表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

「ザグラブ」降臨

 敵機が無線連絡を取り合っていた次の瞬間、その輸送機は猛スピードで

ミューユたちの頭上をかすめ、後部ハッチからはミューユと同じ純白のAAが6機、次々と降下してきた。


 純白のAAたちは飛び降り自殺でもするかのような勢いで、AAのショックアブソーバーの機能を限界いっぱいに使ってズシンと重い地響きをたてて着地すると、即座に敵機に向かって容赦の無い銃弾の雨あられを浴びせた。


「くそっ、敵の増援だ! 散開しろ! 」


 敵機が応援の白いAA6機に気を取られている間、ミューユは再び自分の白いAAを立たせると、一目散にその場を離れた。


 敵機三機は、瞬く間に白いAA六機に追い込まれる形で倉庫の一角に

姿を隠した。


 ミューユの機体と白いAA六機とは、倉庫の向き合う十字路を挟んで向かい合う形となったが、十字路の一方からは敵の死力を尽くした容赦ない弾幕が道を塞いでいて、ミューユは他の白いAAのいる方へと道が渡れないでいた。


「そこのAA、飛べ! 飛んでこっちに来い!」

 六機の白いAAの方から無線でミューユの機体に呼びかける。


「そんなの無理ですよ!」

 ミューユが答えると、

「スノーホワイトの性能なら、弾幕くらいジャンプで飛び越えられる!早く来い!」


ミューユは無線の応答に観念して、通路を助走を付けて、一気にAAの

バーニアを吹かした。


 するとミューユの機体は信じられない高さまでふわりと飛び上がった。ミューユが操縦していたメタルランナーでは考えられないほどの高さのジャンプである。


 ミューユの機体は敵弾のはるか上を滑空すると、六機の白いAAのもとへと流れるように滑り降りた。


「よし、『スノーホワイト』確保!君はここに居ろ! 後は敵を殲滅せよ!」

 隊長機が言うが早いか、六機のAAは大きくジャンプすると、空を舞いながら眼下の敵機に銃弾の雨あられを浴びせた。


 この白いAA、通常の機体とは比べ物にならないほどジャンプやホバリングの性能が充実しているとみえる。敵機も負けずに飛び上がって応戦しようとしたが、六機の白いAAまでは全く届かないうちに、あえなくライフルの餌食となっていった。


 被弾して身動きが取れなくなった敵機に、更に白いAA達は猛攻を加える。

棒立ちになった敵機に、白いAAが激しい打撃を加えると、たちまちのうちに敵機は全て沈黙し、

やがて轟音を立てて爆発していった。

 これはもう、一方的な殺戮でさえあった。


 戦火が収まり、ミューユを含む7機の白いAAは基地の広場に集結していた。

 全員がコクピットから降りると、パイロットはミューユも含め、示し合わせたかのようにどれも若い美少女であった。

「なんだ、民間人だったのか!?」

 純白のロシア帽に純白のロシア風コートに身を包んだ六人の中で、隊長とおぼしき背の高い長い黒髪の美少女は、コクピットから降りてきたミューユの姿を見て驚きの声を漏らした。

「あなたたちだって、私とそう年齢の違わない女の子じゃないですか、驚いたのはこっちの方ですよ」

 ミューユも言い返す。

「いや、我々は『ザグラブ』なのでな」

 隊長が「ザグラブ」という言葉を発した瞬間、ミューユはあっと声を漏らした。

 ザグラブ。「The Girls Liberty Battalion」の通称で、北軍きっての精鋭部隊である。隊員は全て若い女性で構成されているが、その戦果は目覚ましく、南軍兵士を縮み上がらせ、北軍兵士に希望を与えている、北軍のアイドル的な存在であった。

「あなた方が、ザグラブだったんですか……」

「いかにも。この基地には北軍の最重要機密、我らザグラブが搭乗予定の新鋭機の試作機が隠匿されていたんだ。その情報が漏れてしまい、南軍から奇襲を受けることになってしまった……。」

「じゃあ、私が乗っていたのは?」

「ザグラブの最新鋭機『スノーホワイト』だ。我々も何度かテストしてみたが、乗り手を選ぶ扱いの難しい機体だ。だが、初めて乗っていきなり敵機を落とすとは目覚ましい戦果だな。君、AA操縦の経験はあるのかい?」

「私は、学校のメタルランナー部に入っていて……」

ミューユがしどろもどろに答えると、

「そうか。それでスノーホワイトをあそこまで使いこなすとは、君は適性があるな。どうだ、ザグラブとして我々と共に北軍と戦ってみてはくれないか?……そうそう、私の名前はマオ。マオ・ナカジマ。君の名は?」

「私は、ミューユ。ミューユ・タカオです」

「よし、ミューユ君のことは、私からも軍に推薦しておくよ」

「そ、そんな……」

ミューユは隊長の突然の申し出に泡を食いながら、軍の送迎で自宅まで帰ることとなった。もちろん帰宅したミューユには、今日起こったことについては固く口止めされていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