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第百五話~制圧 二~


第百五話~制圧 二~



 侵入を果たした俺たちは、順繰りに敵拠点の制圧をしていく。同時にシュネが持ち込んだコンピューターでデータをダウンロードしたことで、敵拠点の中枢を探り当てたのであった。





 シュネが入手した拠点内の地図に従って、敵の中枢を押さえる為に進んで行く。勿論、途中で敵のロボットが出てくる。だが、出会うと幸いとばかりに俺たちは撃破していった。果たして敵の攻撃だが、先へ進むたびに濃密となっていく。これは、俺たちが敵の中枢に向かっているということだからだろう。


「シュネ、まだ先か?」

≪そうねぇ……もう少し先かな?≫


何気にシュネへ尋ねてみたが、目的となる拠点の中枢はもう少し掛かるようだ。ということは、暫くは敵のロボットと遭遇し、そのたびに屠っていくわけだ。相手が引いてくれれば楽だが、望んだところでそうなることはない。襲撃してくる敵を蹴散らしつつ進んでいた俺たちだったが、ある程度進んだところで拠点中枢近くにまで到達していたことが告げられた。


≪あ! この先よ、みんな≫

「そこの曲がり角の先にあるのか? シュネ」

≪ええ≫


 進む先ではちょうど通路が折れていて、その先は真っ直ぐとなっている。少なくとも、シュネが手に入れた拠点内の地図データの中にあった見取り図だとそうなっているのだ。しかし、このまま進むのはどうかと思う。何せ、通路からは駆動音が複数聞こえてくる。即ち、この先に駆動を生み出す原因が存在しているということだからだ。

 どうしようかと頭を捻ったのだが、そこでシュネは容量が拡張されているウエストポーチから何かを取り出す。よく見るとそれは、かなり小型化されたドローンだ。シュネは取り出したドローンを床に置くと、操作して通路の先へ飛ばす。天井ぎりぎりを飛行したドローンが角を曲がると、そこで滞空していた。


≪どんな塩梅かしら……ま、そうよね≫

「おやまぁ」


 空間に投影されたモニターに映っていたのは、拠点内で何度も遭遇した敵のロボットだ。それも、一機や二機どころの騒ぎじゃない。中々なかなかの数が、通路に揃っていたのだ。また、そのロボット群のすぐ近くには、壁に扉のようなスリットが見える。何だろうと思って、シュネにズームを頼もうとしたその直後、多数の何かが当たったような音がしたかと思った直後、ドローンからの映像が途絶えた。もしかしたら撃墜でもされたのかと考え、俺は通路の角の方に目を向ける。すると案の定、床に煙を出して壊されているドローンが墜落していた。


「落とされたなぁ、シュネ」

≪そうね。だけど、情報は得られたわ≫

「そうなのか?」

≪ええ。みんな、扉が見えたでしょ。あそこが中枢の入り口よ≫

「つまり、あいつらを突破しないと中へ入れない」

≪そういうこと……ね?≫


 シュネが肯定したと同時に、曲がり角の方から駆動音が幾つも近づいてくる。どうやらドローンが打ち落とされたことで、俺たちのことも敵にばれたようだ。となれば、あとは考えるまでもない。向かってくるだろう敵を蹴散らす、ただそれだけだ。


「じゃあ、おっぱじめるか!」

『了解!!』


 ガトリングを構えながらそう言うと、皆から了承の返事がある。その直後、曲がり角の先に現れた敵のロボットへガトリングの弾丸を叩き込む。あっという間にスクラップになったが、続いて現れるがそいつらにもガトリングの弾をプレゼントした。ただ、撃ったのは俺じゃなくて祐樹だ。実は祐樹が欲しがったので、俺が持っているガトリングと同じものを渡してある。その渡してあったガトリングを、先制とばかりに打ち込んだのだ。

 また、攻撃したのは当然だが俺と祐樹だけじゃない。オルたちやビルギッタたちも、アサルトライフルのマシンガンモードでの掃射や、アサルトライフルにマウントされた擲弾発射器からの擲弾による攻撃を行っていた。だがその攻撃も、敵をある程度撃破したところで戦績を稼げなくなる。理由は単純で、現れなくなったからだ。

 どうやら、ただ闇雲に攻撃を繰り返すようなプログラムだけされたロボットではないみたいだ。俺たちのアンドロイドやガイノイドのようにAIを搭載しているのか、それとも別の理由があるのかは分からないが。

 何にせよ、このままではどうしようもないというのは分かる。ならば、こちらから行くしかない。取りあえず、曲がり角のところまで行き伺ってみた。しかし角から顔を出してから間もなく、俺は攻撃をされる。すぐに顔を引っ込めたので当たりはしなかったが、通路先の様子は分かった。


