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第百二話~打破~


第百二話~打破~



 魔力波の反応があるところに到着たが、そこには何も見当たらない。しかし、相も変わらず魔力波の反応は変わらずに出ている。そのことを不思議に思っていると、シュネがその疑問を払拭してくれたのであった。





 先頭を切った俺が駆るキュラシエ・ツヴァイの周囲に、ビットを配置した。すると間もなく、敵の部隊からの攻撃が来襲する。俺はランダムに愛機を機動させて、避けていく。勿論、全てが避けられるわけではない。ゆえに比較的威力が弱いだろう攻撃はビットによる守りに任せて、威力が高いだけを避けていたのだ。

 やがて有効射程に入ったところで、攻撃を加える。まずは前線を崩して、それから奥へと進むのだ。それゆえに、まずは先行した俺が暴れる必要がある。俺に敵の意識を集中させ、後続の到着を待つのだ。やがて追い付いた後続の祐樹やオルたちと共に、前線を崩壊させる。そのつもりだった。

 そして間もなく、後続が追いついてくる。同時に彼らも、順次攻撃を始めた。だが、攻撃を行うのは前線の出た俺たちだけじゃない。さらには後方に展開しているカズサら四隻からの攻撃も、前線へ届き始めたのだ。流石はシュネとネルトゥースだ、的確に敵だけを攻撃している。これなら、安心して敵への攻撃に集中できるというものだ。

 味方からの的確な援護を受けつつ、俺たちも敵を討ち果たしていく。やがて前線の突破口を作ると、そこに攻撃を集中した。少しずつ敵戦力の穴を大きくしていき、やがて俺たちはできた戦力の穴へと突入したのである。こうして敵中に入れば、攻撃も緩むだろうと考えたからだ。

 しかし、その目論見は甘かった。何と俺や祐樹たちが敵中に入っても、攻撃は緩まない。何と敵は同士討ちすらもお構いなく、攻撃を仕掛けてくるのだ。つまり、味方の同士すら考慮に入れた攻撃を仕掛けてきたのである。まさか敵味方お構いなく攻撃してくるとは、流石に想定していない。そのことに思わず驚いてしまうが、実はそれだけで済んでいた。

 それというのも、敵の攻撃全てが当たるわけではないからだ。俺の機体や祐樹たちの機体にしてもそうなのだが、ビットによって形成されたエネルギーシールドで敵の攻撃を弾いているからである。かといって、シールドが防げないほどの攻撃を俺たちの操る機体に当てることは、それこそ難しい。相対速度の関係上、敵が標準を付ける前に移動してしまうからだ。その為、損害らしい損害は俺たちには出ていなかった。


「どういうことだよ、こりゃ!」


 急旋回することで、敵からの攻撃を避ける。その回避運動中でも、攻撃して敵を撃墜するのだが、まだ敵の方が多い。雲霞うんかのごとくなどとはいわないが、標的に困らない状況であった。


≪シーグ、聞いて≫


 バレルロールを駆使して敵を回避しつつ、すれ違い様に一撃を加えて撃墜する。その直後、機体を引き上げて天頂方向に機首を向けたその時、シュネからの通信が入る。視界の先にはちょうど腹を見せている敵がいたので、返答すると同時に攻撃して撃墜していた。

 まだまだ周囲に敵はいるが、立て続けに敵を撃破したことで返答できるぐらいの余裕ができる。すぐに俺は、シュネへの通信を繋げていた。


「何だシュネ! 手短に頼む!!」

≪推察でしかないけど、敵は無人兵器だと思うわ。そう考えれば、攻撃に容赦がないのも分かるわ≫

「それでか!」


 こうなると、厄介だ。

 何せ敵中に飛び込んでも、相手が攻撃を躊躇ってはくれないからである。フレンドリーファイアー上等の攻撃をしてくるからだ。寧ろ、敵中に入った方が劣勢になるだろう。そして実際、俺たちがその状況に陥っているのだ。

