表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14


テーブルを挟んで向き合い、俺は口を開いた。


「話って何?」


幼女はもじもじと落ち着かないようだったが、俺が切り出すと、恐る恐る口を開いた。


「あ、の…わたし、あなたといっしょにたおれてたらしいんです」


「あぁ、らしいな。怪我は大丈夫だったか?」


「はい、だいじょうぶです。…あの、でも、わたしきおくがぜんぜんなくて…あなたのことも、わからないんです…」


「あぁ、そのことならさっき師匠にも聞いたんだ。記憶がないのって心細かっただろ?」


「あ、それもだいじょうぶです。でも…じゃないですね。えっと…だから、あの、あなたのおなまえと、わたしのなまえをおしえていただけませんか…?」


「あぁ、俺はルイスっていうんだ。…でもごめん!残念ながら、俺は君の名前を知らないんだ」


目をぎゅっと瞑り、パチンと顔の前で手を合わせた。

数秒そのままで固まっていたけれど、幼女の反応がわからないので恐る恐るうっすら片目を開ける。

しかし、すぐに両の目を見開くことになる。

正面の幼女は下を向き、今にも泣きそうな雰囲気を醸し出していた。

これはヤバイと、俺は咄嗟に立ち上がる。

そして、思いついた言葉をろくに考えもせずに吐き出した。


「あっ、いや、でも、代わりに俺が名前をつけてあげるよ!!」


「ふぇ?」


俺の言葉にきょとんとする幼女の目から、一粒の雫が落ちた。

俺は俺できょとんとしていた。

俺今…何言った…!?

名前つけるとか言った…!?

何言ってんだよ俺ぇ!!


「あ、いや、嫌なら無理にとは言わないけど…その、やっぱり、名前ないのって不便だろ?」


徐々に俺の声は小さくなっていき、眉も下がっていくような気がする。

言い終わってから、何言ってんだ俺…!!と泣きたくなった。

テンションがだだ下がりになっていくと同時に、俺は椅子に座った。

とても無責任なことを言ってしまった。

幼女を見るのが少し怖くて、味気ないただの木のテーブルを見つめる。

それから何秒か何分かすらもわからないけれど、幼女の声が、俺の顔を上げさせた。


「あの…じゃあ、おねがいしても、いいですか…?」


マジですか。

俺は驚く以上に焦っていた。

全く考えてねぇよ俺の馬鹿!!


「あ、うん。あまり期待しないでね…?」


一応釘を刺しておく。

一生懸命考えた後で文句言われたら、俺たぶん泣く。

幼女は、はいと頷いた。


んー…どんな名前がいいだろう?

女の子らしくてー、えっと…覚えやすくてー、んー?


元々この子はあの少女だったわけで、少女は気付けば俺のそばにいた。

少女はお人形みたいに可愛かったよなぁ…って、おいコラ俺!

何考えてんだコラ!!


「あ、オリビア。君とは、オリーブの木の下で出会ったから。平和って意味のオリビア。…どうかな?」


本当に平和なら、この子はこんな風にはなっていないんだけれど。


「とてもかわいいなまえですね」


「そう?そう言ってもらえると嬉しい。てか、こんな安直でごめんな」


「いえいえ。わたしはすてきだとおもいます。ありがとうございます」


ありがとうございます。

まだこの頃は、すみませんの前にありがとうを言えたんだなぁ。


「どういたしまして」


俺は自然と二人が笑顔になっていくにを感じた。


「おい、話が終わったなら風呂入れ」


し、師匠…驚くから後ろから突然現れるのやめてください…。



・⚪︎●○●○●○●⚪︎・



「…そういえば、オリビアってあいつらも言ってたな」


偶然だろうか?


「ルイスさーん。湯加減どうですかー?」


浴室の扉越しに、オリビアの影が映った。


「気持ちーでーす」


「それはよかった。おにいさんがかしてくださったおきがえ、ここにおいておきますねー」


「サンキュー」


そう言ってオリビアの影は姿を消した。

こんなにお手伝いも頑張って…いい子だなぁ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