表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私の一番古い記憶


私の一番古い記憶を、忘れないうちに、劣化しないうちにここに書き留めておこうと思う。


私の記憶を書き記すに当たって注意事項というか何というか、知っておいて欲しいことがある。


この記憶は一番古いと言っているように既に、あやふやで、よく分からなくなっていて、虫食い状態だ、多少の脚色やあやふやな表現などがあるかもしれない。


だが、大筋だけは今でも確かに憶えている、それだけは断言しよう、だから間違ってはいないはずだ。


それと、私は語彙力というもの、文章力というもの、表現力というのにも自信が無い。

だから、文法がおかしかったり、字を間違えていたりしても、読みづらかったとしても見逃して欲しい。



さて取り敢えず書いていこう、私の記憶を。



――――――――――――――――――


先に言っておこう、これは『夢』だ。

恐らく物心というのもがついた時から―つまり物心がつく前に見た夢―有る物で、初めての『怖い』という物を知ったものでもあり、今でも不思議に思っている物だ。


私は『隠れんぼ』をしていた、鬼役は父で私は一人で和室の何かに隠れていた。

正直、今思い出しても全然隠れてなどいないと思うのだが、まぁ夢なのだから隠れられていたのだろう。


その後、()が私を探して背を向けている間にリビングにある炬燵―布団はかけてなかった―に駆けて隠れたが、そこには丁度母が居た。


そのまま少しの間―何秒も経たっていないが―一緒に隠れていたが、()がリビングに入ってきた瞬間、私は何をトチ狂ったか()と入れ違いになるような感じで和室に戻り、先程まで隠れていた場所に隠れ、()が来たが先程と同じ様に、入れ違いになる様にしてリビングの炬燵の(した)に隠れるということをしたのだ。


恐らく途中で―()がリビングに入った瞬間―『隠れんぼ』から『隠れ鬼』に変わったのだろう。


補足しておくと、リビングから和室に行くルートは一つしかないため、()の真横というか真下を通っている。

イメージとしては青い鬼から逃げる、あるゲームにある小技みたいなもの、ドアを使って青い鬼から逃げ切るあの方法がイメージとしては近いだろう、特に何故か捕まらない感じが。


その後炬燵の下で母と一緒にしばらくの間―全然時間など立っていないのだが何故か、とても長い間待っていた印象がした―待っていたら()がリビングに戻ってきた、勿論私を見つけるために部屋中探し回るが炬燵は調べようとしないのだ。


正直言って炬燵の下ぐらいしか、見つかる見つからない関係なく隠れる場所などないのだが調べず、絶対見えているのに見つからない、その様な感じだった。


あえて言うなら、理由をこじ付けるなら『夢』だからだろう。

『見つかりたくない』という思いが、不自然なほどに調べようとせず見えているはずなのに見つかっていない、というのを発生させた。


だがその時の私は不自然に思わなかった、「よかった、見つかってない」としか思っていなかった。

理由としては『夢』で説明がつくため省略するが、安心して欲しいこの夢はもうそろそろ終わる、見つかって終わる。


そのまま少し経った時遂に母が見つかった、()が炬燵を覗いてきて母が見つかり炬燵から出て行った、だが私は見つからなかった、隣にいたのに見つからなかった。


この文章だけを見ると誰にも見つけてもらえず、不安が募るかもしれない。

だかその時の私は不安など全くなかった、むしろ「良かった、まだ見つかってない」と思っていたから。


だが終わりはすぐに迎えた、父なのか母なのか、今では憶えていないが炬燵の下を覗こうとしていたのを、炬燵の下から隠れて見ていた私はその瞬間「あ、見つかった」と思った、あるいは悟ったのだろう。


兎に角、私は『隠れんぼ』が終わるのが分かった、だか別に悔しくなかったし惜しい気持ちもなかった。

あったのは「楽しかった」という気持ちだったと思うし、頬も緩んでにやにやしていただろう。


だがその感情は、『それ』の顔を見た瞬間砕け散った。


私のその時の気持ちは、「怖い」だった。

炬燵の下を覗いてきた『それ』は父でも母でもなく、『鬼』だった。

紛うことなく『鬼』だった。

赤い顔をした般若の様な、怒った様な顔をした、怖い顔だった。

その時の私は背筋が凍る様な感覚と共に何もせず、ただただ怖い顔だと思っていた。



そして『夢』は終わった。



――――――――――――――――――


夢が終わった瞬間、気がつけば私は部屋の移動をしている最中だった。

部屋の移動と言っても私の家の事ではない、保育園の事だ。

二、三歳の頃進級して場所が変わる為、前の子の肩に手を置きヨチヨチと歩いて移動していたのだ。


今思い出したらとても恥ずかしい物だ、恐らく時系列で言えば最初の黒歴史だろう。


考えても見て欲しい、歩いて十秒もしない隣に移るだけの道を、ヨチヨチヨタヨタと前の子の肩に手を置き、肩に手を乗せられながら列を作って歩いているのだ。

側から見れば可愛らしい光景だろうがその中に自分がいる姿―二、三歳の姿―を思い浮かべて欲しい、恥ずかだろう?


兎も角、これが『私の一番古い記憶』だ。


最後に、私にはこの夢の四つの不思議に思う事が有る。


一つ目は、私には姉と兄がいるのだがこの夢の中には出てこないこと。


これについては、仮説をつける事が出来る。

私はこの夢が覚めた、或いは物心というのがついた時、何も分からなかった。

自分が誰で、此処はどこなのかすらも分からなかったが、流れに任せて流れていた。

だから知らなかったのだろう、いや、憶えていなかったのだろう。

姉がいる事を、兄がいる事。


これが、姉と兄が夢の中に出ていなかった理由。


二つ目は、和室とリビングの間には『玄関』『階段』『物置の扉』が有るのだがそれがこの夢の中にはない事。


三つ目は、夢の中のリビングの模様が覚えている限り当時と殆ど同じだが炬燵しかない事。


これは、仮説つける事は出来ない。

何故なら既に穴が空いているから、どのような感じだったのかが分からない。

精々分かっている事は、炬燵があったのは確かに憶えている事、当時あったものは夢の中でもあった筈だが思い出せない事。

だが二つ目と三つ目同じ理由だろう、それだけは分かる。


四つ目、これが一番の不思議だろう。

この夢から覚めた時、或いは物心がついた時はこの夢しかハッキリと覚えているのが無かった為、ずっと憶えて思い出していた。


この夢について考えてはいなかった…いや、考えてはいたのかもしれない。

ただ考える為に、思い出していた時に気づいたのだ。


私は父と母の顔を見てはいない。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