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サタンと私の過ごす日々  作者:
季節:春
2/3

2 名乗った

 起きた男性は、一つ伸びをして、私に向き直った。

「あれ、俺、寝ちゃってた?」

「それは、もうぐっすりと寝ていましたよ。」

「そっか、ごめんね。」

そう言って私の前に立った。


 所謂、華の女子大生なんて言われる職業の私だが、進学したのは女の子だらけの、女子大だった。入学してから、男性と話すことが極端に減った。今こうやって見下ろされて、どうやって声をかけようと次の句を考えているだけでも、少し緊張する。手に汗が浮かんでいる。

「俺、サタンの息子なんだぜ?怖いだろ?」

自己紹介というよりかは、自慢のようにそう言った彼だったが、明るい笑顔で言う内容ではなかった。むしろ、「俺、天使の息子なんだぜ」と言われた方がいい位の眩しい笑顔をしていた。

「それで、サタンの息子さんのお名前はなんていうんですか?」

引きつったり変な顔にはなっていなかっただろうか。

「あ、そうだった。俺は…、あー、うん。あきとって言うんだわ。まあ、よろしく。」

「よろしくおねがいし、って何をよろしくされるのでしょう?」

「んとまあ、俺のお世話?俺、家ないからさ!しばらく置いてみない?」

考えていた通りのホームレスなお兄さんだった。お金持ちだとか、危ない人ってところも当たってしまうかもしれないが、これで、断ったらどうなるのだろう。



 いや、あまり考えないで過ごしてみよう。案外バカになって楽しんでしまった方が、いいことだってあるはずだ。そう決めて、彼を受け入れてみることにした。

「それで、君の名前は、って思ったけど、俺が決めてしまおう!」

名乗ろうとしていたから、あだ名を付けてくれるようだ。受け入れることを決めた時点で彼のすることに対して、少し寛容になっていた。

「よし、君は、俺のなーちゃんだ!!」

なーちゃん、なーちゃん…?名前を名乗っていないだけあるが、名前に、なはつかないものだから、彼の主観は面白いものだなと受け止めた。


 そんなわけで、彼の前では、私はなーちゃんと呼ばれることになったのである。そう、私はなーちゃん。それから数日、起きた後と寝る前に、自己暗示して自分に馴染ませていったのは、彼には教えてやらない事実である。

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