 まだビットのエネルギーシールドが機能しているので問題はないが、いつまでもエネルギーシールドが保てるわけでもない。この状況で攻撃を食らい続ければ、いずれはエネルギーシールドが破れてしまうのは必至なのだ。


「となれば、だ。シエ!」

「はい、シーグヴァルド様」

「オーヴァーロード、起動!!」

「ラジャー」


 俺はビットによるシールドを解除すると同時に、オーヴァーロードを起動する。総数で六基のビット事態は機体の周囲に展開したまま、敵中を縦横無尽に飛行していく。敵が全て無人というならば、士気の低下など望めない。ゆえに、全滅させる必要があるのだ。


≪シーグ! 最大パワーで魔術陣砲を撃つわ!!≫

「了解! 派手にやってくれ!!」

「撃てー!」


 俺が魔術陣砲の軸線上から外れて間もなく、カズサの艦首部分に魔術陣が展開される。その直後、魔術陣が光ったかと思うと魔術陣砲が咆哮した。真っ直ぐ突き進むその一撃は、軸線上に存在している全てを光の帯の中に取り込み致命的な損傷を与えていく。連鎖的に爆発が起き、次々と灰燼と化していくのだ。

最終的に魔術陣砲の一撃は、敵の拠点と思われる小惑星に直撃していた。その一撃により、小惑星の一部が消失する辺りは流石の威力である。しかも魔術陣砲の光は消えておらず、そのまま虚空へと突き進んでいったのだ。


≪ふぅ≫

「かー。シュネ、本当に派手にやったなぁ」

≪何よ。派手にといったのはあなたでしょ。それより、敵の撃滅をよろしくね≫

「おう」


 魔術陣砲によって強引に開けられた布陣の穴を埋める為だろう、敵が集結してくる。その敵に対して、俺はツヴァイを吶喊させた。勿論攻撃を受けるが、オーヴァーロード起動中のツヴァイであり、その攻撃が意味をなすことはない。全ての攻撃をはね返すなり無効化するなりしながら、同時に攻撃を加えて敵機を落としていく。それらの攻撃を受けても耐えるような相手には、体当りをして落としていった。

 俺たちからの攻撃、さらにはカズサなどの艦船からの攻撃を受け続けている敵は、次々に宇宙の藻屑となっていく。勿論、味方に損傷がなかったわけではない。実際、艦船の護衛の役目を持つ無人機のキュラシャーは、何機か撃破されているのだ。

 それに二隻の大型駆逐艦も小破と中破の中間ぐらいには損傷を負っているし、新造の工作艦もまだ新しいにも関わらず小破ぐらいには損害を受けているのだ。だが、流石と言っていいだろう。戦艦でもある旗艦のカズサは、殆ど被害らしい被害は受けていなかったのだ。


「あとは、あいつらだけか」


 魔術陣砲の一撃で四分の一ほどが消滅している小惑星の前には、大分数が減った敵小型機と、一隻の大型の宇宙船が立ち塞がるように展開している。大きさとしては、カズサよりは小さい。だが、小さいといってもそれ程差はなかった。


「全長としましては、六百十三メートル。カズサと同様、戦艦クラスかと」

「戦艦クラスか……やっぱりな」


 シエの解析を聞いた俺は、試しにミサイルによる攻撃を加えてみる。実はエネルギーシールドの特性として、ミサイルなどのような物理を主体とした攻撃に弱いというものがあるのだ。これは基本的にビームなどのエネルギーによる攻撃が主流なので、そちらに防御特性を偏らせた結果らしい。ただこれは比較的な問題でしかなく、エネルギーシールドの出力が高ければたとえ物理攻撃であっても防がれてしまうのだ。

 そして残念なことに、俺が放った六発のミサイルは、全て敵船の張っているエネルギーシールドによって阻まれてしまっている。一応明滅はしていたようなので、負荷は掛かっているだろう。しかし、打ち破れるのかと言われると不安が残ってしまうのも事実だった。


