第14話 KING PURIN中編
1年前、突如購買に現れた男子生徒がいた。
新入生だった彼は購買でのルールを知らず、プリンを購入してしまう。
そのことに怒った、プリン中島という生徒が男子生徒に突っかかる。
すると男子生徒は「すいません。ルールがあるとは知りませんでした。このプリンは戻します」と言った。
素直な態度にプリン中島は感心した。
しかし、男子生徒はでも、と続ける。
「勝てば僕のもんだろ?」
その言葉にプリン中島はカチンときた。
舐めた態度の後輩を、購買ならではのルールで片付けようとプリン中島は構えをとる。
それを見て男子生徒も集中をする。
購買では、常にプリンやゼリーと言ったデザートの類は人気である。
人が居ない時は通常通り購入することが出来るのだが、他に人が居て希望する商品が被った場合必ず、ジャンケンをしなければならない。
そして勝者が先に購入出来る権利を得る。
いつから造られたかは分からないルールであるが、そのルールは現在でも使用されている。
男子生徒は不敵に笑った。
まるで自分の為に造られたルールじゃないか、と。
何故ならば、彼は人生で一度たりともジャンケンで敗北したことがないからだ。
「ジャーンケーン………………」
プリン中島が掛け声を掛ける。
その声に合わせ、男子生徒は握り締めた拳を放つ。
♦♦♦
「それが彼です」
「アンタ誰?」
大地が人混みに突っ込んだのを見て、何もすることなくただ呆然としていたら誰かが話しかけてきた。
何なのコイツ。
「ややっこれは失礼。名乗っていませんでしたね」
「うん。そういうのいいから」
「私の事はリベンジャー田中と呼んで下さい」
「田中ちゃんね、分かったわ」
いきなり話しかけてきたのは女子生徒だった。
身長は私とさして変わらない。
多分、同級生。
でもどうして購買に集まる奴は二つ名みたいなの持ってるんだろ。
「私の事が気になりますか?」
「いやそこまで」
「うぅ……ひどいです」
「何がよ」
初対面のハズなのに馴れ馴れしく話しかけてくる。
こういう人、苦手だ。
だからさり気なく、何処かに行けという意思を伝えておこう。
「田中ちゃん」
「ハイ、どうしました?」
「どっか行って」
「ひどいです!天音さん!」
「………………何で私の名前知ってんのよ」
「結構有名ですよ?〈天才〉大空 天音って」
「そんな広まってたの………………」
「多分この学校の人皆知ってると思います」
「嘘だァァァァ!」
「ホントです」
誰よ私を天才とか呼んだ奴!
恥ずかしいでしょ!
異名なんて格好つけてるとしか思われないわよ!
「まぁ………………大地よりはマシかな……」
「むむっ陸宮さんとお知り合いなのですか?」
「そうよ……幼なじみ」
「へぇ!そうなんですか!」
「凄い嬉しそうね」
「い、いえいえそんな事はないですよー」
「怪しすぎるでしょ」
田中ちゃんは挙動不審になる。
具体的にいうと、音の鳴らない口笛を吹いて、胸の前で人差し指をツンツンしてる。
これを怪しいと言わずなんと言うのか。
「大地について何か知りたいの?」
「察しが良すぎですね!」
試しに言って見たら大ヒットした。
大地の情報が欲しいけど本人には聞けない、だから私が大地と幼なじみと言ったら喜んだのだろう。
さて一体何が聞きたいのやら。
「まさにその通りです!私は陸宮さんについて知りたい事がありまして………………」
「アイツの事が知りたいなんて人初めて見たけど………………知ってる範囲なら教えて上げるわ」
「ありがとうございます!」
では、と言って田中ちゃんはメモとペンを用意する。
「陸宮さんの弱点を教えて下さい」
「へ?」
「弱点です」
「弱点なんて何に使うのよ…」
「陸宮さんへのリベンジですよ」
田中ちゃんは真剣な眼差しで見つめて来る。
大地にリベンジ………………って事は…
「大地にジャンケンで勝ちたいの?」
「ハイ!なんとしてでも陸宮さんを倒し、KING PURINを食べたいんです!」
「なら何で今日参加しなかったの?」
「今月は情報収集の為に諦めました。勝負は来月です」
「あっそう…」
「それにしてもラッキーです!幼なじみがいるとは聞いていましたが、こんなに早く出会えるなんて!」
「あのー田中ちゃん?」
「なんですか天音さん」
「諦めるべきだと思う」
「ほぇ!?なんですか!」
田中ちゃんがワナワナと震える。
何時、何処で、どんな感じに大地に負けたかは知らない。
けどこれだけは言っておくべきだ。
「大地には絶対に勝てないからよ」
「………………絶対……ですか…?」
「そう、絶対。田中ちゃんはさ大地が今まで運で勝ってると思う?」
「は、ハイ………………」
「それが間違いよ。大地は勝とうと思って勝ってるのよ」
「それってどういう…」
「アンタもプリンの魔力に負けた1人なんでしょ?ならちゃんと見ときなさい。大地の闘いを」
自分でも何を言っているんだろうと思う。
けれど田中ちゃんを諦めさせるには充分だろう。
♦♦♦
「〈皇帝〉がまた勝ったぞぉぉぉ!」
「5連勝だと!?」
「グータン杉山も負けたなんて………………」
「誰か皇帝を止めろ………………でなければ今月もKING PURINは奴の手にぃ!」
「さて………………他に希望者がいなければKING PURINは僕が貰うよ」
「待て」
「誰だアイツは!?」
「あの後ろ姿…間違いない…」
「知っているのか?」
「ああ……奴は〈皇帝〉が入学する前、つまり2年前全てのKING PURINを食したと云われる………………」
「まさか奴は!?」
「元購買の主…そして名前にプリンを冠した唯一の人間!」
男子生徒達は睨み合う。
彼等が初めて闘ったのはちょうど1年前。
プリンを愛する者同士ぶつかり合うことは避けられないのだ。
「久しいな………………陸宮」
「この場では、〈皇帝〉ですよ」
「俺がPデーに参加するのも久し振りだな」
「ええ、全くです。何をしてたんですか」
「お前に負けてから俺はあえてプリンを断食し続けた」
「何!?そんな事出来るハズが……」
「出来る。無論ここに居るのはプリンの為もある。が、1番の目的はお前に勝つ事だ!」
「………………ハハッ!良いですよ!闘いましょう!」
「さぁ構えろ〈皇帝〉!」
「行きますよ……いや、行くぞ!プリン中島ァァ!」
To be continued………………