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019 石田三美

 私の幼なじみに山田健太やまだ けんたと言う名の内向き少年がいる。正直、小心者でいつもうじうじしていて、男の子としてまったく頼りない。同じマンションに暮らしていることから同じ保育園に通っていた。その頃から健太をいびるのが私のライフワークとなった。


 小学校の時の彼のあだ名は『3階』。私が名づけた。彼の家族がマンションの下層、3階に住んでいるからだ。私は家族と同じマンションの21階に住んでいる。高層マンションの下層に住む意味ってなんだろう?景色がいいわけじゃない。意味わかんない?でも彼は3階にふさわしい住人で、絶妙に彼のことを一言で言い表していた。


 まあ、私のネーミングのセンスの良さは置いておいて、当然のことながら保育園から小学校、中学校へと山田健太と同じ学校に通うことになった。それ以来、ずっと彼と同じクラスに振り分けられている。おかげで彼をイジルことは私の最高の気晴らしになった。


 私は賢い。自慢じゃないが、いや、思いっきり自慢だが。クラスが変わるごとに山田健太を最下層部下に従えて、クラスメイトを私の傘下に収めていった。石田三成、安土桃山時代の大名の一人で、豊臣秀吉を陰で操った武将。私、石田三美が唯一尊敬する策士だ。腕力勝負の戦国時代に頭で戦うなんて、あー、三成様。戦国武将、イケメンアプリが手放せなくなるわけだ。


 話がそれた。私と山田健太と共通の幼なじみとしてもう一人、山下陽やました ようがいる。彼も同じマンションの30階の住人。保育園の時からたぐいまれなイケメン。って言うか美少年と言うべきか。それはもう、ヤバイ。よだれが出てきた。


 二人がなぜ、毎回同じクラスかって。ふふ。私の策略のたまものなのだよ。校長先生はもとより用務員のおじさん、給食のおばさんまでネットワークを張り巡らせて担任に圧力をかけたのさ。世の中、私の自由にならない人間は山下陽だけだ。こやつの顔を見ると知恵が鈍る。


 山下陽が好きかって。断言しよう。私は山下陽が大っ嫌いだ。あの顔は欲しいが。くー。あの首をはねて私のものにしたい!置物として飾っておきたい。ヤバイ。また、よだれが出てきた。あいつの顔を思い浮かべると思考が腐る。あの顔は人間をダメにする麻薬なのだ。間違いない。


 と言うことで、中三になった時、進路指導で私はハタと気づいた。


「石田さん。キミの成績なら都内のトップレベルの進学女子高にも合格できる。お家の方も十分な所得があるようだし、ここは一つ、聖徳女学院でもチャレンジしてみないか?」


「はぁ。女子高ですか?」


男子いないんかい。私の秘めた能力がいかせないじゃん。


「合格できたら、わが中学校始まって以来の快挙だぞ!学校を上げて応援するなだがなー。先生も鼻が高いし」


「お断りします」


正直、学校の名誉も先生もどうでもいい。そんなことのために、私は必死で勉強してきたわけではない。私が欲しいのは・・・。んっ。なんで。なぜに、山田健太の顔が浮かんでくる。それはない。絶対にありえないぞ。石田三美、気でも触れたか?


「あのー、先生。山田健太はどこの高校を受けるって言ってますか」


なっ、何を言っている。石田三美。あやつは最下層の部下。この私とは天地が裂けても釣り合わない。天使がネズミに恋するようなものだ。


「・・・。驚いたな。石田、お前まさか、山田健太が好きなのか?」


「はい」


『はい』って何を認めているのだ。今、殺す。すぐ殺す、石田三美。むぐー。胸が苦しい。私は山田健太が好きなのか?心の奥底から声が聞こえてきた。


『はい』


「そうか、青春だな。山田健太は私立松原高校だ」

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