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オマエやキミとアナタで僕達  作者: 生月 太郎
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第16話 リベンジャー田中

今回も見事KING PURINをゲットすることが出来た。

また、あの極上の味が楽しめるとなると………………

今から涎が止まらないよ!

さてさて、今日KING PURINを取ってきたのは決して僕が独り占めする為じゃない。

せっかくだからこの味を天音にも知ってもらおうとしたんだ。

どんな顔するかなー。

軽くスキップして天音の所に向かうと既に、天音は面白い顔をしていた。


「ブフォ!」

「……何よ…」

「だ、だって……あまあ、天音…その顔………………」

「あんまり笑うとプリンとサヨナラすることになるわよ」

「僕が笑う?ハッ!つまらない冗談はよしてくれないか」

「掌返しが早いわよ………………」


それ前にも海斗に言われた。

でも、せっかく取れたプリンなんだ。

死守しなければならない。

さてさて、何故僕が先程吹き出したのか言っていなかった。

理由は天音が魂の抜けたような表情だったから。

意外とレアなんだよ?

あの表情は一度しか見たことがなかった。

それは、中学校の時━━━━


『天音〜テストどうだった〜?』

『………………』

『天音?どしたの』

『……まえ………………』

『ん?前?』

『名前……書き忘れた………………』

『………………』

『………………』

『ブフォ!』

『あぁ?(怒)』

『ナンデモナイヨ』

『何か腹立つから殴らせて』

『理不尽だぁぁ!』


余計な物まで思い出してしまった。

あの時のパンチ…

僕は忘れやしないだろう。

天音がテストでの最初で最後の失敗。

その時の表情と全く同じだ。

ってことは落ち込む事でもあったのかな?


「天音?何かあったの?」

「………何もないわよ」

「何かあったからそんな顔するんだよね。ねぇねぇ何があったのさ。教えてごらんよ」

「凄くうざい!しつこいわよ!」

「あははは、ごめんごめん」

「……リベンジャー田中って娘、知ってる?」

「誰それ?女の子?」

「そうだけど………………知らないならいいわ」

「田中に心当たりは無いね」

「アンタなら知ってると思ったんだけど」

「僕は別に田中マニアや田中オタクってワケじゃないからね」

「私と同じくらいの身長でこの学校の生徒なんだけど、本当に知らない?」

「うん、というより全校生徒の学年クラス出席番号を把握している天音が知らない生徒を僕が知ってると思うかい?」

「ならなんで私はあの娘を知らなかったんだろう」

「転校生とかじゃないの?」

「そうかもね…」

「まっそんなこと置いといてさ、プリンを食べようよ」

「その巨大なプリンを?」

「だって天音の為に取って来たんだ。食べてくれないと僕の苦労が水泡に帰してしまうよ」


天音はしばらく考えると苦笑した。


「太りそうだから遠慮するわ」

「そんな……!」

「まだお昼食べてないし、先教室戻るわね」

「せめて1口だけでも!」

「普通サイズのだったらいつか食べてあげるわよ」


そう言って天音は行ってしまった。

クソっ…!

KING PURINの美味しさを知って貰えれば天音もきっと虜になるハズなのに!

そして僕がKING PURINを取って代金を天音が払うみたいな関係が出来ると思ったのに…!

KING PURINのお値段は高校生のお財布にとっても厳しいのです。

毎日プリンを食べて、月1でKING PURINを買ってたら食費が馬鹿にならない。

せめてKING PURINだけでもいいから負担してくれる人、いないかな。

次は海斗でもターゲットにするか………………


♦♦♦


適当に理由をでっち上げて、足早にあの場所から去ってしまった。

せっかく大地が、私にプリンを分けてくれたのに。

それでも私の頭の中には先程の田中ちゃんとの会話が支配していた。


『凄い…凄いです!こんな白熱した闘いをできるなんて!』

『そう…?よく分かんないんだけど』

『やっぱり私、間違ってました!弱点をついて攻めようなんて考えて………………正攻法でいかなきゃ失礼ですよね!』

『弱点つくのも立派な作戦だと思うけど』

『いいえ!何も考えず、自らの本能に任せて手を出します!』

『言い方かなり危ないけど、まぁ頑張って』

『ええ、でもやっぱり陸宮さんカッコいいですよね。天音さんもそう思いませんか?』

『んー?イキイキしてるとは思うけどカッコいいとまでは………………』

『そうですよね!輝いてますよね!』

『凄い熱意ね………』

『天音さんもプリンの為にここに居るんですよね?じゃあ熱くなって当然ですよ!』

『私はただの付き添いなんだけど』

『そんな!?』

『そう驚くことなの?』

『うっ…うっ………………』

『田中ちゃん…?』

『プリンの為じゃないなんて………………そんなこと言う天音さんなんて消えちゃえーーー!』

『ええええぇ!ちょっと!田中ちゃん!?田中ちゃぁん!』


初対面の女の子にあんなこと言われてしまった………………

ホントにこんな私は消えた方がいいのかな………



真面目過ぎる大空 天音は今日1日をプリンについて考えることとなる。


♦♦♦


放課後。

罰掃除は未だに終わっていない。

しかし今日は違う!