「そうだよなぁ。待ち構えているよなぁ」


 拠点中枢へと繋がる扉の前に、ロボットが何体も陣取っている。その様子に、納得する。実際、俺が敵の立場であったならば同じような行動をするからだ。


≪シーグ。様子はどう?≫

「敵さんはお待ちかねだ」

≪やっぱり。となれば、強行突破ね≫

「それしかないよな」


 敵がロボットである以上、麻痺状態にしたり催涙ガス使用するなどといった搦め手を使って敵を無効化することはできない。そして搦め手が使えないのであるならば、あとは力押しということになる。というわけで、一番先行している俺が切っ掛けを作るとしようかと考えたその時、シュネから止められた。


≪今回はわたくし……いえ、私たちから先に行くわ≫

「私たち?」


 シュネの言葉に振り向くと、そこにはシュネだけでなくセレンとキャスと俊と舞華がいる。この五人は、魔術が得意なメンバーだ。一応、俺や祐樹も魔術は使える。しかし、熟練度というかそういった意味では彼らに遠く及ばないのだ。


≪フィルリーアを出てからこっち、あまり魔術は使ってないからな≫

≪そうそう。俊のいう通りよ。せっかくの魔術、使わないともったいないわ≫

≪ボクもそう思うの≫

≪あたしも同感≫

≪と、言うことよ≫


 初めは俊が、続いて舞華とシュネとセレンが、最後にシュネが締めた。

 確かに、宇宙に出てからは使う機会が殆どない。あえて人前では使っていないということもあるが、それ以上に怪我などを負っていないのだ。基本的にデュエルテクターを着込んだ戦闘か、キュラシエを使用した戦闘しかしてない。勿論、カズサ内にシュネが作ってある施設で練習は行っているし、シミュレーターでも訓練はしている。しかしながら、魔術を使用した実戦から難れているというのもまた事実なのだ。


「そう、だな。デュエルテクターもあるし、いい機会か」

≪……シーグ。今の洒落か?≫

「え? 祐樹、何がだ?」


 洒落? はて?

 洒落などを言ったつもりはないんだが。俺、何か言ったっけ。

 祐樹の言葉に不思議そうに返答すると、少し間が空いた。それから≪何でもない≫といいながら首を振る。その仕草の意味が分からない俺は、頭の中にはてなマークを浮かべながら眉を寄せた。

 因みに舞華だが、実は俺たちと合流当時は攻撃系の魔術は使えなかった。聖女という肩書のせいなのか、回復系や味方の身体強化、並びに敵の弱体化の魔術しか教わっていなかったらしい。しかし俺たちと合流したあと、先代のシーグヴァルドのデータからシュネが作り上げた疑似人格に師事した結果、攻撃系の魔術を使えるようになったのだ。

 かなりの適正があったようで、俺やオルなどあっという間に抜かされている。普段は、シュネやセレンがいるので攻撃系魔術を使う機会はまずない。しかし、間違いなく高レベルの魔術を使えるのだ。

 話がそれた。

 兎にも角にも、シュネたち五人が先陣を切るらしい。ならば俺は、祐樹やオルと一緒に打ち漏らしがあった場合の対応をするとしよう。

 やがて全ての用意が整った時点で、シュネたちが動く。一斉に出ると同じ魔術を放っていた。


『グラヴィトン』


 次の瞬間、五つに重なった範囲が形成される。そう思った次の瞬間、一斉に中枢の入り口を守っている敵ロボット全てが床へと押し付けられた。これは重力系の魔術で、一定範囲内に高重力を発生させるという魔術なのだ。

 元々もともと、扱いが難しい魔術だ。今回、五人が使っているグラヴィトンの魔術も重力魔術としては下級となるが、術としてのランクだと中級にカテゴライズされる。つまり重力魔術自体が、他の魔術に比べて全体的にワンランク上にカテゴライズされるのだ。そして、俺には使えない魔術だったりする。これは、オルも同じだ。祐樹は使えるらしいが、扱いが難しいと言っていた


「あーあ。完全に動けないみたい」

「そうだな、オル」

「……煙を吹いたぜシーグ」

「あ、小さいけど爆発したなぁ」


 その爆発を皮切りにしたかのように、次々と小爆発が起きている。そして爆発が起きた機体から、次々に目に相当する部分から光が消えている。どうやら、高重力に負けて壊れたようだ。

 しかし、全てではない。何体かは高重力に負けず、耐えている。だが耐えるだけで精一杯らしく、壊れた他の機体と同じように動くことはない。事実上、拘束されているのと同じだった。

 しかし、今の状況では俺たちも手を出しづらい。何せ、高重力の領域が展開されているのだ。あんなところに近づいたら、俺たちも高重力に捉われる。グラヴィトン程度ならデュエルテクターは壊れないし、俺も動きが阻害されるだけで動ける。だが、銃などのいわゆる飛び道具は高重力に捕まってしまうのだ。


