九
無事買い物を終えた俺たちは帰路へ着いていた。
今度は離れ離れにならないように手を繋ぎながら。
あ、勿論荷物係は俺ですはい。
流石に幼女に荷物持たせるのは人間としてどうかと思うんで。
もともとなんだけど、俺の王子らしさってやつがなくなってく気がする。
別に文句は言わないけどさ。
…でも一つ気になるのは…。
「オリビアは本当にこんな服で良かったのか?」
俺が少し目を離した隙に、購入されていたオリビアの服。
それは男子用のもので、しかも半額。
そしてさらにダサ…くはないんだけど…古くさい?
水兵みたいな、なんか、ネクタイとか半ズボンとか、女の子が着るにはちょっと可愛げないというか…。
「いいんです〜。それにルイスさんがえらんでくれたワンピースもあるじゃないですか」
そうだ。
オリビアが本当にそれだけしか買うそぶりを見せなかったから、これはいけないと、慌てて購入したのだ。
しかし、お店が古着屋だったので、種類は限られてる。
一番綺麗に見えたワンピースも、何も飾りっ気のないただ真っ白なものだった。
「でも、あれ本当にシンプルだし…。女の子としては、物足りないんじゃないのか?」
「そんなことないですよ。あ、ここ、ちょっとあぶないですよ」
「はーい」
俺がこんなんだから、オリビアは遠慮しているのだろうか。
…頑張ろう。俺。
まずは働くところを探さなくては。
…ニートか。俺。
目指せ!脱ニート!!
考えろ!脱ニート計画!!
・⚪︎●○●○●○●⚪︎・
「ルイスさん、おもたくないですか?きゅうけいをはさみますか?」
オリビアが俺を気遣うように顔をあげた。
そんなオリビアに見せつけるように荷物を持ち上げる。
「いや、大丈夫。俺体力だけはあるんだ」
俺がそう言うと、オリビアは少し安心したように表情を崩した。
「そうですか。おうちまであとすこしですよ。がんばってください」
俺と繋いでない方の手をギュッと握り、ガッツポーズをしたオリビア。
オリビア超可愛い。
「ありがとう。頑張ります」
「あ、そこもあぶないですよ!」
「はーい」
・⚪︎●○●○●○●⚪︎・
「ただいまー」
「ただいまかえりましたー」
家に着いた俺らは、そう言いながらずんずんと進んで行き、とりあえず俺はリビングに荷物を置いた。
オリビアは師匠を探しに行ってるようだ。
早速今日買ったコップを取り出し、軽く水洗いしてから手を洗って、うがいをする。
ぺっと水を吐き出すと、リビングの扉が開かれた。
「あ、師匠」
そこにいたのは師匠。
その後ろにオリビアもいた。
「あぁ、おかえり。お疲れだったな」
「いえ、楽しかったですよ。な?オリビア」
「はい。ルイスさんがまいごにならなければ、もっとよかったですけど」
オリビアの言葉に師匠は笑った。
「なんだお前、迷子になったのか。オリビアじゃなくてお前が」
「…恥ずかしながら、その通りです」
うぅ。
俺の顔、今きっと赤いぜ。
「すこしめをはなしたすきに、あしをすべらせていました」
「そうかそうか。災難だったなルイス」
「師匠〜、笑わないでくださいよ〜。この辺足場が悪いんです」
「それでもオリビアは大丈夫だったんだろ?お前はもっと鍛えろ」
「うっ、それを言われると反論できない…。これでもそれなりに剣術なんかはやってたんですけど…」
毎日訓練しては城を抜け出して、エイデンに見せてたんだけどなぁ。
でも確かに、体を鍛えてたかどうか聞かれると答えづらい。
何故ならオーウェンはそんなこと一度も言わなかったから。
俺も、技術を学ぶ方が断然面白かったし。
でもそれってやっぱ、きちんとやってることにはならないよなぁ。
それなり…かぁ。
俺って本当に中途半端な奴。
そんな自己嫌悪に陥った俺に、師匠は言った。
「なんか色々溜まってるみてぇだな。明日、俺と手合わせしてみるか?」
「え?マジですか?師匠、剣も使えたんですね!ぜひ、お願いします!」
突然の師匠のお誘いに驚いたが、すぐに師匠の近くまで移動し手を取りぶんぶん振り回した。
師匠は迷惑そうに手を払う。
師匠…!!
「じゃ、じゃあ、わたしはおべんとうつくりますね!」
男二人で盛り上がっているのに疎外感を感じたのか、オリビアが背伸びしながら大きな声で叫んだ。
そんなオリビアを優しく師匠は見つめた。
「あぁ、頼むぜ」
「楽しみにしてるな!」
俺もしゃがみ、オリビアの頭をわしゃわしゃと撫でた。
オリビアは照れ笑いしながら、まかせてくださいと言った。
…あ、脱ニート計画忘れてた。