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「お呼びでしょうか、父上」


城に戻り着替えた俺はすぐに王の間へ向かった。

そこで待ち構えていたのは王座に座った父さんとその横に立つ母さん。

つまり、この国の王と王女だ。


「…お前を呼んだのはまだ日が昇っていた頃だと思っていたのだがな」


「おそらく、オーウェンが伝えるのを忘れていたのでしょう。僕が聞いたのはつい先程でした」


呆れたような父さんの声に困ったように答える。

父さんは大袈裟に溜息を吐いた。


「全くお前という奴は…。…今日、お前を呼んだのは他でもない。今起きている、メンフィス国の内乱についてだ」


「すでに耳にしています。日々被害は深刻化しているとか」


俺の言葉に父さんはゆっくりと頷いた。


「そうだ。そのため、メンフィス国から難民が我が国に来ることが予想されよう」


「僕は受け入れるべきだと思いますが」


「まぁそう急かすな。してその難民を受け入れるとして、その対応を任せる人材を探しておるのだ」


「それを僕に?」


「そうだ。良いか?」


「愚問ですね。この僕に全てお任せください」


「うむ。それでは今からそなたに難民対応の全てを任せよう」


「頑張るのですよ」


ここで今まで無言だった母さんが初めて言葉を発した。

それは冷たく突き放すようで、実は慈愛に溢れていることを俺は知っている。

にやける顔を隠すように片膝を着き、もう一度お任せくださいと頭を下げた。


・⚪︎●○●○●○●⚪︎・


「王子、困ります!国王様の前であのようなことを仰られては!」


「おっオーウェン。昼ぶりだな!」


王の間を出ると、どこからかオーウェンがやって来た。

オーウェンは俺に詰め寄り、どこか泣きそうな声で言う。


「はぐらかさないでください!私はきちんと伝達致しましたよ!それをあんな、あんな…!」


「はははっ。すまんすまん。大丈夫だよ。父さんもその辺はちゃんとわかってるから」


笑って流せば、オーウェンは諦めたように肩を落とした。


「全く…王子の二重人格にはほとほと困らされますよ」


「二重人格なんかじゃないよ。TPOにあった対応をしているだけさ」


オーウェンはもう何を言っても無駄だと諦め、小声でさようですかと呟いた。


「さようです。話聞いてたんならわかると思うけど、俺ちょっと野暮用を頼まれたんだ。今から協力してくれる奴のとこに行くから、帰りが遅くても心配すんなよ」


俺がそう言えば、オーウェンはさして考える間も無く目を細めた。


「オースティンの元ですか?」


「そうだよ。お前の弟で俺の幼馴染んとこ。じゃっ、そういうことで!」


オーウェンのお気をつけてーの声を背中に受け、俺は走り出した。


・⚪︎●○●○●○●⚪︎・


颯爽と城を抜け出し、すぐ近くの豪邸に忍び込む。

大きな木を登り、馴れた手つきで次から次へと木を渡る。

太い木の枝をつたい、窓の近くまで移動した。

コンコンと部屋の窓を叩くと、その音に気づいた幼馴染が振り返った。

俺がニッと笑い手を振ると、幼馴染が窓を開けた。


「やっほー、オースティン。二日ぶり」


トンっと床に着地し、手を上げる。

幼馴染、オースティンは溜息を吐いた。

(オースティンは上級貴族で俺の幼馴染。

剣の腕も強くてさらにイケメン。

領地の経営にも手を出しているらしく、貴族から平民までたくさんの女の子に人気だ。)


「また抜け出したのかお前は…。いい加減、玄関から入ることを覚えたらどうだ?」


「だってんなことしたら城に連れ戻されるだろ?今日はお前に協力を仰ぎたいことがあって来たんだ」


俺の言葉にオースティンは目を細めた。

(それは心当たりがある時、必ずしてしまう癖らしい。

直すよう努力はしていると兄弟は口を揃えて言うが、今の今まで直っているのを見たことはない。)


「メンフィスの内乱…難民か」


相変わらず耳が早いことで。

しかも思考回路も相も変わらず素早い。

こりゃあ、周りが揃って天才だというのも頷ける。


「そう、ザッツライト!その通り。ついさっき、その難民対応の全責任を任されたわけ」


「なるほど。俺はそれを補助すればいいんだな」


「頼むよ、オースティン。へへっ。やっぱ持つべきものは友人だな」


うんうんと一人で頷いていると、オースティンも同じように頷いた。


「実は俺、最近ドラゴンアーマーが欲しかったんだ。報酬はそれでいいぜ」


「……オースティン……」


ドラゴンアーマーっつったら、それ一個で城一つ買える値段じゃねぇか。

俺は少し悲しくなった。

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