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早朝、先に腹ごしらえをした俺と師匠は家から少し離れた、比較的障害物の少ない広いところにいた。


「おはよーございます!師匠!今日はよろしくお願いしまっす!」


師匠とは離れた場所にいるので、大きな声で叫ぶように挨拶した。


「あぁ、準備はいいな?」


師匠は特別大きな声は出してないが、良く聴こえた。

師匠の言葉に俺は腰に下がる手作りの木刀を叩く。


「万全!とは言えませんが、師匠と同じ条件ですから!」


防具は一切なしで、この急場ごしらえの木刀だけで戦う。

それが今回のたった一つのルール。

戦闘では、どのような手を使ってもいいのだ。


「そうか、では…始め!」


師匠が声高らかに宣言する。

その声がするやいなか、俺は駆け出した。


「はぁっ!」


俺は、静かに佇み動かない師匠に向かって、木刀を横に流れるように振った!


「っ!」


しかしそれは、師匠が一歩後ろへ下がっただけの、いとも簡単な方法で躱される。

勢い良く振った腕に体が釣られ、ほんの少し重心が崩れた。

ほんっと、体鍛えられてねぇ…!

今まで筋トレをしてこなかった自分に対し、歯ぎしりする。

師匠はそんな俺を薄く笑ったかと思えば、一瞬の内に俺の横に移動し、片膝を腹に食い込ませた。

いっ、てぇ〜。


咄嗟に右足を踏み込み、地面に倒れるのを阻止する。

くそっ、まだ腹がじんじんする!

木刀を持ち直し、体制を整える。

そして、地面を蹴った。


「…っ!!」


なんだかよくわからなかったが、この攻撃をこのまま続けたら死ぬ。

そんな恐怖が体を襲い、急ブレーキをかけようとするが今更止められやしない。

精一杯体をひねって攻撃の的を逸らす。

例え自分が地面に叩きつけられてもいい覚悟も決めた。

それでも、師匠は俺の攻撃を木刀で上手く流し、回し蹴りを叩き込んだ。

背中から地面で後転し、手で地面を押し上げ、立ち上がり構え直す。

クソいてぇ!

すると師匠は面白そうに口角をあげた。


「ほう、気づいたか。体や技術は劣っていても、野生の勘だけは鋭いらしい」


「……ックショウ!」


先程の恐怖がに体が震えているのにも関わらず、俺は前に飛び出す。

そして、一回目と同じように攻撃すると見せかけ、高く飛び上がった!


「はぁあああ!」


木刀を振りかぶり、師匠めがけて力いっぱい振り下ろす!


!!

師匠が消えた!!


木刀が師匠を捉える前に、師匠は姿を消した。

勢いづいた木刀を俺は止めることが出来ず、そのまま地面に叩きつけたことで木刀は砕けた。

そして、足が地面についたその時、後ろ髪が揺れ、風が首筋を撫でた。


「俺の勝ちだ」


師匠は堂々と、そう宣言した。


あ、首筋に木刀の先をつけられてるのか。

ワンテンポ遅れて理解した。

そして次に思ったのが…。


「…俺ってよえ〜」


木刀がよけられたのを感じて後ろに倒れる。

手も足もでなかった。

つか、師匠がその気になれば、いやならなくとも、俺なんか瞬殺なんだろうな。

…よしっ!

ガバッと勢い良く起き上がり、地面に手をつけて立ち上がる。

そして後ろを向いて、頭を下げた。


「俺に剣術を教えてください!」


無言。

反応なし。


「…お願いします!こんなんじゃ、守るものも守れない!」


こんなんじゃ、またあいつみたいな奴が来た時、対応できない。


「…オリビアか」


「はい。俺といれば、あいつがとばっちりを受けるかもしれない…俺があいつを守らなきゃ…!!」


ぐっと息を止める。

やるしか…ないよな…。

できれば、したくなかったんだけど、ここまできたら王子の責任もプライドも何もないよな。


震える足に手を当て、押す。

片膝を、地面についた。

もう片方も、同じようについた。

腰を下ろす。

次に地面に手をついて…。


「あぁ、そんなのしなくていいぞ。いいだろう。稽古をつけてやる」


「…マジ…ですか」


思わずポカンとした。

馬鹿みたいな顔で見上げてたらしい。

師匠は少し吹き出した。


「あぁ…マジだ。だがお前は脳の命令に体がついていけてない。身体能力が低い証拠だ。型にはまりすぎなその戦い方も直さなければならない。先は長いぞ」


先程吹き出したのは見間違いかと思うくらい、顔つきが変わった。

真剣に、射るような目で俺を見据える。

ゾクッと背筋が震えた。

しかし、次の瞬間には挑むように師匠を見上げていた。


「すぐに師匠を越えて見せますよ」


「…ふっ。精々精進しろ。オラ、立て。休んでる暇はないぞ」


「はいっ!」


即座に立ち上がり、木刀を探す。


「あ…」


壊れてた。

どうしよう。

先に体術習おうか。


「俺のを使え。一度でも俺に当てれれば、夕食を一品やろう」


「マジすか!」


難易度かなり高い気がするが、褒美があるとやる気はだぜんアップする。


「その代わり、出来なければお前のメインディッシュは俺のものだ」


「えぇえ!?」


んな理不尽な!!


「ほら、まだ時間はある。精々足掻け」


師匠が手に持っていた木刀を俺に向かって投げた。

慌てて木刀をキャッチする。


畜生。

こうなりゃやけだ!


「行きますよ、師匠!」


木刀を握り、構えをとる。

師匠は不敵に笑い言った。


「あぁこい」


俺は師匠に向かって地面を蹴った。



・⚪︎●○●○●○●⚪︎・



「………さん、ル…スさん。おひるごはんですよ。おきてください」


「はっ!」


気がつけば目の前にオリビアがいた。

なんかデジャヴを感じながらも起き上がる。

どうやらここは木陰のようだ。


「お昼ご飯…?」


「そうですよ。ルイスさん、わすれてしまったのですか?きのうわたし、おべんとうつくるっていいましたよ!」


「あぁ、そうだった。俺は…気絶してたのか」


記憶は師匠の回し蹴りを腹に食らったのを最後に途切れてるから、きっとそのままダウンしてたんだ。


ぐぅ〜。


俺の腹の虫がなった。


「むこうでおにいさんもまってますよ。いきましょう」


オリビアが俺の腕を引く。


「はーい」


俺は素直に立ち上がり、立ち上がったことで見えた先にいる師匠の元へ歩き出した。


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