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004 体育館へ

「んぎゃー!」


「うそだろー」


「信じらんない」


「ホェ?」


「やばくね」


「動画とんなきゃ」


「なんなんだよあれ」


我にかえった生徒たちが慌てふためく。そりゃーそうだ。俺だって信じられない。こんなことが起きるはずがない。これは夢だ。絶対に夢だ。と、その時、校内放送ののんきなチャイムがなった。


ピン、ポン、パン、ホーン。


最後の音が必ずずれるので調子が狂う。


『緊急連絡です。ただいま、正体不明の物体がグラウンド上空を飛行しています。生徒たちは落ち着いて体育館へ移動してください』


八重原やえばら先生!大丈夫ですか?」


八重原やえばらいづ先生は教卓と黒板の間に、トドのような巨大な姿で、お腹を上にして倒れていた。さすが山下陽やました よう。素早い。イケメンは基本、どんな女にもやさしい。やつらが女子の心をわしづかみする生まれ持った習性だ。


健太けんた。手伝え!」


って俺かよ。みんな逃げているじゃん。


「先生、大丈夫?気を確かにしてください!」


 石田三美いしだ みつみは教室の前に置いてあった花瓶を手にしていた。花を抜き取り、中の水をためらうことなく彼女の顔にぶちまけた。


くっ。くさい!腐っているだろー。花瓶の水だぞ。


 あたりに金魚が死んだときのような匂いが立ち込める。たまらず八重原いづ菜先生が覚醒する。俺ら3人はトド先生を追い立てながら教室を後にした。


 体育館に全校生徒数2400名が集められた。その光景は何度見ても圧巻だ。俺たちは、まだうる憶えの生徒の顔を頼りになんとか2年8組の場所についた。パトカーが街中を走り回っている音が響いてくる。学校の外もパニックになっているのは間違いない。


『生徒の皆さん。お静かに。校長先生より重大な発表があります』


 静まれったって無理だろ。ありゃ、どう見たって宇宙人の襲来じゃんか。


『黙りなさい!死ぬわよ』


 校内放送の先生がキレた。死ぬわよ!の一言が効いた。みんな静まり返る。校長先生が壇上に立ち、マイクを握った。


「えー。先ほど宇宙人から全世界に向けて発表がありました。わが校の生徒のスマートフォンにラブレターを送ったとのことです。各自、自分のスマートフォンを確認してください!」


はぁ?なんだ、この意味不明な展開。地球を滅亡させにきたんちゃうんかい。って、まさかさっきのメール?生徒たちはもはやパニック状態で自分のスマホを取り出した。俺も恐るおそる自分のスマホの画面を確認する。


『ずっと、ずっと好きでした。お願いです。私とつき合ってください。差出人:宇宙人』


やっぱり。俺は震える指でメールの見出しをクリックして、本文をスクロールした。


『こんにちは。宇宙人です。突然でごめんなさい。私、ずっとキミのことを月のかげから見守っていました。だって、ベランダのキミ。かわいいんだもの。いつ告白しようか。何度もなんども悩みました。私の心のときめきは、もう押さえ切れません。私はキミが好きです。宇宙一、大好きです。つき合ってください。お願いします」


はあーっ。やっぱ、俺じゃん!てか、なんで俺なわけ?他にイケメン男子がうようよいるだろ。俺はスマホをポケットに隠して辺りを見回した。

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