美崎先生が今日は俺の嫁(平面)とのデートだのなんだの言って免除して頂いた。

ありがたいことだ。

美崎先生のお嫁さん(平面)には是非毎日デートして頂きたい。

先生ハッピー、僕もハッピー。

お互いに損はない。

そんなこと考えながら帰り支度していると海斗がドア付近に見えた。

手招きしている。

僕に用事かな?

と思ったら机に腕組んでブツブツ言ってる天音を指差した。

どうやら天音にも用事があるらしい。


「天音〜海斗が呼んでるよ」

「……なんかあったの?」

「分かんない。とりあえず行ってみようよ」

「……そうね」


凄く重たい腰を上げる天音。

本人にこんなこと言ったら大変なことになるので絶対に言いません。

特に急ぐこともなく、海斗の所までいくと海斗の後ろには、女の子がいた。


「彼女自慢なら帰ってくれ。もうキミと僕の縁は切れた」

「早とちりするな。俺に彼女はいない」

「その言葉が嘘であった場合、僕には癒への報告義務がある」

「命に誓っても構わない。というよりコイツはオマエ達に用があるらしい」


ほら、と言って海斗が女の子を前に出す。

すると天音がああ!と声を上げる。


「田中ちゃん!」

「田中ちゃん?」


誰それ?

いつの間に知り合ったのこの2人。

田中ちゃんと呼ばれた女の子はペコリと頭を下げた。


「天音さん…お昼はひどいこと言ってすいません!」

「えっあっもういいわよ!気にしてないし!」

(あっもしかしてこの娘がリベンジャー田中?)

「私、反省しました………………そして気づいたんです!天音さんをプリン好きにしようって!」

「どこにどう気がついたの!?」

「さぁ天音さん!安心して下さい!私がプリンを求める体にしてあげます!」

「だから発言が危なっかしいのよ!」


凄い仲いいな、とか思いつつハブられてる現状にホロッと心の涙を流す。

すると同じくハブりの海斗が耳打ちしてくる。


「コイツ今日ウチのクラスに転校してきたんだ」

「へぇ転校生?名前は?」

田中(たなか) 鈴音(りんね)だ」

「やっぱりこの娘がリベンジャー田中なんだね」

「リベンジャー?まぁいい。それよりだ」

「なんかあったの?」

「ああ………………コイツ自己紹介の時とかプリンの話しかしないんだよ」

「それは素晴らしいね。是非ともお近づきになりたい」

「だから大地ウイルスにでも感染してんじゃねえのかと思ってな」

「海斗はたまに僕に対して厳しくなるよね」

「そうか?」


海斗は素で分かっていない。

人にウイルスとか言っちゃいけない。

傷つくから、凄い傷つくから。

意識を天音と田中さんに再び向けると、天音が半泣きになりながら小声で「プリン、プリン………………」って言ってる。

何があった。

すると田中さんはいきなりこちらを向く。

さらにビシィと指差す。


「陸宮さん!貴方にも用事があるんです」

「えっなんで僕の名前知ってるの?」

「なっ!貴方は忘れたんですか!あのプリン感謝祭を!」

「忘れるワケないじゃないか!あの時手に入れたSPECIAL PURINの味を僕は一生忘れることが出来ないよ!」

「オマエは相当プリンにやられてるな」


海斗が何か言ってるけど聞こえない。

厳しいジャンケン大会の後、手に入れたプリンの味は格別だ。

さらにプリンは景品扱いだったからお金を払わなくて良かった。

そのことがさらにプリンの味を加速させる!

でもなんで田中さんがプリン感謝祭について知ってるんだろ?


「どうやら本当に覚えてないんですね…」

「うん、プリン以外あんまり覚えてない」

「ジャンケン大会の決勝戦!私達は闘ったんですよ!」

「………………おお」

「何ですかその反応!」

「感想が出てこないんだ」

「私は貴方を倒す為に転校してきたんですよ!もうちょっといい反応お願いします!」

「なっなんだってぇぇぇぇ!」

「遅いです!」

「その為だけに転校してきたの?」

「はい!打倒陸宮さんです!」

「そっか、頑張ってね」

「今後のKING PURINは全て私の物です!」

「………………何?」

「そしたら陸宮さんの目の前でモグモグ食べます!」

「そんなこと神が許しても僕が許さない!」

「では…勝負、ですね?」

「ああ……勝負、だ」

「来月のPデーにまた会いましょう!それではさようなら!」

「僕が勝つ!必ずだ!」


田中さん………………恐ろしい人だ。

断じてそんな野望を実現させてはならない。

チョイチョイと海斗が肩を叩く。


「やっぱりオマエのウイルスにかかってるよな」

「ひどいよ海斗!」


せっかくいい感じに終わらそうとしたのに!

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