第15話 KING PURIN後編
ある者が言った━━━━
プリン中島の刃は全ての物を断裁すると。
プリンに命を捧げた男はプリンの為に刃を振るい、プリンの為に刃を納めた。
そして購買のKING PURINを1年間食し続けた彼は更なる味を求め他のスイーツへと手を伸ばす。
しかし、どれも物足りなかった。
どれだけゼリーを噛んでも、アイスを舐めても彼が満足することはなかった。
結局はプリンが1番美味しいと悟った彼は久方ぶりにプリンを購入する為に、購買へと足を運ぶ。
するとそこに居たのは1人の新入生と新入生を囲む見慣れた猛者達。
何事かとプリン中島はある人物に話しかける。
後にこの人物はパッパラ橋本と呼ばれる事になるがそれはまだ先のお話。
「おい、何が起こった。新入生をこんな人数で囲んで」
「………………そうか、アンタ最近プリン食ってなかったからな」
「?どういうことだ」
「今日がPデーってこと、知ってたか?」
「ッ!?」
「やっぱな…アンタはただプリンが食いたくなったから来ただけだろ?」
「……ああ、だがお前等が新入生を囲んでいる理由は?」
「それはな、新入生がKING PURINを勝負無しで購入したからだ」
「ッ!?」
「だから俺達は今ルールを教えようと………オイッ!プリン中島ぁ!」
何も聞こえなくなった。
プリン中島に見えていたのは新入生が持つKING PURINのみ。
食いたい。
噛みたい。
飲みたい。
プリンに対する欲求が爆発した彼は新入生にジャンケンを挑む。
そして彼は━━━━刃で負けることとなる。
♦♦♦
「ちょうど1年前、思えばアレがお前にとっての初戦で初勝利だった訳か」
「あの時のプリンが忘れられないから、今もここに居るんですよ」
彼等以外、誰も喋ろうとしない。
この闘いを目に焼きつけようと躍起になっているのだ。
今から始まる闘いはただプリンを賭けた闘いではない。
それを理解しているからこそ、〈皇帝〉は普段とることのない構えをとる。
それが、本気の構え。
「ジャンケンポイッ!」
どちらが言ったのかは分からない。
しかし、ほぼ同時に彼等は手を出していた。
プリン中島・パー 皇帝・パー。
あいこである事を確認した双方は素早く手を戻し次なる手を繰り出す。
「ポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイッ!」
グー、パー、チョキ、チョキ、パー、グー、パー、グー、チョキ、グー、パー………………
「はっ速い!速すぎるゥゥゥゥ!」
「これがプリンに命を捧げた者達の闘いかッ!」
その間、彼等は笑いあっていた。
それは、楽しそうに。
とても、嬉しそうに。
「ハハッ!KING PURINは譲りませんよォォ!」
「プリン中島の二つ名は伊達じゃないねぇぞぉぉ!」
お互い譲ることなく闘いは続いていく。
だんだんと疲労していく、皇帝。
「ハァハァ………………!クソっ!」
「もう疲れたのか皇帝!」
「………………………………そんなことあるワケない!」
「額に汗が浮いてるぜ」
「何っ!?」
「フハハハハハハハハ!疲れてるなら休め!」
「そういうアンタはどうなんだ!」
「俺がどんだけプリンを我慢したと思ってる?この体はプリンの為ならいくらでも無茶出来るぜ!」
「なるほど………………じゃあ……」
「じゃあ?」
「次で決める」
皇帝は再び構えなおす。
しかし先程の構えとは違い、ほぼ直立になっている。
「それが………………お前の構えか?」
「できるだけ自然体であれ。プリンを求めるのは欲望ではない、本能だ」
「何が言いたい!」
「ニノ型……黒!」
「証明は拳でってことか………………いいぜ……来いよぉ!」
誰もが、直感した。
これが最後になると。
だからこそ、掛け声をその場居る全員で行った。
『ジャーンケーン!!!』
「うおおおおおおおおおお!」
「はああああああああああ!」
プリン中島・チョキ 皇帝・グー。
勝負が、終わった。
プリン中島は何も言わず、皇帝の肩を軽く叩き景品のKING PURINを差し出す。
そのプリンを皇帝を受け取り、2人は熱い握手を交わした。
その場にいた全員が拍手し、2人を褒め称えた。
♦♦♦
今年度 第三回Pデー
KING PURIN獲得者
陸宮 大地、またの名を〈皇帝〉。
こうして熱き闘いに幕は降ろされた。
さて、天音を待たせてしまった。
急がなきゃ大変なことになる。
僕の体が。