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三
走る。
気絶してしまっている金髪の幼女を抱いて、俺は走る。
息が切れるほど走る。
草木の生えた森の中を走る。
唯一、毒舌幼馴染に褒められる俺の長所、体力が切れるほど走っている。
どうしてこうなった。
俺は走る。
精一杯で走る。
オースティンの屋敷からどれだけ離れた?
思考がまとまらない。
酸素が足りない。
脳が働かない。
ドサッ
音がした。
何かが地面に落ちた音だ。
例えば、人間とか。
酸欠が過ぎてグラグラする頭が俺の体を動かす。
力の入らない腕を地面について、起き上がろうと必死にもがく。
ドサッ
また落ちた音だ。
視界に金の髪が映る。
あぁ、この子を守らなきゃ。
…なんで、守らないといけないんだっけ?
俺は狭まる視界に一つのブローチを捉えた。
あぁそうだった。
真っ暗になった視界。
体が落ちて行くような感覚。
最早、抗う力も残ってなかった。