「シュネ。魔術陣砲で破壊できるか?」

≪ごめんなさい、今は打てないわ。損傷してしまったの≫

「マジか!」


 カズサに、被害らしいものはなかった。だが、ほぼ唯一と言っていい被害を受けたのがよりにもよって魔術陣砲が持つ機能の一部だったらしい。応急処置はしたらしく、その故障が原因となって他に損害が出ることはもうない。しかし魔術陣砲を復活させるには、ちゃんと修理をしなければ無理らしい。少なくとも、戦闘が終わるまでは無理だと返答されてしまった。


≪シーグ、お願いね≫

「……分かった。シエ、くぞ!」

「了解です。敵の迎撃はお任せください」


 いまだ稼働中のオーヴァーロードを展開したまま、敵の船へ吶喊する。当然のように攻撃が来襲するが、敵からの攻撃への対応はシエに任せて俺は愛機の操縦に集中する。敵艦の周囲にいた小型艦はシエの反撃や追随した俊やオルたちが撃破していた。

 一方で俺のツヴァイだが、敵船に近づくに従って徐々にオーヴァーロードを稼働することで機体周囲に展開しているエネルギーが消えていく。これはエネルギー不足などではなく、ちゃんとした理由があった。

オーヴァーロードによって発生しているエネルギー光が薄くなるに従って、ツヴァイの左腕に装着している盾の裏側にあるパイルバンカーの光が増していく。その光はやがて、パイルバンカー自体を覆うようになっていた。

 頃はよし!


「食らえ! ハイパーパイルバンカー!!」


 これは、オーヴァーロード稼働中にしかできない攻撃だ。オーヴァーロードによって生じる全てのエネルギーをパイルバンカーに集め、そのエネルギーと共にパイルバンカーを撃ち出す。過去の実験では、相手が物質だろうがエネルギーだろうが等しく破壊することができた攻撃なのだ。そして、それは今回標的となった敵艦のシールドであっても同じだった。一瞬だけ敵船の張るエネルギーシールド全体にひびが入ったかのように見えた気がしたあと、まるでガラスが砕けるように壊れていったからだ。さらにハイパーパイルバンカーによる攻撃で、船体にも損傷が出ている。だが、俺の攻撃もここまでだった。


「オーヴァーロード解除。エネルギー強制排除します」

「ちっ! やっぱりか」


 理論上、まだ少し稼働できる筈のオーヴァーロード状態が解除された。やはり、ハイパーパイルバンカーを使用すると強制的に解除されてしまう。それだけ、機体への負担が大きいのだから仕方がないのだけれど。

 しかも、ツヴァイの動き自体が鈍ってしまうのだ。エネルギーを強制排除中でも、一応動けはする。しかし性能は、二割から三割は落ちることになるのだ。すると当然だが、手持ちの武器の性能も落ちてしまう。性能が落ちない武器は、実体弾であるミサイルと魔力を展開させない状態のマジックエッジ、つまり斬艦刀ぐらいだ。

 ただこの状態でも、敵が巡洋艦程度までならどうとでもなるだろう。しかし、今の敵は戦艦だ。流石に、その装甲を貫ける自信はないのだ。だから俺は、助力を頼むことにする。


「みんな、頼んだ!」

『了解!!』


 オルや祐樹たちから力強く返答される。直後、彼らの駆る機体が敵船へと迫っていく。同時にカズサと工作艦からも、攻撃が行われていった。流石にこれだけの集中砲火には、耐えられない。敵艦は光の中に消え、ついには爆散したのであった。

 因みに、俺は最後の攻撃には参画していない。性能が落ちているので、万が一の事態が起きないとも限らないからだ。ゆえに、安全圏へ避難していたというわけである。


「巻き添いは御免だからな、桑原桑原くわばらくわばら

別連載の「劉逞記」もよろしくお願いします。

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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