「さて、どうするかな」

「シーグ、もうすぐ高重力の領域が消えるわ。あとは、お願い」

「あ、そうか。無限に、術が続くわけじゃないもんな。了解した」


 シュネの言葉を聞いた俺は、ガトリングを構える。当然だが、祐樹やオルも手にしている魔銃を構えた。他にもビルギッタたちアンドロイドやガイノイドが魔銃を構えたところで、魔術の効果が切れる。それと同時に、俺たちは一斉に手持ちの魔獣の引き金を引いていた。次の瞬間、ガトリングがアサルトライフルが擲弾が残った数少ない敵を蹂躙していく。機体に穴を次々に空けながら、まだ活動が可能だったロボットが沈黙していった。



 漸く、引き金から指を離す。それと時を同じく、最後の一体が倒れていく。機体は高重力で歪んだ上に、魔銃の集中砲火で穴だらけとなっている。それが、事実上のスクラップとなった敵ロボットの姿だ。しかもダメージは、敵ロボットだけではない。通路や壁にも、重力魔術や銃撃の痕が残っていた。


「……なぁ、シュネ。扉、大丈夫か?」

「え? えっと。うん。大丈夫よ、きっと」

「……本当か? まぁ、行けば分かるか」


 俺は一旦、ガトリングをしまう。それから念の為に短杖を構えると、マジックブレードを展開した。そのまま、扉まで近づく。もしかしたらまだ活動が可能な敵がいるかもと思ってしたことだが、幸いなことに動き出す気配はない。慎重に進んだ俺は、やがて扉の前へと辿り着いた。

 だが、その扉だが開く気配がない。一瞬ロックでも掛かっているのかと思ったが、どうやらさっきの攻撃で扉が歪んでしまったらしい。自動扉が開こうとする音は聞こえるのに、全く開く気配がないのだ。

 このまま扉の前に立っていても意味がないので、俺はマジックブレードをゆっくりと構えると袈裟切りに振るう。それから切った扉を手で押すと、斜めの切り口に沿って扉が向こう側へと倒れ込んだ。


「これで、入れるな。おーい、シュネ。先に入るぞ」

「あ、待って」


 シュネに声を掛けてから中に入るとそこは、実に様々さまざまな機器やモニターが並んでいる。その情景は、拠点中枢だろうと思うに十分だった。

 その後、シュネたちが入ってくる。しかしてその直後、音声が届いた。


「出テ行ケ」

「ん? 何か言ったか?」


 俺が尋ねると、みんなが首を横に振って否定する。だが、またしても言葉が聞こえてくる。その言葉は、あまり抑揚がない。いわば、機械染みているように感じた。


「ココカラ、スグニ出テ行ケ」

「シーグ。どうやら、そこのコンピューターみたいよ」

「……そう、みたいだな」


 さっきから出て行け出て行けと言っていたのは、制圧が終わった敵拠点の中枢にあるこのコンピューターみたいだ。多分だが、このコンピューターがこの拠点を司っているんだと思う。もっとも、今は物理的にネル率いる部隊が拠点各所を制圧しているので、司っているとは微妙に言い難いのだが。

 

「コノ施設、マスターガ建造セシモノ。ソナタラノヨウナ下賤ノ者ガ踏ミ込ンデヨイ場所デハナイ」

「……だってよシュネ、どうする?」


 相手がコンピューターだというなら、間違いなくシュネの出番だろう。だからこそ彼女に話を振ったのだが、するとシュネは一つ頷いてからコンピューターのコンソールへと近づいて行った。


「分かっているわよ、シーグ……さーって。始めましょうか!」


 そういいながらシュネは、首を回しつつも両手首を回している。まるでストレッチでもしたかのような仕草をしたあと、彼女は自身が持ち込んだコンピューターとこの拠点にあったコンピューターを端末で繋ぐ。それからシュネは、猛烈な勢いで空間投影されたキーボードを操作していった。

 その直後、部屋のコンソール取り付けられている大型モニターへ、次々とデータらしきものが現れては消えていく。その様子もさることながら、それ以上にシュネが打ち込むタイピング速度。さらには彼女の仕草から分かった、モニターに映るデータ認識速度に俺を除いてみんなは驚きの表情を浮かべていた。


「す、すげーな」

「いやぁ。本気に近いシュネは、久々に見たな」

「え? 本気じゃないのかシーグ」

「ああ。祐樹、その通りだ。本気になれば、もう一段か二段上があると思ったぞ。流石に俺も、そのモードとなったシュネを殆ど見たことはないけど」

「そ、そうなんだ……」


 そんな俺と祐樹が交わしている会話の間も、シュネは中枢コンピューターへのアクセスをものすごい速度で行っていたのであった。

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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