日報15
今回は長いよ
5月5日。
幸助に少年兵時代のことを聞いてみる。
話してもいいが条件がある、と私のピアニッシモをねだった。
火をつけて静かに息を吐きながら話始める。
誘拐され、チャイルドソルジャーの部隊に配属された頃、麻薬を砕いて作られたスティックとAKを渡されて、まずは縛り付けられた人間を撃てと命令された。撃たなければ殺される、そう思って引き金を引いたらしい。
それからその殺した兵士の断末魔がフラッシュバックし、眠れる夜はなかったらしい。
でもいつしかそれも麻薬で薄れて行く。戦闘を重ねる度に功績をあげ、自分が部隊を率いるようになった。
自分と同じく誘拐された子供、食いつなぐために自ら志願した戦争孤児、そんな地獄の用な世界で幸助は必死に生き抜いてきた。感情を無くし、言葉を捨て、ただただ生きるための合理的な適応を繰り返す。
国連の要請で日米合同部隊が派遣され、その国での戦争は終わり、全ての武装は解除された。
だが自分を誘拐したやつらに復讐しようと隠し持ってきた武器を自分の部隊に与え、幸助は戦いを挑んだ。
だがそれは国連軍によって阻止された。
虐殺と、拷問と、強姦の世界は終わりを迎えた。
幸助は逮捕され、日本へと強制送還された。
そして今に至る。
不思議なのは、幸助は麻薬を日常的に服用していた。だがそれによる中毒症状や後遺症がまったくないこと、今こそタバコを吸ってはいるが、かつての麻薬常習者たちとはかなり異なっている。
ピアニッシモと言うのは、女性向けのタバコの銘柄です。