追憶(3)
職場体験2日目、私はまた、かおるちゃんのお絵描きを眺めていた。朝の会が終わって2時間が過ぎて、ちょうどトイレに行く子が増えてきた。昨日の失敗を繰り返さないために、私はかおるちゃんに声をかけた。
「かおるちゃん、トイレ大丈夫?」
「まだ、いい」
昨日と同じ絵を書きながら、かおるちゃんが答えた。そして、昨日と同じようにその手が止まる。でも昨日と違うのは制服のキュロットは汚れていないのだ。まさかと私は思った。確認のために行動を起こす。
「かおるちゃん、ごめん、1回立って」
かおるちゃんは素直に立ち上がる。
「ちょっとごめんね」
キュロットの隙間から股の方に手を伸ばす。手の感覚でやっぱりと思う。
「かおるちゃん、汚れてるから交換しよう」
「ーうん」
少し間があってかおるちゃんは答えた。
そういえば、保育園のトイレを覚えているだろうか?私はうっすらと覚えている程度だが、便器が大人用の1/2程度のサイズしかない。使うのは幼児なのだから当たり前なのかもしれない。個室になってはいるけどカギもかからないし、高さも天井の半分くらいまでしかないので、大人なら楽に中を覗くことができる。そんな個室の1番奥に洋服売り場の試着室のようなスペースがあった。昨日のかおるちゃんみたいにトイレに失敗した子のための場所だ。昨日に引き続き今日もかおるちゃんを連れてきた。お股を綺麗に拭いて、パンツタイプのオムツを履いてもらう。
「昨日はパンツじゃなかった?」
「うん、でもママが失敗する子は赤ちゃんだから、オムツしなさいって・・・」
少し恥ずかしそうに答えた。私はうつむいた。
(私の不注意のせいで?)
聞けずに飲み込んだ言葉。
なんとなく申し訳なくて、その後は黙って言われた事に集中した。翌日は体調不良を理由にして、職場体験を休んだ。かおるちゃんも同じ思いだったのか休みだったとカンナから聞いた。




