあり、もう一つは銀河東部地域に光っている。しかも銀河西方地域からは、銀河北方地域にある光点に向かって点線が伸びていた。またその点線とは別に、銀河西部地域にある光点から。そして、銀河東部地域にある光点からも点線が銀河の中心に向けて伸びているのだ。しかも、追加された点線は全て色が違っている。その理由も、よくは分からない俺は首をかしげていたのであった。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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