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白く神聖な宮殿。
そこには、アイルの神という存在が天井に届きそうなほど高く伸びた椅子に座っている。
『よくぞここまでたどり着けたものだ。
だが、私の世界でこれ以上暴れることは許さぬ。
神の鉄槌を食らうがよい!』
女性の姿をした神は“メルティ”という名で、アイルを創生した神の一人だ。
しかし、彼女はアイルを作ったことで、この世界の闇を深く知り、その闇にとりつかれてしまう、という、ゲームの中の設定がある。
先ほどの台詞を、ゲーム中でメルティに遭遇したときに言われるテンプレだ。
視界が白く染まり、霧が晴れるように開けた先は、縦も横もわからないような、真っ暗な場所だ。
「ここまではゲームと同じなのね。」
「そうだな、全部が同じなら、倒すのも簡単だろ」
『アアアアアアアアアアアアア!!!』
メルティが大きく叫ぶと、彼女の纏っていた白いドレスが黒く染まるのを皮切りに肌は浅黒く、瞳は怪しく光り、いまにも攻撃をしかけてきそうな勢いでこちらを睨んでいるのがわかる。
「マヤ!
攻撃は任せたぞ!」
「おっけー。あんたこそ、しっかり攻撃止めといてよ!
ルフトスラッシュ!!!」
マヤの放った攻撃は空気を裂いて彼女に飛んでいくが、一直線に飛んでいったそれは、いとも簡単に避けられてしまう。
「あ、よけるんだ。
そこはやっぱり変わるんだねえ。」
「そりゃそうだろwww」
ゲームの中では、魔法は火力以外にも、どんなに小さな魔法でも必ず当たる、というのが魔法の魅力であり、だからこそ、火力要員として、魔法が使える職業はいつだって優遇されてきた。
しかし、ゲームがリアルに変わったことで、相手も避けることができるというデメリットが出てきたのだ。
しかし、必中だったのはプレイヤー側も同じで、モンスターが放った魔法は必ずプレイやーに当たり、着実にHPを奪っていたのだ。
それが避けることができるようになった、というのはかなりの収穫であり、これまでステータスの関係上、魔法耐性のないプレイヤーも避けることで生存率が上がる、ということになる。
「これならどう?
赤き灼熱の炎は大地を覆う!ロヴェントインフェルノ!!!!!」
マヤの魔法により、あちこちから炎の柱が上がり、空間全体を炎で多い尽くした。
魔法を避けることができるのなら、出来なくすればいい。
それは4公であるマヤだから簡単にできるのであって、普通のプレイヤーならば、MPの消費が激しく、いざ、というときにしか、出来ない大技である。
「効いた?」
「っていうか、熱い!
マヤ!この技、熱いよ!!」
「………ごめん。」
辺り全体を炎で埋め尽くした変わりに、自分たちまでダメージを受けることはないようだが、パチパチと火花を散らすそれの熱さは多少受けるようで、一気に上がった温度に、立っているだけで汗がにじみ出てくる程だった。
御礼が遅れましたが、お気に入り、評価ありがとうございます!
不定期の更新ですが、これからもよろしくお願い致します。