八
「あぁ、美味かった」
「そうですね。さぁルイスさん、おかいものですよ。そんなところでだらけていないで、いきましょう」
オリビアが俺の手を引っ張って立たせようとする。
「はーい」
しかし、こんな小さな子にそんな力があるわけもなく、俺は自らベンチを発った。
「まずは何を買うんだ?」
「まずはここからいちばんちかいざっかやさんにいきましょう。そこでしょっきをかうのです」
「りょーかい。雑貨屋の場所知ってるの?」
「おにいさんからかんたんなちずをかいたかみをあずかっています」
「…しっかりしてるね」
「ルイスさんはもっとしっかりしてください」
…すみません。
・⚪︎●○●○●○●⚪︎・
「いらっしゃいませ」
オリビアに案内された雑貨屋さんは、彼方此方に色々なものが置いてあり、ごちゃごちゃしているように見えて実は規則正しく並べてある…ような…。
店番の女の子が奥ではたきを使って商品の埃をはらっていた。
その中でも食器はすぐ近くにあった。
種類別に並べられた食器を順に眺めてく。
「ルイスさん、このおさらはじょうぶそうですよ。これにしませんか?」
「えっでも、それ…」
オリビアが指差した先のお皿は確かに分厚く、頑丈そうではあるけれど…。
「柄が…」
真っ白な皿かと思えば、その中央にはカエルのキャラクターが"Let's eat!"の文字とともに描かれていた。
はっきり言って…ダサい。
「かわいく…ないですか?」
「えっ、いや、そんなわけじゃないんだけど…」
よく見ると可愛いかもしれないけど…チラリと皿の値段を見る。
周りの食器に比べ、ずいぶんとお安いようだ。
へぇ、ほう。
「オリビア…もしかして遠慮してる?」
俺がそう言うと、オリビアはわかりやすく動揺した。
「ふぇ!?そ、そんなわけないじゃないですよ!」
「…本当か?」
「ほ、ほんとです!わたしはこれがかわいいとおもいました!」
「そっか。じゃあ、俺はこっちの方が好きだから、こっちにするわ。いいよね?」
と、他のよりも少しだけお値段高めのお皿を手に取る。
以下にもファンシーな柄で、お花が散りばめられている。
女の子がとても好きそうな柄だ。
店番の女の子の視線が気になるが、俺はそんなものには屈しないぞ…!
オリビアはその皿を羨ましそうに眺めたが、一度言ってしまったことを訂正するのは嫌らしい。
ぷいっと顔を背けた。
「…どうぞ!ごじゆうにしてください!わたしはこれにします!」
「…はいはい」
やっぱり子供だなぁ…。
そんな俺の心を読み取ったかのようにオリビアが睨みつけてきた。
「…なんですか。そのたいどは。つぎはカップやフォーク、スプーン、あとおおざらなどもほしいです。ほかにもふくなんかもひつようなのです。のんびりしてるひまはありませんよ!」
「…はい」
…なんだろう。
この立場の逆転は。