3 馴染んだ
「なあ、なーちゃんはここで一人暮らしなんだよね?」
「そうですよ。2年目になりますね。」
そういえば、なぜ我が家なんだろう。養ってもらうには女子大生の一人暮らしよりもっといい家があるはずなのに。
「一人暮らしってわかってたから、あそこで寝てたんだけどね。」
それは、すとーかーってやつではありませんか。サタンの子に不可能はないってことでしょうか。やはり危ない人と推測したのは、間違いではなかったようです。
出逢って1週間がたった頃になると彼のことがわかってきたように感じるのでした。彼、あきとさんは、思った以上に生活が出来る人でした。料理もある程度の家事も出来る人でした。私の本業が、学生とわかってからは、課題中に声をかけることがなく、私の手が止まっている時には、朗らか笑顔で、話しかけてます。
「なーちゃん、明日の晩御飯、なにがいい?俺、なんでも作るよー?」
タブレット片手に、家にある食材、スーパーで手に入る食材を考えています。あと、思った以上に話をするのが好きみたいです。沈黙も平気な様子ですが。
日記帳にはこんな感じで、学校であったことの横に、今日のご飯のメニューだとか、何気なく言った一言とか書いて、観察日記が出来ています。
「今日は、俺特製のオムライスだぜー!」
今日も、おいしそうな夜ご飯です。食卓を誰かと囲むのは久々なので、毎日楽しいです。
この日常は、あまり友達に言いにくいのです。玄関先で寝ていたホームレスでストーカーかも知れない異性を家に入れて、共同生活をしているなんて、非日常です。あの人懐っこい笑顔に、私の非日常が日常になっていくのです。