私たち、入れ替わってます! 〜無実の罪で断罪されそうになった悪役令嬢は固有魔法・ボディーチェンジでヒロインの体を乗っ取り窮地を脱しましたが気付いているのは当人達だけです〜
あ……ありのまま今起こったことを話すわ『私は階段から転げ落ちそうになったと思ったら、階段から転げ落ちていく私を私が見つめてました』なんで? なんで?! 異世界転生とか逆ハーレムルートとか精神交換とか想定外でチャチなシナリオの片鱗を味わったわ――じゃ、なくてっ! せっかく死後乙女ゲームの世界に迷い込めたから食う寝る遊ぶの三連コンボ生活を送ろうとしたのに、最後の仕上げでこんな事態になるなんて。いえ、まだ慌てる段階じゃない。伊達に全クリしてないわ。そう! いよいよ物語も終盤。ヒロインが悪役令嬢に階段から――突き落とされたように見せかけて――転げ落ちたところを攻略対象の王子様が優しく受け止め甘い言葉を囁いたら、さあお待ちかね断罪タイム! お前の罪を数えろとばかりに階段の上にいる婚約者の令嬢を睨みつけた王子様の次の決めセリフはこうよ「お前との婚約は破棄する!」って、だから今それを言われているのは私なんだってえ! ああ……裏でずっとスタンバってましたとばかりにヒロイン信者がわらわらと、どこからか集まって私が事前に用意した悪役令嬢の濡れ衣を並べていくわ。しかも『嘘に反応して電撃ビリビリを浴びせる水晶』みたいなファンタジーなアイテムまで使って『嘘は言ってないけど本当のことも話してない雇われ証言者』を多数用意して言い逃れすら許さないような罠にハメるなんて、まったく酷いことするわね。いったい誰の差し金かしら。私よ! この私! 文句しかないわ! 完全に詰んでるじゃない! しかも現ヒロインは嘘以前に何も喋らなくてもただ震えてるだけで周りが勝手に好解釈してくれるし、なんて小ズルいのかしら。散々その仕様を利用した私が言うな? 言うわよ! こうなったら私達の体が入れ替わっているとこの場で証明して本物のヒロインは誰なのか分からせてあ・げ・るっ! みんな、聞いて! 私があ゛あ゛あ゛あ゛ごめんなさい゛い゛い゛い゛本当の私はヒロインでも悪役令嬢でもないただの一般モブなんですう゛う゛う゛う゛だから電撃はやめてえ゛え゛え゛え゛終わった……もうおしまいよ。私を捕まえる為に集まったはずの衛兵達が次々に抜剣していくわ。仕方ないわよね。だって今ここに居るのは悪役令嬢の外見をした不審者だって証明されたし、この場で切り捨てられても文句は言えないから。でも言うわ。こんなの絶対おかしいの! どう見ても間違ってザクザクシュババ。私はまた死んだ。かゆぅま。