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御手洗幸助
患者番号06680:御手洗幸助
彼はいつかの児童誘拐騒動の時の被害者の1人らしい。
7才の時に誘拐され、遠く離れた紛争地で10年間も少年兵として革命に参加していたらしい。紛争を重く見た国連が自衛隊を派遣し介入、それによって彼の存在が明らかになったようだ。
彼は日本語を覚えてるようだ。子供の時以来なので流暢という ほどでもないが、日常会話程度なら差しつかえない。
少年兵時代の事を聞いてみる。彼は何となく落ち込みながら思い出を連ねて行く。
一通り話したら次は家族の事を聞いてみる。家族に会いたいか、と。
彼は首を横に振った。
辛く思い出したくもない10年ではあった。それでも仲間はいて、仲間といるときは楽しかった、のだそうだ。自分だけ家族と会うのは気が引けるのだそう。
しばらくはこの施設で様子を見ようと思う。紛争地なんてところに長いこといて、いきなりコンクリートジャングルに放り出すのは酷だと、私は思う。




