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校外学習の悲劇

 今日はヒルゼン国民中学校で校外学習の日であった。ミューユ達の班は、ミサキ町の北軍補給基地へと北軍の軍隊の様子を見学に行くことになっていた。もちろんミューユは、担任の先生の、ミューユに少しでも軍の仕事に関心を持って欲しいという思惑によって、き半ば強制的に軍の見学に回されてしまったのだ。


 ミューユ達は横で輸送機が慌ただしく発着したり、物資のコンテナが始終行き来したりしている基地の片隅で、係の北軍の軍人から説明を受けていた。


「ここが北軍が最前線で戦うための物資を運び込む補給基地になっている。ここの補給物資のお陰で、我らが忠勇なる北軍兵士は資本家の手先である南軍兵士を打ち倒すために戦うことが出来るのだ」


 立派なひげをたくわえた北軍の軍人が、見学に来たミューユ達にさも偉そうに説明する。ミューユの方はもう内心飽き飽きしているが、説明の軍人が怖そうなのでいやいやながら軍人の話にさも興味があるようなふりをしていた。


(あ~あ、早いとこ話終わってくれないかな……)


 ミューユが内心でふと思っていた矢先、近くの輸送機から積み下ろされたコンテナがバキンと音を立てて開き、中から所属不明のAAが何機も姿を見せた。


 現れたAAはいきなりそこらじゅうの輸送機やトラックに向かってグレネードを放り投げ、マシンガンで弾丸の雨を降らせる。安全が確保されているはずの補給基地のど真ん中に現れた突然の敵機により、基地の辺りはたちまち火の海となった。


 理由は何故だか分からないが、恐らくは北軍の特殊部隊がこの補給基地に奇襲をかけたのだろう。


「敵襲侵入!貴様達は早く避難しなさい!」


 ひげの軍人が叫んだところで、敵機のマシンガンはミューユ達の一団をほんの少しだけかすめた。ミューユのそば数メートルのところで激しい爆発が起こり、さっきまで叫んでいたひげの軍人、そしてミューユのクラスメイトの数名は、ミューユが爆風に煽られてよろけている一瞬のうちにぐちゃぐちゃの肉塊となってしまった。


「ひいっ!」


 運良く助かったミューユ達一団の残りは、みんなクモの子を散らすようにてんでんばらばらに逃げ出した。


 ミューユがひたすら安全な場所を探して基地の中を逃げ惑ううち、敵AAの攻撃で負傷したのか、下半身をズタズタに潰されて虫の息で横たわっていた若い兵士が、やにわにそばを駆け抜けようとしたミューユのくるぶしをギュッと掴んだ。


「誰か他のやつに、7番倉庫の白いAAを……」

  瀕死の兵士は、声を振り絞ってミューユに語りかける。

「なに?7番倉庫の白いAAを? 」

「奥の7番倉庫……白いAA……」

  兵士の声はそこでかすれてミューユには聞こえなかった。


 ミューユが兵士を抱き抱えて聞き返しても、その兵士は出血がひどかったせいか、既にこときれていた。

「7番倉庫の白いAA」

しか聞き取れなかったミューユは、走りながら倉庫の扉に書いてある番号をたよりに、7番倉庫の方へと駆け出していった。


 ミューユが7番倉庫の扉を開けると、そこはAAの部品倉庫であった。

 古びたAAの腕やら脚やらの部品が所狭しと並べられていていて、白いAAらしきものはミューユが探してみても見当たらない。


「どこにも白いAAなんてないじゃないか……」


 そう思ったミューユが倉庫の隅に目をやると、そこだけ埃をかぶっていない一角があり、AAらしき大きな物体がシートを掛けられて横たわっていた。


 ミューユが試しにシートを開けてみると、その下からは純白の真新しいAAの機体が顔を出す。さて、そこでミューユははたと動きを止めた。


 あの兵士からは、「7番倉庫に白いAAがある」ということは聞いたものの、この白い機体をどうするのか、という部分は全然聞き取れなかった。


(これは多分、乗って逃げろ、って意味なんだろうな)


 ミューユは勝手に解釈すると、すぐさまその白いAAのコクピットへと潜り込んでいった。そしてこの時のミューユの手前勝手な解釈が、自分自身の運命を大きく変えてゆくことになるのだった。


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