その後(1)
だいぶ説明不足だし。でも蛇足になってるかも。
実は保健室に来たのは初めてだった。
保健室の先生は誰かと電話で話していたみたいで、スマホを着ているポケットに入れながら私を迎えた。
「2-2の平野さんね」
コクンとうなづく私。ここから先は出たとこ勝負。もう計画のレールはなかった。ただ、そのレールに乗って走ったスピードが残っている。
「授業中だった奥田先生から、さっき連絡を受けています」
さっきの通話はどうやら私の事だったようだ。確かアラサーの先生は続けた。
「授業中に突然だったって聞いてるけど、どうしたの?」
「実は」
少し困った表情を意識して作った。
「実は体育祭の練習で結構トイレを我慢したせいか、その、あの・・・」
それ以上言わなくていいよと伝わるような、そんな笑顔を先生は作った。初対面なのに安心するような笑顔、言い淀んだ私の続きを語り出した。
「おしっこすると痛くなって、さらに我慢するようになった?」
ぶんぶんという勢いで私は肯定の意味でうなづく。
「なるほどトイレ行列、長かったもんね。で、実はトイレも近くなってるんでしょ?」
ふたたび肯定。
「膀胱炎だろうね。しかもそれでおもらしって重症かも、わかった。まずは着替えようか」
そう言って準備を始める先生。
「いやー、おとといが体育祭でよかったよ」
と言って奥のベッドの一部分にレジャーシートを敷いた。
「スカートとパンツを脱いで座ってて、カーテンは閉めておくから」
言われた通りにして待つ事5分、もちろん下半身は何も着けていない。カーテンでわかんないが戸棚を開ける音が聞こえる。
「替えのパンツはあるんだけどね、スカートの予備はないわ。ハーフパンツで我慢してね」
と言いながらカーテンの隙間から渡された物を見る。なるほど、サニタリーショーツだった。これなら高校にあっても不思議ではない。
「ちょっと、担任に話して早退許可をもらうから、ヒマなら横にでもなっててね」
そう言い残すと保健室はしんと静かになった。やる事もないのでベットに横になる。遠く音楽室からだろうか、オルガンのメロディーが流れて懐かしい気持ちにさせた。




